空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

「あれはきっとエチオピア兵を狙ったもので」

2008-06-25 17:01:40 | ソマリア関連
 先日書きました「サッカー観戦者は爆破処分:ソマリア」の件の,イスラミスト側のご見解について。イランのPressTV経由の情報です。

PressTV Attack on cinema in Mogadishu kills 5 22 Jun 2008

 武装した男たちがモガディシュ南部Jajab区で映画館を襲撃,5名殺害10名負傷。アメリカ・インドの映画を見る者たちに警告するチラシがばら撒かれたあとのこと。事実を報じる点は特に問題なし。

 でまあ,PressTVは,UICが無辜の若者達を対象とした攻撃を非難し,アル・シャバブがこの5名の若者を殺すに至った犯罪者を追跡することを誓ったというわけです。UICがいうには,かれらはアメリカ映画には賛成しないが,その主張を広めるのにこうした暴力的手段は用いない!という(The UIC said they did not approve of American films but would never use such acts of violence to enforce their opinions)。

 …ほんとにそれが有言実行ならいいんですけど。他方,UICは,これら(映画館への)攻撃は,ソマリの国土上に存在する権利を持たないエチオピア兵を狙ったものだろうと主張する(The UIC asserts that its attacks are aimed at Ethiopian soldiers, who they believe have no right to be on the Somali soil)。

 …あーつまり。『不信心者に対する攻撃』自体は許可方針なんだな。結果として無辜のソマリの若者を殺すことになったわけで,それについての責任には言及しなければならないわけだだって彼らの有力な構成人員はそのソマリの若者なわけでな。「同士討ち」だってオールオッケーなんて方針,見せるわけにはいくまい。だってそんなことしたら兵隊のなり手がへっちゃうよ?

 まあ,イスラミストのジレンマもありましょうね。彼らもがちがちの一枚板なわけじゃなく,憂国愛教の至純の情熱に満ちた有志連合の側面もあるはずで,だからこそ急速な勢力拡大が可能だったわけでしょう―つまり,志願の若者を大量に獲得する事で。
 しかし,すると,新兵教育に手が回らないわけで。当然,様々な意味で練度の落ちる連中を抱え込まないといけなくなる。彼らの行動を把握するのは不可能だ―ましてや指導部は遠くエリトリアにあり,Aweys師の手足たるAyroは戦死してしまっている。
 そんな中,UICにとってすらはねっかえりと言いたくなる行動を取る者があっても不思議ではない。

 ともあれ,今回の件はソマリアのイスラミストの現実対処について些か教えてくれる点がないでもないです―無警告に近い状態でソマリの若者を大量殺戮するのは,流石に彼らにとっても問題行動であること。
 ―他方,やっぱり,『エチオピア兵を狙ったものです!』と言っておけば,多少は免罪されなくはないということ。…プントランドのボサソですか,移民希望のエチオピア人が詰まった場所を爆破し,『だってそこはエチオピア兵が家族と一緒にリゾートしてる場所だもん!』と主張した事件を想い起こしますが…。

 …なお,イランのPressTVは奇妙にイスラミストよりの報道をするのでして,その度は,過ぎればアタマを抱えて彼らの知性を疑いたくなるほどになります(「Hiranでエチオピア軍に待ち伏せ攻撃―ソマリア」)。その点,注意が必要だったり。微妙に冷笑的な感が(時々)あったりするのですけどね。

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