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我が家の墓は、私が生まれる前から数十基が立ち並ぶ墓地の一角にある。そこは山の斜面だが、周辺が放置された状態が長く続き、竹が徐々に繁茂し墓の周囲まで攻めてきた。そのため、タケノコの時期にはそれを取り除くため、墓参りの頻度を高める。周辺の墓の持ち主もそれぞれに対応し、時には隣の墓を邪魔するタケノコは取りぞく相互協力は無言のうちに成り立っている。
タケノコの季節になって4度目の見回りに行った。1メートルほどに伸びた2本を倒した。作業しながら妙に「ウグイス」の鳴き声が気になった。先日見たニュース映像が記憶のどこかに残っていたのだろう。
ニュースの内容は「1980年代、東京都三宅島にネズミを駆除するために持ち込まれたイタチが繁殖、ウグイスが危機にさらされている」という映像を見た。「イタチは卵やひなを襲う。ウグイスは子孫を守るためそれまでより3倍も高い位置に営巣を始めた。すると今度は空からカラスに襲われる被害が出ている。生態系のバランスが崩れる恐れもある」という。
頭上の新緑の中で鳴く、一呼吸の間をおいて、道路を挟んだ向かい側の同じような新緑の中で鳴く。止むことなく交互に泣き続けるが、どちらもウグイスの姿は見えない。縄張りを主張しているのかそれとも求愛の鳴き声なのか分からぬままに聞いている。「梅にウグイスというけれど、あれはメジロの間違い。ウグイスは花の蜜を吸わないし見晴らしの良い枝は避ける」そんな話を思い出しながら、ウグイスの鳴き声はすれども姿は見えぬ、に納得していた。そういえば、ウグイス餅の色はメジロ色だ。