田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『海底二万哩』

2019-03-08 19:47:53 | 1950年代小型パンフレット
『海底二万哩』(54)(1987.9.29.)



 空想科学小説の始祖ジュール・ベルヌが、潜水艦の出現を予言した代表傑作をディズニーが映画化。争いの多い地上世界を捨て、海中に理想郷を求めたネモ艦長(ジェームズ・メイスン)が、巨大潜水艦ノーチラス号の驚異を操る。

 最近のSFX全盛の映画と比べてこの映画を見れば、いまさらおかしくって…という者もいるだろうが、自分は、テクノロジーの進歩が早過ぎる今の映画界では、逆に作るのが難しいノスタルジックなSF映画として新鮮な気持ちで見られた。

 何より、俺たちはこういう映画に熱中しながら育ってきたのだし、今をときめくSFX映画の作り手たちにしても、子供の頃はこうした映画に驚き、心を動かされ、やがてそれが高じて、今の道に進んだ者もいるはずである。何事もルーツがなければ始まらないのだから。そう考えると、こうした映画の存在価値は今もちゃんとあるのである。

 監督のリチャード・フライシャーは、この映画の後にも『ミクロの決死圏』(66)などのSFをはじめ、さまざまなジャンルの映画を作っている。娯楽映画の見事な作り手の一人として、もっと評価されてもいいのではないかと思う。

 カーク・ダグラスお得意の、がなり立てる演技は、今から見るとちょっと奇異なものとして映った。逆にメイスンの渋い演技が光って見えた。

【今の一言】この時期は、この映画の他にも、ヴェルヌ原作の『80日間世界一周』(56)『地底探検』(59)『気球船探検』(62)などが映画化されている。この映画の姉妹編とも言える『ネモ船長と海底都市』(69)ではロバート・ライアンがネモを演じた。また、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』(90)のドク(クリストファー・ロイド)はヴェルヌが大好きで、2人の子供をジュールとヴェルヌと名付けていた。

カーク・ダグラス


ジェームズ・メイスン



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『僕たちのラストステージ』

2019-03-08 10:37:33 | 新作映画を見てみた


 1953年、かつての人気喜劇コンビ(スタン・)ローレル&(オリバー・)ハーディが、イギリスでホールツアーを行うが、すでに彼らは“過去の人”になっていた。だが、2人が懸命にツアーをこなす中、やがて満員の観客が客席を埋めるようになるが…。

 スティーブ・クーガンとジョン・C・ライリーが、本物そっくりになって“極楽コンビ”の晩年を演じ、互いに唯一無二の存在でありながら、衝突を繰り返すコンビ芸人の愛憎を浮き彫りにする。

 改めて再現された2人の芸を見ると、いかにも味のある、ほのぼのとしたものは感じるが、大笑いはできない。つまり、観客をずっと笑わせ続けることなど不可能なのだ。そこに喜劇の残酷さや、喜劇芸人の宿命を感じる。映画を見ながら、一時は楽しませてくれたが、やがて消えていった多くの芸人たちの姿が重なって見えて切なくなった。

 昨年、ジョン・ウェイン主演の『ケンタッキー魂』(49)の解説を書く際に、この映画に単独出演したハーディのことを調べ、ウェインが「もう一作一緒に出てくれ」と頼んだにもかかわらず、ハーディはローレルとのコンビでの仕事を優先させるために断ったと書いたが、この映画を見ると、実際はどうだったのだろうか、とちょっと心配になった。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07DP1YR63
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