久しぶりに姉の手料理を味わう。料理の腕前は母さんが療養していた時分から台所に立っていたからかとても上手だ。それに比べ私は、苦手だったからずっと避けていたけれど、結婚してどうにもならなくなって、健二さんのお母さんに助けてもらいながら、ようやくそれなりに出来るようになったけれど、姉の料理には到底及ばない。
私も席を立ちキッチンへ向かうと、姉はあらかじめ下準備をしておいたであろう食材を炒め出していた。
白いテーブルクロスが引かれた品の良いテーブルには、淡い青色のびいどろの一輪ざしに活けた茶の木が小さな花をつけていた。私はキッチンに近い椅子に腰を掛けて姉に声をかけた。
「いいにおいだね。何を作るの? 」
そう聞くと、姉は振り返り、
「母さん直伝のオムライスです。あなた、大好きでしょ? 」
と、言って食材を次々にフライパンに入れて手際よく調理をしてゆくその様は母さんとそっくりだ。姉に母さんの面影を見つけてしまうなんて。と思いながらも、調理する姉をじっと見ていた。
しばらくすると、トマトケチャップを炒めた香ばしい香りがキッチンに漂った。とても懐かしい匂いだ。
姉はキッチンカウンターに用意してあったお皿に炒めた具を盛ると、フライパンに油を引き直し卵を焼きだした。今のオムライスの卵はふわとろが支流のようだけれど、母の作る卵焼きは少し焦げ目を利かし、しっかりと焼きあげる昔ながらのオムライスの姿だ。
姉は程よく焼けた卵焼きの上に最初に炒めたケチャップご飯を乗せ、少しフライパンを傾けたかと思うと、手際良くくるり巻き、お皿に載せて、形を整え仕上げのケチャップを掛けた。
「はい、これはあなたの分。オニオンスープもあるから少し待ってなさい」
「ありがとう。姉さん。母さんみたいだよ。」
そう言うと、
「バカ言わないでよ。」といって微笑んでいた。
姉は事前に作ってあった、熱々のオニオンスープをマグカップに注ぎ、私に差し出すと、またフライパンを持ち、卵を焼きはじめた。本当に手際が良くて感心してしまう。
「さあ、いただきましょうか。かんたんなものでごめんね。」
「ううん。これ、本当にうれしい。いただきます。」
しっかり焼いた卵焼きにスプーンを入れてゆくとホカホカのチキンライスが出てきた。この時の嬉しさは不思議といつまでたっても変わらない。
口に運ぶと懐かしい母の味そのもので、私が作るとなぜかこうはいかない。
「美味しい。母さんの味そのままだわ。」
「そう・・・。何を作ろうかなと思ったけれど・・・。どうせなら、母さんから教えてもらったものにしようかなって・・・。作ってよかった。」
二人きりで向かい合わせに座ってオムライスを食べる。何年振りだろうか。母さんが療養中は、二人でよくご飯を食べていたのになぁ。と思いながら食べていると、
「・・・久しぶりね。二人きりでご飯食べるの。」
と、姉が呟いた。同じ事を考えているんだなぁと思って少し嬉しくなった。
「そうね。でも、あらためてそう言われると、なんだかかしこまっちゃうわ。」
「なによそれ。」
そう言って、二人して笑った。
私も席を立ちキッチンへ向かうと、姉はあらかじめ下準備をしておいたであろう食材を炒め出していた。
白いテーブルクロスが引かれた品の良いテーブルには、淡い青色のびいどろの一輪ざしに活けた茶の木が小さな花をつけていた。私はキッチンに近い椅子に腰を掛けて姉に声をかけた。
「いいにおいだね。何を作るの? 」
そう聞くと、姉は振り返り、
「母さん直伝のオムライスです。あなた、大好きでしょ? 」
と、言って食材を次々にフライパンに入れて手際よく調理をしてゆくその様は母さんとそっくりだ。姉に母さんの面影を見つけてしまうなんて。と思いながらも、調理する姉をじっと見ていた。
しばらくすると、トマトケチャップを炒めた香ばしい香りがキッチンに漂った。とても懐かしい匂いだ。
姉はキッチンカウンターに用意してあったお皿に炒めた具を盛ると、フライパンに油を引き直し卵を焼きだした。今のオムライスの卵はふわとろが支流のようだけれど、母の作る卵焼きは少し焦げ目を利かし、しっかりと焼きあげる昔ながらのオムライスの姿だ。
姉は程よく焼けた卵焼きの上に最初に炒めたケチャップご飯を乗せ、少しフライパンを傾けたかと思うと、手際良くくるり巻き、お皿に載せて、形を整え仕上げのケチャップを掛けた。
「はい、これはあなたの分。オニオンスープもあるから少し待ってなさい」
「ありがとう。姉さん。母さんみたいだよ。」
そう言うと、
「バカ言わないでよ。」といって微笑んでいた。
姉は事前に作ってあった、熱々のオニオンスープをマグカップに注ぎ、私に差し出すと、またフライパンを持ち、卵を焼きはじめた。本当に手際が良くて感心してしまう。
「さあ、いただきましょうか。かんたんなものでごめんね。」
「ううん。これ、本当にうれしい。いただきます。」
しっかり焼いた卵焼きにスプーンを入れてゆくとホカホカのチキンライスが出てきた。この時の嬉しさは不思議といつまでたっても変わらない。
口に運ぶと懐かしい母の味そのもので、私が作るとなぜかこうはいかない。
「美味しい。母さんの味そのままだわ。」
「そう・・・。何を作ろうかなと思ったけれど・・・。どうせなら、母さんから教えてもらったものにしようかなって・・・。作ってよかった。」
二人きりで向かい合わせに座ってオムライスを食べる。何年振りだろうか。母さんが療養中は、二人でよくご飯を食べていたのになぁ。と思いながら食べていると、
「・・・久しぶりね。二人きりでご飯食べるの。」
と、姉が呟いた。同じ事を考えているんだなぁと思って少し嬉しくなった。
「そうね。でも、あらためてそう言われると、なんだかかしこまっちゃうわ。」
「なによそれ。」
そう言って、二人して笑った。