『裸の銃を持つ男 PART33 1/3 最後の侮辱』(94)(1994.8.22.渋谷シネセゾン)
正直なところ、期待していたほどではなかった。それはデビッド・ザッカーが監督をせず、他人に任せてしまったせいかもしれないが、何よりも、レギュラー出演者の一人であり、アメフトの大スターでもあったOJ・シンプソンが起こした事件の記憶が生々しかったことが大きいだろう。
しかも、このシリーズ第3弾では明らかに活躍場面も増えていたから、冗談では済まされない、偶像のはかなさすら感じさせられ、彼がふざければふざけるほど、笑うに笑えず…という妙な状況が生じてしまった。こうした楽屋落ちやパロディのおかしさで勝負する映画にとって、これほどのバッドタイミングはなかったというべきだろう。
加えて、幻のテレビシリーズ「フライング・コップ 知能指数0分署」(82)以来、快調にお笑いドレビンを演じてきたレスリー・ニールセンにも、さすがに疲れが見え、淋しくはあるが、これを“最後”にしたのは正解だろうと思った。寅さんじゃあるまいし、老け老けになったドレビンでは、ますます笑うに笑えなくなってしまうだろうから。
とはいえ、「フライング・コップ 知能指数0分署」以来、約10年。随分と笑わせてもらったのも事実であり、フランク・ドレビンという希有なコメディ・キャラクターを作り上げたスタッフと、それを演じ続けたニールセンには感謝である。
それにしても、コメディの寿命は何と短く、はかないものか。