『少年の町』(38)(1992.12.9.)
フラナガン神父が非行少年や問題のある子供の寄宿と教育のために設立した「少年の町=Boys Town」の様子を実話を基に描く。
善人で正直者ではあるが、ずるく計算高いところもあるという人間くさいフラナガン神父役を好演したスペンサー・トレイシーはもちろん、神父の親友役を演じたヘンリー・ハルのような脇役の生かし方がとてもうまいと感じた。
先日見たウィリアム・ワイラーの
『デッドエンド』(38)は、この映画と同年に作られ、デッドエンドキッズと呼ばれた実際の不良少年たちが出ていたが、彼らもフラナガン神父と出会っていれば…などと思ってしまった。
この映画で、これまではルイス&マーティンの
『底抜け』シリーズや、エルビス・プレスリーの主演映画の監督として認知していたノーマン・タウログの、本来の職人監督としての腕前を知ることもできたのだが、何と言っても圧巻は、名子役とうたわれたミッキー・ルーニーの存在感であった。
スペンサー・トレイシー
ミッキー・ルーニー
『町の人気者』(43)(1993.9.22.)
いまだソフト化されていない、ウィリアム・サローヤンの
『人間喜劇』を映画化した『町の人気者』を輸入盤のレーザーディスクで発見! この原作が書かれ、映画が撮られたのは第二次大戦真っただ中の1943年。これをアメリカの余裕と言ってしまうのは簡単だが、むしろ、そうした時代にあえて戦争がもたらす悲劇や不条理を描きながら、人生の悲しさと素晴らしさをうたった原作や映画が生まれたことの方をたたえたい気がする。
『少年の町』(38)の名子役ミッキー・ルーニーが主人公のホーマーを演じている。兄のマーカスはバン・ジョンソン、姉のベスはドナ・リードで、ロバート・ミッチャムが兵士役でちらりと顔を出す。監督は
『子鹿物語』(46)のクラレンス・ブラウンだから、子供の成長物語がうまいのは当然、と思いきや、原作者のサローヤンはこの映画が気に入らなかったという。うーん、いつの時代も原作と映画の間には深い隔たりがあるということか。
【今の一言】最晩年のルーニーは
『ナイトミュージアム』シリーズで元気な姿を見せていた。