音楽ライターの父とドラッグ依存症だった息子が、それぞれの視点から書いた2冊のノンフィクションを映画化。父親役をスティーブ・カレル、息子役をティモシー・シャラメが演じている。シャラメは『君の名前で僕を呼んで』(17)の同性愛に続いて、今度はドラッグ依存症の役。このまま行くと際物俳優になりかねないのでは…と要らぬ心配をしてしまう。監督はベルギー出身のフェリックス・バン・ヒユルーニンゲン。
時系列を無視し、過去と現在を行き来させてコラージュのように見せるのは、監督の前作『オーバー・ザ・ブルースカイ』(12)と同じ手法だが、まずこれが見ていて落ち着かない気分にさせられる。また、前作のカントリーミュージックに代わって、今回は登場人物の心情を代弁させるようにさまざまな曲が挿入されるのだが、これが耳障りになる。静かな場面に大音量で音楽が流れると興醒めするし、せっかくの役者の演技の印象も薄くなる。ミュージカルやミュージックビデオでもないのに曲が前面に出過ぎているのだ。
ところが、タイトルにもなったジョンの「ビューティフル・ボーイ」のシーンは意外とあっさりしているのに、ニール・ヤングの「孤独の旅路=ハート・オブ・ゴールド」は目いっぱい流すなど、曲の使い方にメリハリがなく、シーンと音楽とのバランスも悪いから、画面に集中できなくなる始末。いやはや…。
ただ、何度薬を断っても結局やめられない、平気でうそをつくという、この映画の息子の姿を見ながら、先日、コカインの使用で逮捕されたピエール瀧の姿が重なり、何だか切なくなった。