田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ダンボ』

2019-03-14 20:29:11 | 新作映画を見てみた


 ディズニーのアニメーション映画『ダンボ』(41)を原作とする実写映画。大き過ぎる耳というコンプレックスを翼に変えて空を飛ぶ子ゾウのダンボが、サーカス団の仲間たちと共に、母ゾウのジャンボの救出に挑む。

 「お気に入りのディズニーアニメは『ダンボ』」と語るティム・バートンが監督。確かに、異形の者やアウトサイダー、個性的なキャラクターが活躍し、個性の違いを強みに変えるさまを描く彼の映画群と『ダンボ』には重なる部分がある。

また『ビッグ・フィッシュ』(03)など、サーカスへのこだわりや憧れを描いた過去の映画をほうふつとさせるところも。まあ、そもそもサーカス自体が異形の者やアウトサイダー、個性的なキャラクターの集まりなのだから、通じるのは当然なのだが。

 そういえば、スピルバーグの『1941』(79)で、ロバート・スタック演じる将軍が、映画館で『ダンボ』を見て涙する場面があったなあ。

 ネタバレはもちろん、評論や批評にも解禁があるので、今回はここまで。
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『呪われた城』

2019-03-14 10:16:12 | 1950年代小型パンフレット
『呪われた城』(46)(1997.2.4.)



 ジョセフ・L・マンキーウィッツの監督デビュー作。ヒッチコックの『レベッカ』(40)を思わせる後妻の受難を描いたものだが、同じくマンキーウィッツの傑作『幽霊と未亡人』(47)を先に見てしまったおかげで、両作の間の、合わせ鏡のような、ネガとポジのような、不思議な関係性を見付けてしまった。

 両作でヒロインを演じているのは美しいジーン・ティアニー。彼女が遭遇する事件はどちらも古い家にまつわる幽霊譚であり、そこに置かれた肖像画が事件の鍵を握るというのも同じである。ここまで設定が似ていると、マンキーウィッツがデビュー作に満足せず、暗い話を明るい話に仕立て直して再挑戦したのでは…と勘繰りたくなる。

 実際、この映画はサスペンスなのかラブロマンスなのかはっきりしない弱さがある。当時、リアルタイムでこの映画と『幽霊と未亡人』を見た人は、たかが1年たらずの間に大化けしたマンキーウィッツの変貌に驚いたのではないだろうか。

 ところで、相手役のビンセント・プライスといえば、『ヴィンセント』(82)『シザーハンズ』(90)に出演させたティム・バートン、あるいは「スリラー」のナレーションに彼を起用したマイケル・ジャクソンならずとも、怪奇映画専門の大仰な俳優というイメージが強い。この映画でも変質狂的な役がふられていたが、その若き日は決して容貌魁偉ではなく、むしろ、ちょっとジェームズ・スチュワートにも似た品のいい二枚目だったことを今回知らされた。

ジーン・ティアニー

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『少年の町』『町の人気者』ミッキー・ルーニー出演作を2本

2019-03-14 07:14:24 | 1950年代小型パンフレット
『少年の町』(38)(1992.12.9.)



 フラナガン神父が非行少年や問題のある子供の寄宿と教育のために設立した「少年の町=Boys Town」の様子を実話を基に描く。

 善人で正直者ではあるが、ずるく計算高いところもあるという人間くさいフラナガン神父役を好演したスペンサー・トレイシーはもちろん、神父の親友役を演じたヘンリー・ハルのような脇役の生かし方がとてもうまいと感じた。

 先日見たウィリアム・ワイラーの『デッドエンド』(38)は、この映画と同年に作られ、デッドエンドキッズと呼ばれた実際の不良少年たちが出ていたが、彼らもフラナガン神父と出会っていれば…などと思ってしまった。

 この映画で、これまではルイス&マーティンの『底抜け』シリーズや、エルビス・プレスリーの主演映画の監督として認知していたノーマン・タウログの、本来の職人監督としての腕前を知ることもできたのだが、何と言っても圧巻は、名子役とうたわれたミッキー・ルーニーの存在感であった。

スペンサー・トレイシー


ミッキー・ルーニー


 
『町の人気者』(43)(1993.9.22.)



 いまだソフト化されていない、ウィリアム・サローヤンの『人間喜劇』を映画化した『町の人気者』を輸入盤のレーザーディスクで発見! この原作が書かれ、映画が撮られたのは第二次大戦真っただ中の1943年。これをアメリカの余裕と言ってしまうのは簡単だが、むしろ、そうした時代にあえて戦争がもたらす悲劇や不条理を描きながら、人生の悲しさと素晴らしさをうたった原作や映画が生まれたことの方をたたえたい気がする。

 『少年の町』(38)の名子役ミッキー・ルーニーが主人公のホーマーを演じている。兄のマーカスはバン・ジョンソン、姉のベスはドナ・リードで、ロバート・ミッチャムが兵士役でちらりと顔を出す。監督は『子鹿物語』(46)のクラレンス・ブラウンだから、子供の成長物語がうまいのは当然、と思いきや、原作者のサローヤンはこの映画が気に入らなかったという。うーん、いつの時代も原作と映画の間には深い隔たりがあるということか。

【今の一言】最晩年のルーニーは『ナイトミュージアム』シリーズで元気な姿を見せていた。
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