硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

あとがき。

2014-01-31 20:07:11 | 日記
「となりのトトロ その後 五月物語。」楽しんでいただけましたでしょうか。
この物語を構想する為に、まずネットで情報を集めようとしたら「都市伝説」という話題が多くてびっくりしました。都市伝説って、何・・・?と、思ったのですが、結構有名な話なんですね。僕は全く知らなくて、スタジオ・ジブリからも正式なコメントがなされていてこれまたびっくり。

でも、想像力が湧いてくる情報は得られず、いつもの本屋さんに出かけて色々物色していると、アニメージュ文庫から出ている、久保つぎこ著「小説 となりのトトロ」を発見しまよわず購入。読んでみると色々と湧き上がってくるではありませんか!
この本との出会いがなければ「五月物語。」は立ちゆかなかったといっても過言ではありません。久保つぎこさんありがとうございます。

また、物語を立ち上げていく上で大きなヒントになったのは、トトロ制作時に鈴木敏夫さんが宮崎駿さんに「このままだとサツキちゃんは不良になってしまう」と言って、メイちゃんが迷子になった時、サツキちゃんを泣かせることにしたという逸話でした。トトロと初めて出会ってから半世紀、改めてトトロの存在を考えた時どんな心持がしてどう思ったのかを妄想するには大変重要な手掛かりになっています。

そして、改めて読み返してみると(少しばかり加筆をしました。)寛太君が振られてしまうシーンと大人になったサツキとメイが仲たがいしているシーンは自分が書いたものとは思えないくらい胸が痛みました。これって僕が変なのでしょうか。(笑)

今回は「耳をすませば その後。」よりも物語が浮かんでくるのに時間を要し、最終点も最近まで思い浮かばず悩みに悩んでいましたが、皆さまが最後まで温かく見守ってくださったおかげでここまでたどり着けました。また、励ましのコメントもいただけて本当にうれしかったです。

「となりのトトロ その後 五月物語。」最後までお付き合い頂きありがとうございました。

ブログはまた日常の雑記に戻りますが、そちらも変わらずお付き合いくださいませ。

「となりのトトロ その後 五月物語。」 最終話

2014-01-31 20:04:16 | 日記
「あかり、そろそろ戻るわよ。」

「はぁ~い。」

希が声を掛けると元気良く返事をして此方へ掛けてきた。私達は来た道をゆるゆると戻る事にしたけれど、肝心の石段と鳥居は駐車場まで戻ってきても見当たらなかった。
それでも諦めきれずに辺りを見渡していると、駐車場の隅に設置されている古い木造作りのバス停の横に咲いている二本の桜の木の間から、草に覆われてしまった石段がちらりと見えた。そして石段の続きを目で追ってゆくとその先には古びた鳥居と満開の桜が見えた。

「みつけたっ!」

私は希を呼び止めて、鳥居の方を指差し、

「希。先に車に戻っててくれない? 母さんちょっとあの石段の上にある祠にお参りして来るわ。」

と、言うと、

「ええっ!! あそこ登るの! 」と、驚いていたけれど、そんな心配などお構いなしに胸を張り、

「大丈夫よ。姉さんも行った事があるんだから。」

と、気丈に返事をした。しかし希は、やっぱり心配なようで、

「本当に大丈夫なの? 私達も一緒に行こうか? 」

と、言って気遣ってくれたけれど、私の本当の目的を知られては困るから、「いいわよ。」と言って、念を押した。

「じゃあ、バス停であかりと待ってるわ。何かあったら呼んでね。」

「うん。わかった。」

ようやく諦めた希は、あかりとバス停わきの自動販売機でジュースを買ってバス停のベンチに腰を掛けると、私に向かって「気を付けてね! 」と、言って手を振った。私も手を振り返すと、膝くらいまで伸びた草を踏み分けながら、一歩一歩石段を登って行った。でも、中腹くらいまでくると息が切れてきて、意地を張ったことに少し後悔した。

「うわぁ。これはきついなぁ。こんなに身体が動かないなんてびっくりだわ。」

思わず漏れてしまう言葉に苦笑いをする。曲がってくる背を一度伸ばして気合を入れ、再び歩みを進めると鳥居の奥に小さな祠が見えた。

「あったーっ!」

くたくたになりながら祠の前にしゃがむと、昨年の秋にあかりちゃんと拾ったドングリの実を供え合掌した。トトロの事を考える時、なぜかドングリの実がぼんやりと頭の中に浮かぶから、お供えしたら何か起こるんじゃないかと思ったからなんだけれど、やっぱり何も変わらない。

「いつぞやはありがとうございました。もう会えないのかな? 」

そう呟いてみるけれど、聞こえてくるは、鳥の鳴く声、風が葉を揺らす音、川のせせらぎの音。目に見えるのは春を迎えた山間の風景。

「よっこいしょ。」

そう言って立ちあがると、石段の下で手を振っている希の姿が見えた。私は手を振り返し登って来た石段を「無駄足だったかなぁ。」と、思いながら降りてゆくと、駐車場を駆け回っていたあかりちゃんは私に向かって大きな声で「おばあちゃん!はやくぅ~。」と、叫んだ。

私は両手を振って返事をすると少し急いで石段を下りた。「はぁ。もっと若ければこんな階段走って降りられるのにねぇ。」と、ぼやきながらもようやくの思いで駐車場に辿り着くと、突然、温かな東風が吹いてきたかと思うと青々とした木々を揺らしながらザァーッと山肌を駆け上がり、散り始めていた満開の桜の花も天高く舞い上がった。するとあかりちゃんは山の頂を見上げ、

「バイバーイッ!! 」

と、言って、何かに向かって手を振った。不思議に思った私は、

「あかりちゃん。今、誰に手を振ったの? 」

と、聞くと、「トトロだよ。さっきまで一緒に遊んでたんだよ。ほら、あそこで笑っているでしょ。」と、答えた。

「えっ!」

振り返って山の頂を見るけれど私には何も見えない。でも不思議と見えない事への淋しさは感じなかった。それは、頼りになるお姉ちゃんがいて健二さんや希やあかりちゃんと幸せに暮らしているからなんだろうなと考えていると、母さんが言っていた「足りるを知り、ささやかな幸せを感じなさい。」という言葉を思い出した。

「ああっ、そういうことかぁ・・・。母さん。やっとわかったわ。」

五月の晴れ渡った空を見上げると、吹き上がった桜の花びらが私達の元へ静かに舞い降りてきた。

                          おしまい