「廃炉が決まっている高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、原子炉容器内を満たしている液体ナトリウムの抜き取りを想定していない設計になっていると、日本原子力研究開発機構が明らかにした」「同機構が近く原子力規制委員会に申請する廃炉計画には具体的な抜き取り方法を記載できない見通しだ」
そういう設計ですからね、という回答が帰って来るだろうところ。
「原子力機構幹部は取材に対し「設計当時は完成を急ぐのが最優先で、廃炉のことは念頭になかった」と、原子炉容器内の液体ナトリウム抜き取りを想定していないことを認めた」
「原子力機構は来年度にも設置する廃炉専門の部署で抜き取り方法を検討するとしているが、規制委側は「原子炉からナトリウムを抜き取る穴がなく、安全に抜き取る技術も確立していない」と懸念する」
「もんじゅに詳しい小林圭二・元京都大原子炉実験所講師は「設計レベルで欠陥があると言わざるを得ない。炉の構造を理解している職員も少なくなっていると思われ、取り扱いの難しいナトリウムの抜き取りでミスがあれば大事故に直結しかねない」」
印象としては、最後にこんなコメントをいれることで、廃棄処理のことをそもそも考えたこともない欠陥建築にして延々数十年あったのに廃棄処理を考える人間の一人もでてこなかった無能機関―という記事に仕立てた感じ。
Togetter 毎日新聞+小川一毎日新聞取締役「もんじゅはナトリウム抜き取り出来ない欠陥設計」⇒原子力研究開発機構「誤報」
この冒頭部分の誰かさんのコメント、「危険な冷却用のナトリウムは抜き取れない設計になっているとのことです。廃炉を想定していなかったとは‥。原発はよくトイレのないマンション に例えられますが、これはどう表現したらいいのでしょうか」、これが上掲”印象”を正直に受け取ったものだろう。
福井新聞 規制委員長「取り出しは難しい」 もんじゅ1次系ナトリウム 2017年11月30日 午前7時00分
「原子力規制委員会の更田豊志委員長は29日の定例会見で、「1次系ナトリウムの取り出しは難しい」との認識を示した」
「ただ原子力機構は「燃料を全て取り出した後のナトリウム抜き取りは、原子炉容器の底部まで差し込んであるメンテナンス冷却系の入り口配管を活用することなどで技術的に可能」としており、今後詳細に検討して決定していく方針」
この福井新聞の記事を見ると、「原子炉からナトリウムを抜き取る」専用の穴はないのかもしれないが「原子炉容器の底部まで差し込んであるメンテナンス冷却系の入り口配管」があることがわかる。
(JAEA抗議文続き)更には事実関係を十分に取材せずに掲載されたものであることから、当機構としては甚だ遺憾であります。 今後、毎日新聞に対しては、このようなことが起こらないように、強く抗議 するとともに善処を求めてまいります。 」…ここまでガチギレの文書も珍しく。
— へぼ担当@SafeMode (@hebotanto) 2017年11月29日
…まあそんなわけで、ある種の政治的見解に合わせて記事を書く種類の「言葉のプロ」のうまい質問に乗せられてうっかりコメントを発したりすると、それをネタに作文されて事実上の誤報・プロパガンダ記事を書かれたりする恐れがあるから、技術者諸君は国語も勉強しましょうねーとかいうことになりそうで鬱。
Internet Com もんじゅのナトリウム「抜きとれます」―日本原子力研究開発機構 2017/11/29 17:40
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 が毎日新聞に反論。一部、そのとおりとも思うけど、建設当初ナトリウム抜き取りの方法を検討していなかったのは事実みたい。技術的には可能で、方法はこれから考えると。それじゃやっぱアカンと思うぞ。 https://t.co/n2KqC3Lrgg
— 岩田健太郎 (@georgebest1969) 2017年11月29日
毎日新聞の報道に対するJAEAの解説。「誤報」であるとしているが、廃炉手順を想定せずに設計されている点は否定していない。ナトリウムは抜き取れそうだとしているが、最初からできるように設計されているよりは難易度は上がるだろう。 https://t.co/nHOVrOKmyC
— 増田の准教授 (@ProfMasuda) 2017年11月29日
正直、誤報とまでは言えず一部事実誤認とするべきものだとは思う。想定していない経路での抜き取りであり、不測の事態への対応には万全を期す、程度のことは記述するべきだと思うが、リスクを示すことへの抵抗感はいまだに高いことがうかがえる。 https://t.co/nHOVrOKmyC
— 増田の准教授 (@ProfMasuda) 2017年11月30日
というか、「原子炉容器の底部まで差し込んであるメンテナンス冷却系の入り口配管」がある時点で、抜き取りの代替手段を用意していたことは明らかではないか。幾つかの装置はつけているのであり、それらは他の目的で付いていることがしばしばであるが、組み合わせることで難点が回避できるように複数の用途が可能なように設定されている―というのは、我々が文章を書くときも同じようなことはするのである。
そういうわけで、技術者倫理とか技術者教育によい話題を提供しそう。
「正直、誤報とまでは言えず一部事実誤認とするべきもの」というのは穏当な評価と言うべきとも思うが、読者の「印象」をある方向に誘導する気満々で、”事実”を書き連ねてそのシナジー効果で結果として誤報になるように按配した記事だね、という評価もアリアリかと。
そうした技術は、新聞記者さんにはお手の物ではあり―私の経験は―
「『赤旗』紙「ソマリア攻撃加担か テロ特措法 給油の米艦隊出動」を巡って(2007-09-20)」
「艦船に補給すると飛行機が飛ぶ?(2007-10-11)」
すごいよ。インド洋沖を航行する米韓に自衛隊が(艦船用燃料を)給油すると、(ジブチ駐留の対地攻撃機が飛んで)ソマリアに地上攻撃ができるから、自衛隊の(艦船用燃料)給油はソマリア攻撃に使用されたんだ、と読めるように書いてある。
おとなしく艦船から発射されるトマホークとか艦船から出撃する海軍特殊部隊ヘリとかにしとけよ。
追記
けさの一面トップです。なんとなんと。廃炉が決まったもんじゅですが、危険な冷却用のナトリウムは抜き取れない設計になっているとのことです。廃炉を想定していなかったとは‥。原発はよくトイレのないマンション に例えられますが、これはどう表現したらいいのでしょうか。https://t.co/sJIbSYzTbZ
— 小川一 (@pinpinkiri) 2017年11月28日
ちょっとちょっと「毎日新聞社取締役・編集編成、総合メディア戦略担当」さん、かなりご自身の解釈が入ってるコメントじゃないか…。
思ったところは
直視してるの見たことないんだけど
— 田山さとし (@battery_brides) 2017年11月29日
RT @han_org: ぼくの知るかぎり、運動圏の信頼できる人たちは、そのへんがよくわかっているというか。自分自身が糾弾されるべき言動をした事実を直視するところから議論を始めるんだよね。だからこそ、普遍的な信頼を得られるというか。
「”信頼”、”普遍的な信頼”と言う表現に新たな意味を与えた」といった感じである。どーいうディストピアだ。
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