『水は海に向かって流れる』(2023.4.18.オンライン試写)
高校通学のため、叔父の家に居候をすることになった直達(大西利空)。だが雨の中、駅に迎えにきた榊さん(広瀬すず)に案内されたシェアハウスには、26歳のOLの榊さん、脱サラした漫画家の叔父・茂道(高良健吾)のほか、女装の占い師・颯(戸塚純貴)、海外を放浪する大学教授の成瀬(生瀬勝久)が住んでいた。
さらには、拾った猫のムーを気にしてシェアハウスを訪れるようになった直達の同級生で颯の妹の楓(當真あみ)も加わり、予想外の共同生活が始まる。いつも不機嫌だが、気まぐれにおいしいご飯を振る舞ってくれる榊さんに淡い恋心を抱き始める直達だったが、なぜか「恋愛はしない」と宣言する彼女との間には、思いも寄らぬ因縁があった。
田島列島の同名コミックを前田哲監督、大島里美の脚本で実写映画化。メークの力も借りて、不機嫌でツンデレな“年上の人”を演じた広瀬が、大人の女優としての新たな一歩を踏み出した感じがしたし、大西の真っすぐな若者像にも好感が持てた。そんな彼らを取り巻く“くせ者たち”も面白い。
最近、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(18)『老後の資金がありません!』(21)『そして、バトンは渡された』(21)『ロストケア』(23)と、群像劇として、さまざまな形の家族(共同体)の問題を映画化している前田監督の力量が、この映画でも遺憾なく発揮されている。
また、原作の田島について、『子供はわかってあげない』(21)の沖田修一監督が「結構深刻な家族の話を軽やかに描いている」「近づき方がずるい。酔っ払いながら近づいてきて急に刺されるみたいな」と表現していたが、この映画にも同様のものがあった。これは彼女の漫画のテーマが一貫していることの証しなのか。
前田監督には『陽気なギャングが地球を回す』(06)のインタビューの際に、影響を受けた映画として『ホット・ロック』(72)などの話で盛り上がったが、今回の榊さんと直達が山盛りの卵を食べるシーンでは『暴力脱獄』(67)のポール・ニューマンのことを思い出した。
【ほぼ週刊映画コラム】『ロストケア』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f97ee36b29c9e0368623a3d3873a667d
【ほぼ週刊映画コラム】『そして、バトンは渡された』『老後の資金がありません!』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/33d2da4887874048c06994e90a373b80
『こんな夜更けにバナナかよ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b4a0a3e207e519bd5afd1a3535ef6c9f
【インタビュー】『陽気なギャングが地球を回す』前田哲監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/51b939c50275e81e74259f8982a9e071
【インタビュー】『子供はわかってあげない』沖田修一監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b400a897e65fd9aa9bc0c48ebb781800