日々のことを徒然に

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消せない跡

2024年11月13日 | エッセイサロン
2024年11月13日 毎日新聞「はがき随筆」掲載

 先輩が亡くなってすぐの奥さんの話。
 主人は視力検査不適で運転免許を失った。「不便になったねえ」とたまにだが愚痴っぽく言った。それから間もなく主人は入院したが、帰らぬ人となった。愚痴を言ったことを心から詫びた。旅や買い物、通院やちょっとそこまで、嫌な顔をせず乗せてくれた。そんな愛車のタイヤの跡が薄く車庫に残っている。その跡を消すまいとそれを避けるように手心をして掃いている。それは感慨深い口調だった。
 先日、車庫を掃く姿を車窓から見た。あの跡はどうなったかな、お元気な姿にほっとした。


 (今日の575) 薄くても思い出濃いいタイヤ跡
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