イチローシスラーを抜く! 夏草や兵どもが夢の跡(2004.10.14.)
ずっとイチローの新記録達成の瞬間を追ってきたというのに、いよいよという時にパソコンがウィルスにやられてパンク…。これも日頃の行いのせいか? というわけで、今年2度目の再セットアップでまたもや初期状態に戻りながらも、ロボコップのように復活。まあこいつもよく働くわ、と感心するやらあきれるやら。
さてさて、今さらイチローの新記録達成を単純に称えてもねえ(いつぞや誤審を素直に認めたホルブルック塁審もおめでとう。これで肩の荷が下りたよね)というわけで、ひとひねり。イチローが追い越していった伝説の打者たちのニックネームを並べてみようと思う。なにしろメジャーリーグはニックネームの宝庫なのだ。
まずポール&ロイドのウェイナー兄弟は、兄がビッグ・ポイゾン(大きな毒)弟がリトル・ポイゾン(小さな毒)。相手にとってはこの兄弟、嫌で嫌でたまらなかったことだろう。なにしろイチローが2人、しかも兄弟で同じチームにいるようなものだから。
ほかにもこのタイプはハリー・ヘイルマンのスラッグ(ナメクジ)なんていうのも。アル・シモンズはバケットフット、これは単にバケツ足とでも訳すのか、それとも乱暴者と訳すのか。
体つきや癖を想像させるのは、ジョー・メドウィックのダッキー(アヒル)またはマッスルズ(肉体派)、エド・デラハンティはビッグ・エド、ウィリー・キーラーのウィ(小さな)・ウィリーは語呂合わせもあるのか、それからジェシー・バーケットのクラブ(カニ)など。彼らの体型や動きをニックネームからイメージしてみるのも楽しい。
問題児のタイ・カッブがかわいらしくジョージア・ピーチ(ジョージアの桃)と呼ばれたのも反意的で面白い。ロジャース・ホーンスビーは品があったからなのか、ラジャ(インドの王)。ビル・テリーは出身地からメンフィス・ビル(『メンフィス・ベル』なんて映画もあったが、これは関係ない)。
日本野球の恩人、フランク・オドゥールは左利きだからレフティ。で、“レフティ・オドゥール”の方が通りがいい。これはジョージ・ハーマン・ルースではなく“ベーブ・ルース”というのと同じだ。
そして大きな山の如くそびえ立っていた前記録保持者のジョージ・シスラーはゴージャス(華麗なる)・ジョージ。今回、黒人初のメジャーリーガー=ジャッキー・ロビンソンのドジャース入団に引退後の彼が一役買っていたという新たな事実を知らされ、人格者でもあったというその人柄の一端が垣間見えるエピソードとして興味深かった。
ロビンソンがいなければカラーラインは取り除かれなかったかもしれない、そしてその延長線上のグローバル化で、日本人であるイチローが記録を破ったことも含めると、なにやらシスラーが果たした不思議な役割を感慨深く思わずにはいられない。
とはいえ、彼らはみな大昔の人たち。まさにイチローが一時思い出させてくれた“兵どもが夢の跡”。祭りの終わりはちょっと寂しく物悲しいものがある。