『誇り高き男』(56)
舞台はカンザス。銃撃戦で頭を負傷し、一時的に視力が衰えるようになった保安官のキャス(ロバート・ライアン)は、助手に若いカウボーイのサッド(ジェフリー・ハンター)を雇うが、彼はキャスを父親の仇だと思っていた。
口笛が印象的な哀愁のあるテーマ曲の作曲はライオネル・ニューマン。この映画はもちろんリアルタイムでは見ていないが、中学生の頃テレビで本編を見た後で買った編集版のLPレコード「西部劇、アクション映画全集」のトップにこの曲が入っていたので、よく聴いた覚えがある。
弱みを持った保安官、(疑似)親子の対立と和解というテーマは、同時期に作られた『追われる男』(55)や『胸に輝く星』(57)にも見られたもの。こうしたテーマは当時のはやりだったのだろうか。悪役や屈折した役が多いライアンがここでは真っすぐな保安官役を好演している。
黒澤明が選んだ百本の映画の中にこの映画が入っていたのは少々意外な気がしたが、思えば、この映画は黒澤が好んで描いた「年上の人格者が若者を導く」というテーマと通じているのかもしれない。
相手役のバージニア・メイヨは、当時の中学生にも色っぽいおばさんに見えたが、斜視気味の目つきなどは、当時売れていたカレン・ブラックに似ていなくもないか、とも思った。
監督のロバート・D・ウェッブについてはよく分からないが、公開当時のパンフレットには「カメラマン出身の新鋭。ヘンリー・キングの助監督を長く務めた」と書かれている。撮影は後にサム・ペキンパー映画を多く担当したルシアン・バラード。黒澤は彼の仕事も褒めていた。
それにしても『誇り高き男』(原題は「THE PROUD ONES」)はいいタイトルだ。
ロバート・ライアン
バージニア・メイヨ
ジェフリー・ハンター
ウォルター・ブレナン
パンフレット(56・不明)の主な内容は
かいせつ/ものがたり/スタアメモ(ロバート・ライアン、ヴァージニア・メイヨ、ジェフリイ・ハンター)/カンサス州