空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

Caravan:ティフアナ到達

2018-11-18 11:59:15 | Newsメモ
AFP 中米移民2000人超、対米国境に到着 地元民からは冷たい歓迎 2018年11月17日 11:18 発信地:ティフアナ/メキシコ

メキシコ当局は16日、米国を目指す中米からの移民集団(キャラバン)のうち2000人以上が、同国北部の対米国境の町ティフアナ(Tijuana)に到着したと発表した。現地では、移民に対する抗議デモや投石行為も見られた

1か月以上にわたる旅を経てティフアナに到着した移民たちに対し、フアン・マヌエル・ガステラム(Juan Manuel Gastelum)市長は、移民の「群れ」が「攻撃的かつ非常識なもくろみを持って」やって来たと、発言に外国人嫌悪をにじませた。保守系の国民行動党(PAN)に所属する同市長は、直ちに移民を本国送還するようメキシコ政府に要請するとともに、「人権を尊重しろと言われるだろうが、人権とは法律を順守する人のためのものだ」と主張した

 原理原則から言えば―倫理的に言えば、人権は人間扱いの全ての人に存する。国籍によらず、地域によらず、民族によらず、ともかく人権があるのは大前提だ、ということになる。この点でこの市長さんは批判されるだろう。

 他方で、例えば生存権・居住権・移動の自由などがあるのは当然のこととして、それを保障するには・現実の世界で運用するには一定の資源を要する。「人権を尊重しろと言われるだろうが、人権とは法律を順守する人のためのものだ」と言う言葉は、ちゃんと別の言葉で言い換えるべきだ。「我々は人権を尊重するが、現実にできる手助けは限られている。移民たちを保護するために、市予算の見直しを早急に行う必要がある」など。

 …これが問題なのだ。メキシコ、ないしティフアナは、『メキシコを単に通過して、アメリカ合衆国に入国し、そちらで自活の道を探す他国人』のために水、食料、衛生材料、宿泊スペース、衣料に医療、移動手段…を提供し、そしてその投資にたいするリターンはほぼ期待できない。

 ところで上掲AFPは奇怪な一文を紛れ込ませている:

総勢約5500人から成るキャラバン本隊の移民は11日以降、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が国境に派遣した兵士数千人に阻止されることなく、続々とティファナに到着している

 米トランプ大統領は米墨国境に軍を派遣したが、ふつうこういう場合、軍隊は自国領域内に配備する。そりゃ当然だ、他国領土内に軍隊を派遣するというのは、侵略だ。だから、ホンジュラス等からメキシコを北上するcaravanは、メキシコ領内を移動するのであって、常識的に考えれば、米国内に配備されている米軍に阻止されるはずがない。

 また、軍は国境周辺に配備されたかどうかというタイミングであり、国境近くの町にようやく到達したcaravanがその手前で阻止される可能性があるとしたら、米軍がメキシコ国内に数十キロ以上の深さで浸透した場合だけだろう。


 …ふつう、それ、開戦した後の状態と違うか。


 どうもものの道理がわかってない人物が記事を書いているように思う。

BBC Caravan migrants reach United States border 14 Nov 2018

関連:「「キャラバン」分派は国境の町までたどり着く(2018-11-15)」

 トランプ氏が「政治的に動機付けられた」云々というのは、この辺を指して言ってるのかもなあ、とふと思ったり。LGBTQの、生活する分には困ってなさそうな身なりの良い人たち―同胞の援助がわりとふんだんな人たちを意図しているのかも、と。

 だってなあ―

BBC Mexico City 'milestone' for migrant caravan heading north 5 Nov 2018

 教会に宿を借りてる連中の様子とか、以下の記事はメキシコからグァテマラに流れていった一派についてだが―

BBC Migrant caravan: Tear gas on Guatemala Mexico border 20 October 2018

 催涙ガスと苦闘しながらの泥汗にまみれた連中とか、これは『己の生存をかけて、ゲーテッドコミュニティにどうにか入り込んで、ビルの窓掃除でもなんでもいいから職にありつきたい!』という決死さ具合が、どうも切実に過ぎ、意識的な政治的活動とは思いがたい。

 つうか、彼らを動員するのも大変だぞ。「やあ、僕はアメリカの政治運動家さ! トランプのヤツを大統領から引き摺りおとすために、政治的動揺を作ろうと思っているんだ。ところで君、ホンジュラス国民君。そのために、合衆国への大移民行動を起こしてくれないかね?!」。これで「おおそうか! 個々にこそっと入り込んでいつのまにかUSAに紛れ込むより、数千人の大集団をつくってトランプ大統領の目を強烈にひいて、国境警備を超強力にしてもらったほうが、アメリカに紛れ込める可能性が増すのか! すげえや!」と納得するひとがどれほどいるかね。

 キャラバンを組んだのは、目的ではなく結果ではないかねえ、とか思えるのだが。

Honduran President Juan Orlando Hernandez has asked permission to send his country's civil protection force to Guatemala to help the migrants.

 …うんまあ、シリアのアサドより、よほどちゃんとした対応である。いやまあ、比べるのも失礼ではあろうが。

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