塩尻市贄川、観音寺の裏手に鎮座される「麻衣廼(あさぎぬの)神社」。
御祭神は『建御名方神(たけみなかたのかみ)・事代主命・保食命(うけもちのみこと)』。
社歴「天慶年間(938~947)に諏訪坂東(権現岩の上方)に創立。天正十年(1582)木曽義昌と武田勝頼の戦が鳥居峠にあり武田氏敗退の際社殿を焼失。文禄年間(1592~1596)現在地に遷宮。御柱祭りの記録は安永五年(1776)のものが有る。」
覆い屋の中に鎮座される御本殿は延享4年(1747)に建てられたもので朱漆に柿葺の三間社流造。市の有形文化財に指定されていますが、特別な祭礼の日でもない限り、お目にかかる事はできません。
木曽の地で『建御名方神』を祭る最古の神社とされ、御神紋も諏訪下社と同じ「立穀(たちかじ)の葉」。また七年に一度の寅と申の年の5月には御柱祭が執り行われます。
参道石段、鳥居の左右より神域を守護されるのは狛犬というよりも獅子と呼ぶ方がしっくりくる一対。阿形さんは隙あらば飛び出そうとする仔狛の背中をしっかりと押さえて苦笑い。吽形さんはそんな仔狛を厳しくも慈愛深い目で見守っています。足下の綺麗な装飾の毬は仔狛の為のものでしょうか。
石段左右に聳える巨木に張り渡した注連縄と紙垂。吸い込む空気も、深い社叢の気に満たされて、何とも言えない心地よさ。そういえばこの神社の社叢は市天然記念物に指定されていましたね。
覆屋の傍らに設けられた手水鉢にはまん丸の甲羅を背負った亀が。龍ではなく亀にしたのは何か意図があったのか、それとも石工の好みだったのか。いずれにしても見ているだけでほっこりするフォルムに癒されます。
亀さんの後ろに積み上げられた薪は、やがて訪れる季節への準備? 私たちには10月は秋の真っただ中ですが、木曽の冬はもう目の前。
御社名の【麻衣】は木曽の枕詩で、御岳の村落を中心に古くから織られていた「木曽の麻衣」に由来します。以前記事にした「木曽八景・小野の滝」の風景画に添えられた俳句にも「木曽の麻衣」が読み込まれています。
【名にたてる 木曽の麻衣そめなして 雲井にさらせ たきのしら糸】
参拝日:2010年10月3日
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