田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『虹を掴む男』

2018-12-02 16:24:30 | 1950年代小型パンフレット

『虹を掴む男』(47)(1996.9.2.)

 テクニカラーの美しさとダニー・ケイの芸達者ぶりが堪能できる古典映画。主人公が見る白日夢の中で、ケイがさまざまなヒーローに成り切るのが見どころだ。監督はノーマン・Z・マクロード。



 思うに、ケイの芸の見せ方は、後のジェリー・ルイス同様に、自らの芸に酔って一つのシークエンスを引っ張り過ぎるきらいがある。この映画も少々くどい。それ故か、彼の芸は、フレッド・アステアやジーン・ケリーのように、至芸や伝説としては、われわれ後追い世代には語り継がれなかったのかもしれない。

 ただ、こうした古典映画の良さは単純明快なところ。もし今作られたら、主人公の夢を精神分析したり、マザコンの部分がもっと掘り下げられたりして、ウディ・アレンの映画のような、妙なものになってしまいそうな気もする。

 テクニカラー美人と呼ばれたバージニア・メイヨだが、この映画の彼女からは少々けばけばしい印象を受けた。彼女は『死の谷』(49)のようなモノクロ映画の方が魅力的、などと言うと往年のファンに怒られそうだが…。

【今の一言】この映画は、2013年に『LIFE!』としてリメークされた。
【映画コラム】平凡な男が己の人生を変えていく姿を描いた『LIFE!』↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/497634

ダニー・ケイのプロフィールは↓


バージニア・メイヨのプロフィールは↓

パンフレット(50・太陽洋画ライブラリー)の主な内容
解説/梗概/この映画に主演するダニイ・ケイ

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『気まぐれ天使』

2018-12-02 08:16:33 | 1950年代小型パンフレット

『気まぐれ天使』(47)(1996.5.25.)

 赴任先の街に新しい教会を建てようとする司教(デビッド・ニーブン)は資金集めに苦労し、妻(ロレッタ・ヤング)との関係にも暗雲が立ち込める。そんな中、2人の前に謎の男(ケーリー・グラント)が現れて…。サミュエル・ゴールドウィン製作、ヘンリー・コスタ―監督の人情コメディ。



 先に見た、ゲーリー・クーパー主演、レオ・マッケリー監督の『善人サム』(48)がいま一つだったための消化不良から、同時期に作られ、同じく“クリスマスの奇跡”を描いたこの映画を見てみた。結果、多少の宗教くささはあるものの、見ながら思わず顔がほころんでしまうような、楽しさと温かさに満ちた傑作だった。

 いきなり天使役のグラントが、粋の固まりのような洗練された姿で登場し、この有り得ない話に説得力を与えて、見る者を一気に映画の中に引き込んでしまう。これを見せられると『善人サム』のクーパーが野暮な武骨者に見えてしまう。

 となると、ビリー・ワイルダーが『昼下りの情事』(57)のプレーボーイ役に、クーパーではなくグラントを望んだというのも分かる気がする。ちなみにワイルダーはこの『気まぐれ天使』のゴーストライターでもあるそうな。

 そして、このグラントに、ヤングとニーブン扮する司教夫婦が絡んでの、微妙な三角関係劇がまた見事。本来は、粋の代表であるニーブンが見せる情けない姿は、グラントが相手役だからこそ、出せる味なのである。そうした対照の妙を引き出したコスタ―の演出もまた素晴らしい。

 『素晴らしき哉、人生!』(46)『三十四丁目の奇蹟』(47)、そしてこの映画など、こうして何本も説得力のある“クリスマスの奇跡映画”を見せられると、アメリカでのクリスマスの価値を改めて知らされる思いがする。

 それにしても、『気まぐれ天使』とはいい邦題だ。松木ひろし脚本、石立鉄男主演の傑作ドラマ「気まぐれ天使」のタイトルはここから取られているのだろうか。

 【今の一言】この『気まぐれ天使』は、96年に、デンゼル・ワシントン、ホイットニー・ヒューストン主演で『天使の贈りもの』としてリメークされた。

ケーリー・グラントのプロフィールは↓


デビッド・ニーブンのプロフィールは↓


ロレッタ・ヤングのプロフィールは↓

パンフレット(51・国際出版社の主な内容
解説/物語/二人の主演スタア ケイリー・グラント、ロレッタ・ヤング(岡俊雄)/サミュエル・ゴールドウィンと云うプロデューサーは、こんな男(淀川長治)/鑑賞講座(田村幸彦)

 

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