日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

正月の朝

2024年12月26日 | エッセイサロン
2024年12月26日 中国新聞セレクト「ひといき」掲載

 私は高校卒業後に就職した。24時間稼働する工場の3交代現場に配属され、30代初めまで続いた。夜勤の時は午後11時から翌朝7時まで勤務した。
 夕食を済ませ出勤していたが、これでは朝まで活力が持たない。同僚はむすびやパン、麺など軽い食事を持参していた。夜食は計器室にある休憩所で取り、そこには流し台と給湯設備があり各自が調理していた。
 私は生麺のうどんをよく持ち込んだ。湯で麺を温めてほぐし持参の即席だしを加え、薬味を入れて職場ならではの夜食を楽しんだ。
 ある年の大みそか、全員が生そばを持ってきていた。しかも一人が正月用に家で作った地元名物の角ずしを全員分用意しており、大きな拍手が起きた。すしの加わった豪華な年越しの夜食をそろって食 べた。
 職場にはテレビの紅白歌合戦の歌声や除夜の鐘の音も初詣の中継なども届かないが、家とは違った、大みそかのひとときを過ごすことができた。
 生産現場では安全と安定運転が第一の使命。それを果たすのに空腹のいらいらは厳禁だ。そんな大みそか明けの正月の朝、工場の銀色のタワーが初日の出でだいだい色に映える姿が見られるのは、夜勤勤務者へのご褒美だったように思う。

 (今日の575) 真夜中も働く者の一駒を
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