「それでね。寛太兄ちゃんから、どうして文部省に入ったのかって聞かれたんだけれど、その話は聞いてなかったでしょ。だから分からないって答えたけれど、どうしてだったんだろうなって・・・。ねぇ、どうしてなの? 」
そういうと、姉はお茶を一口飲むと「そうねぇ。あなたにははなしてなかったわね。」と言って、その訳を話しだした。
「大学3年生の終わり頃にね、漠然と教師を目指していた事に迷いが生じて恩師に相談したの。その時の恩師の言葉というのは、とても印象深くてね。今でも時々思い出すほどだわ。」
「それほどに? なんて言われたの?」
そう聞くと、姉は腕を組み遠くを見ながら想い出を再生させた。
「恩師はね、教員の資格の取得を教育者としての唯一の目標と考えるなら、これは良い、悪いと言う以上に悲しむべき事で、しかも人間の魂に自覚の火をつけるべき教育者の道を選びながら、ただ漠然と教員の免許状を取る事を目標としてしまったら、その後も今のあなたと同じように迷い、虚しいと感じるのではないでしょうか。もし、本当に教育者を志すならば、教員の資格は資格でしかないと考え、取ったその先に教育者としての無限の大道がある事を知り、いやしくも学問修養に志す以上、偉大な先人の踏まれた足跡を、一歩なりとも踏もうと努め、それににじり寄ろうとする気魄がなくてはならないのですよって、私に教授してくださったの。それで、私なりに考えていた時に、文部省に行かれている先輩から声を掛けられて、話を聞いてみるとそこに私のやりたい事があるんじゃないかと思って、国家二種の試験を受ける事にしたの。それで、文部省に入省する事になったのだけれど、今思うと少し稚拙な思考だったと反省しているわ。でも、その恩師のアドバイスがなければ、今の仕事はしていなかったと感じているわ。」
「ふ~ん。」
「なによ。」
「いやぁ。よくわからないけれど、姉さんらしいなと感心してたのよ。」
「あら、それはありがとう。でも、なんだか懐かしいわね。」
とても嬉しそうに懐かしんでいる姉を見て、いい想い出だったんだなぁと思った。
「それで、寛太さんは他に何か言ってなかった? 」
「そうそう。それでね、出産を機に文部省を退官したってはなしたら、サツキさんらしいって笑ってたわ。」
「いやだ。恥ずかしいじゃない。」
「でも、本当に思いきった選択だったね。」
「そうかな。たしかに周りの人はもったいないと言っていたけれど、私にしてみれば自然な選択だったわよ。だって、母さんが療養中の時とても淋しかったでしょ。現在のように社会が支援してくれる制度があれば考えたけれど、その当時働きながら育児をする事は、自分の子供にも淋しい思いをさせてしまう事だって思ったからよ。」
さすがは姉。そこまで考えて仕事を辞めたのかと思った。
「へぇ。それが理由だったんだ。たしかに、母さんがいない時はすごく寂しかったな。」
「そうでしょ。それに一つの事に集中した方が心身共に余裕が出来て充実するからメリットとしても大きいと思うよ。」
「うん。たしかに、そうかも。」
「寛太さんは他に何か言ってなかった? 」
「う~ん。それくらいかなぁ。あっそうだ!! 」
「なに、なに? 」
「よく解らないんだけれど、ビートルズのおかげで英会話が助かったっていってたよ。」
そう言うと、姉は湯呑茶碗を両手で持って微笑んでいた。
そういうと、姉はお茶を一口飲むと「そうねぇ。あなたにははなしてなかったわね。」と言って、その訳を話しだした。
「大学3年生の終わり頃にね、漠然と教師を目指していた事に迷いが生じて恩師に相談したの。その時の恩師の言葉というのは、とても印象深くてね。今でも時々思い出すほどだわ。」
「それほどに? なんて言われたの?」
そう聞くと、姉は腕を組み遠くを見ながら想い出を再生させた。
「恩師はね、教員の資格の取得を教育者としての唯一の目標と考えるなら、これは良い、悪いと言う以上に悲しむべき事で、しかも人間の魂に自覚の火をつけるべき教育者の道を選びながら、ただ漠然と教員の免許状を取る事を目標としてしまったら、その後も今のあなたと同じように迷い、虚しいと感じるのではないでしょうか。もし、本当に教育者を志すならば、教員の資格は資格でしかないと考え、取ったその先に教育者としての無限の大道がある事を知り、いやしくも学問修養に志す以上、偉大な先人の踏まれた足跡を、一歩なりとも踏もうと努め、それににじり寄ろうとする気魄がなくてはならないのですよって、私に教授してくださったの。それで、私なりに考えていた時に、文部省に行かれている先輩から声を掛けられて、話を聞いてみるとそこに私のやりたい事があるんじゃないかと思って、国家二種の試験を受ける事にしたの。それで、文部省に入省する事になったのだけれど、今思うと少し稚拙な思考だったと反省しているわ。でも、その恩師のアドバイスがなければ、今の仕事はしていなかったと感じているわ。」
「ふ~ん。」
「なによ。」
「いやぁ。よくわからないけれど、姉さんらしいなと感心してたのよ。」
「あら、それはありがとう。でも、なんだか懐かしいわね。」
とても嬉しそうに懐かしんでいる姉を見て、いい想い出だったんだなぁと思った。
「それで、寛太さんは他に何か言ってなかった? 」
「そうそう。それでね、出産を機に文部省を退官したってはなしたら、サツキさんらしいって笑ってたわ。」
「いやだ。恥ずかしいじゃない。」
「でも、本当に思いきった選択だったね。」
「そうかな。たしかに周りの人はもったいないと言っていたけれど、私にしてみれば自然な選択だったわよ。だって、母さんが療養中の時とても淋しかったでしょ。現在のように社会が支援してくれる制度があれば考えたけれど、その当時働きながら育児をする事は、自分の子供にも淋しい思いをさせてしまう事だって思ったからよ。」
さすがは姉。そこまで考えて仕事を辞めたのかと思った。
「へぇ。それが理由だったんだ。たしかに、母さんがいない時はすごく寂しかったな。」
「そうでしょ。それに一つの事に集中した方が心身共に余裕が出来て充実するからメリットとしても大きいと思うよ。」
「うん。たしかに、そうかも。」
「寛太さんは他に何か言ってなかった? 」
「う~ん。それくらいかなぁ。あっそうだ!! 」
「なに、なに? 」
「よく解らないんだけれど、ビートルズのおかげで英会話が助かったっていってたよ。」
そう言うと、姉は湯呑茶碗を両手で持って微笑んでいた。