「驚きももの木20世紀」「遥かなるメジャーリーグ 江夏豊・ジャッキー・ロビンソン」(1995.10.13.)
ロサンゼルス・ドジャースの野茂英雄の活躍にあやかって、こうしてメジャーリーグ関連の番組が作られるのはうれしいのだが、逆にそこからメジャーリーグの暗部が見えてくるところもある。
例えば、タイ・カッブ、ベーブ・ルースらは、不世出のプレーヤーだが、1人の人間としては決して褒められたものではなかった。
黒人初のメジャーリーガー、ブルックリン・ドジャースのジャッキー・ロビンソンの存在、忍耐、勇気、影響などはどれも素晴らしいのだが、彼の登場は約50年前、つまりメジャーリーグのおよそ130年の歴史の半分以上は、白人だけで行われていたことが分かる。
ロベルト・クレメンテ。今でこそラテン、ヒスパニック系の選手たちは珍しくもないが、彼らのパイオニアは肌の色に加えて、言葉の壁とも戦わなければならなかったという事実がある。
ただ、この場合、ロビンソンやクレメンテらがこじ開けた扉が、今のグローバルなメジャーリーグに発展したことを素直に喜ぶべきなのかもしれない。その軌跡の上に今の野茂の活躍もあるわけだから。
そして、最初はロビンソンを差別していたドジャースの白人選手たちが、プレーを通じてロビンソンを認め、理解を深めていったところにスポーツの素晴らしさを見ることができる。
その意味では、今年ルー・ゲーリッグの連続試合出場記録を破ったボルチモア・オリオールズのカル・リプケンが野茂に贈った「日本人である野茂がメジャーリーグで活躍していることにちっとも違和感なんかない。才能を持った選手ならば、どこの国の誰だろうが、結局はここ、メジャーリーグに来ることになるんだよ」という一言が心に響く。
【今の一言】この後、イチローや松井秀喜が続き、その延長線上に今の大谷翔平の活躍がある。日本では42という数字は“死人”につながるとして嫌われるが、日本に来た外国人選手は喜んで背番号42を付ける。それは42はロビンソンが付けていた背番号であり、メジャーリーグでは今は全球団で欠番となっているからだ。毎年4月15日には、ロビンソンの功績をたたえ、全30球団の全選手が背番号42を付けてプレーをする。日本では、中日ドラゴンズのドラフト1位ブライト健太(父がガーナ出身)が今年から背番号42を付けている。