「いやぁ~。ようやく着いたわねぇ。」
「わぁーい!」
「あかりっ! ちょっと待ちなさい!!」
車を駐車するなりドアを開けたあかりちゃんは外に駆けだしていった。私達も続いて車を降りると、あかねちゃんを呼び戻し三人で手をつないで渓谷沿いに続く遊歩道へと向かった。
澄んだ空気を胸一杯に吸い込み、渓流のせせらぎや風が葉を揺らす音に耳を傾けていると、どこからか鶯の鳴き声も聞こえてきた。川沿いの桜は植樹されてから10年くらいの細くて若い幹だけれども綺麗な花を咲かせていて、十分に目を楽しませてくれた。あかりちゃんは私達の手を離すと先へと駆けていった。その元気な姿をほほえましく見ていると希が、
「母さん。こんなところよく知ってたね。どうやって知ったの? 」と、話しかけてきたから私は素直に事実を話した。
「この間、姉さんに教えてもらったのよ。」
「サツキおばさんに? 」
「そう。なんでも大学時代に友達と登ったんだって。」
「へぇーっ。意外だなぁ。なんか勉強ばっかりしているイメージが強いけど。」
希が抱いていた姉のイメージがそんな風だったと思うと可笑しくなって笑ってしまった。
「そうそう。一時期本格的に登山していた事もあったのよ・・・。」
娘とたわいもないおしゃべりをしながら歩いてゆくと整備された遊歩道が途中で途切れ、山頂へ続く細い登山道が見えきた。
「どうする? ここで引き返す? 」
「うん。あかりもいるしね。」
すると、あかりちゃんは何かを見つけたらしく、こちらに手を振りながら、
「ママ~っ! 見て!見て! 川にお魚がいっぱい!!」
と、叫んだ。私達も川の流れの方に目をやると、ごつごつとした岩肌の間を縫うように流れる清流の低い滝の滝壺に、時々きらきら光る魚の群れがみえた。あかりちゃんはこのような風景を見るのは初めてらしく、とても興味深そうにその様子をじっと見ていた。
そう言えば、松之郷に流れている松井川も、私が子供の頃は水もきれいで魚も沢山いた。でも、去年大クスを見に行った時、ちらっと見えた松井川の風景は、住宅の間を流れていて川岸をコンクリートで固めた近代的な川へと姿を変えていた。
「・・・母さんが子供の頃住んでいた松之郷の川もこれ位綺麗だったのよ。」
「母さん、時々松之郷の話をするよね。話を聞くとすごく田舎みたいな感じがするけど。」
「昔はね・・・。でも、今はびっくりするくらい立派な住宅地で、昔の面影はほとんど残っていないわ。」
「都市開発が進んじゃったのね。」
「まぁね。でも、そのおかげで過疎にならなくて済んでいるみたいだけれどね・・・。」
「そうなんだぁ。」
自分の目で見て、思った事を言葉にしてみると、複雑な思いが胸の中で起こったけれど、それと同時に、姉が言っていた「方丈記」の件がぼんやりと浮かんできた。
「わぁーい!」
「あかりっ! ちょっと待ちなさい!!」
車を駐車するなりドアを開けたあかりちゃんは外に駆けだしていった。私達も続いて車を降りると、あかねちゃんを呼び戻し三人で手をつないで渓谷沿いに続く遊歩道へと向かった。
澄んだ空気を胸一杯に吸い込み、渓流のせせらぎや風が葉を揺らす音に耳を傾けていると、どこからか鶯の鳴き声も聞こえてきた。川沿いの桜は植樹されてから10年くらいの細くて若い幹だけれども綺麗な花を咲かせていて、十分に目を楽しませてくれた。あかりちゃんは私達の手を離すと先へと駆けていった。その元気な姿をほほえましく見ていると希が、
「母さん。こんなところよく知ってたね。どうやって知ったの? 」と、話しかけてきたから私は素直に事実を話した。
「この間、姉さんに教えてもらったのよ。」
「サツキおばさんに? 」
「そう。なんでも大学時代に友達と登ったんだって。」
「へぇーっ。意外だなぁ。なんか勉強ばっかりしているイメージが強いけど。」
希が抱いていた姉のイメージがそんな風だったと思うと可笑しくなって笑ってしまった。
「そうそう。一時期本格的に登山していた事もあったのよ・・・。」
娘とたわいもないおしゃべりをしながら歩いてゆくと整備された遊歩道が途中で途切れ、山頂へ続く細い登山道が見えきた。
「どうする? ここで引き返す? 」
「うん。あかりもいるしね。」
すると、あかりちゃんは何かを見つけたらしく、こちらに手を振りながら、
「ママ~っ! 見て!見て! 川にお魚がいっぱい!!」
と、叫んだ。私達も川の流れの方に目をやると、ごつごつとした岩肌の間を縫うように流れる清流の低い滝の滝壺に、時々きらきら光る魚の群れがみえた。あかりちゃんはこのような風景を見るのは初めてらしく、とても興味深そうにその様子をじっと見ていた。
そう言えば、松之郷に流れている松井川も、私が子供の頃は水もきれいで魚も沢山いた。でも、去年大クスを見に行った時、ちらっと見えた松井川の風景は、住宅の間を流れていて川岸をコンクリートで固めた近代的な川へと姿を変えていた。
「・・・母さんが子供の頃住んでいた松之郷の川もこれ位綺麗だったのよ。」
「母さん、時々松之郷の話をするよね。話を聞くとすごく田舎みたいな感じがするけど。」
「昔はね・・・。でも、今はびっくりするくらい立派な住宅地で、昔の面影はほとんど残っていないわ。」
「都市開発が進んじゃったのね。」
「まぁね。でも、そのおかげで過疎にならなくて済んでいるみたいだけれどね・・・。」
「そうなんだぁ。」
自分の目で見て、思った事を言葉にしてみると、複雑な思いが胸の中で起こったけれど、それと同時に、姉が言っていた「方丈記」の件がぼんやりと浮かんできた。