硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「となりのトトロ その後 五月物語。」 25

2014-01-16 09:45:09 | 日記
秋も深まった11月の半ば。街路樹や学堂の木々も色付き始めた頃、昼食を取りながら、「紅葉狩に行きたいわね。」という話をしていたら、友人が「郊外に綺麗な紅葉が見られる渓谷があるよ。」と言った。これはと思い、詳細を尋ねると「人づての話だから詳しくは分からないの。」と言われたけれど、彼女のおぼろげな情報をもとに登山を共にする友人に尋ねると、山を熟知している友人だけあって、すぐにその場所は判明した。そこは、関東地方で紅葉が綺麗なところとして有名で、途中まで遊歩道がついており、手軽に行ける山である事が分かったから、いつもは学内で研究を専門としていて、外に出たがらない友人達を「たまには自然に触れておかないと生き物としての感覚が鈍くなるわよ。」等、上手い事説き伏せて誘いだした。

最初は渋っていた友人達も、風光明美な渓谷の紅葉は彼らに感動を与え、標高800メートルほどの小高い山の頂上に辿り着くと、友達の説明通り、西には富士山、東には関東平野が広がる風景に気持ちは自然に盛り上がった。私達はさっそくお弁当を開け、多岐に渡ったおしゃべりを展開すると、普段インドアが中心の友達も「来てよかったわぁ」と言って、とても喜んでいたから、私もついついおしゃべりに夢中になり、秋はつるべ落としだということをすっかり忘れていた。
それでも日没までには何とか下山できるだろうと山を降り出したが、私達の足よりも日が落ちるのが早く、周りが薄暗くなってきて、しかも遊歩道までの山道にはいくつもの分かれ道があったにもかかわらず、おしゃべりをしながら下山していたものだから、どこかで道を誤ってしまい、気づいた時にはどのあたりを歩いているのか分からなくなっていた。

「これはまずい事になった。」

私はこの場をどう乗り切るか必死で考えたけれど、どんどん暗くなるし、山登りが初めてという友達も次第に不安を感じたのか、「ねぇ、本当にこの道であっているの?」と、口に出し始めた。私は「うん。大丈夫だよ。行き来た道とコースは違うけれど。」と、返事をして不安な気持ちを隠したけれど内心は穏やかではなかった。

「どうしよう。遭難なんて・・・。」

その時、私は無神論者にもかかわらず、祈ってしまった。「お願い。神様、私たちを助けて。」と。