硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「となりのトトロ その後 五月物語。」 14

2014-01-05 10:03:55 | 日記
姉と寛太兄ちゃんが大人の悩みを抱えていたなんてと思いもよらなかった。でも、母の代わりをしていたしっかり者の姉にもあのころからそういう所があったのに、そんな姉のことも知らずわがまま言い放題だった私に心が痛んだ。

私が昔の事を回想している間にも撤去作業は着々と進み、気が付けば大クスは徐々に切り離されていって、最後には大きな切り株を残して無くなってしまった。

「そうだ、写メをとって姉に送ろう。」

ベンチから立ち上がると切り株となってしまった大クスの方に向かって歩いてゆき作業員さんに会釈をして切り株が見えるところまで近づくと写メに納めた。そして、姉に「寛太兄ちゃんに会いました。」と言葉を添えてメール送信した。どんな返信がくるんだろうと、いたずらっ子のようにうきうきしながら携帯が表示する時間を見ると急にお婆ちゃんという現実に引き戻された。

「いけない! あかりちゃんが帰ってくる。」


慌てて小走りで車に乗り込むと家路に向けて車を走らせた。

少し交通量が増えた帰り道の風景にもあの頃の景色は見当たらない。想い出を探すことは淋しいという気持ちを埋めたいからなのかなと思うけれど、想い出の場所から離れた者がそこで暮らし続けている人達の想いを慮らずに想い出のまま留めておきたいと思う気持ちは私達のエゴなのかもしれないと思った。

家に着いて携帯を見ると姉から返信が届いていた。珍しく誤字脱字があってかなり慌てた様子が伺いしれて思わず笑ってしまった。

「ふ~ん。寛太兄ちゃんと出逢った事がそんなに大変な事だとはねぇ。まぁ、話なら明日ゆっくりできるから返信はしなくていいか。」

私は姉より少し優位に立てていることにうきうきした。明日は楽しくなるぞぉと思いながら時計を見るともうすぐ3時になろうとしていた。

「あっいけない。あかりちゃんを迎えに行かなければ!! 」

こういう所はいつまでたっても本当に治らないなと反省しながら、送迎バスの停留所まで孫のあかりちゃんを迎えに行った。