tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

貯蓄は美徳か

2009年12月12日 12時39分52秒 | 経済
貯蓄は美徳か
 物理学では「慣性の法則」を勉強しますが、慣性の法則は物理学だけでなく、随分いろいろなところで応用が可能だと思います。
 
 「今日は寒くて嫌だな」などと思いながらゴルフに出かけても、始まれば結構その気になって、最後まで頑張ってしまうし、帰りに一杯ということになって、「早く帰ろう」と思いながら、飲み始めると結構遅くまで・・・・・。

 日本人の貯蓄についての考え方も、かなり慣性の法則に祟られているようです。
 「貯金をおろしてでも使った方が今の日本経済のためにはいいのですよ」といったら、大抵は「貯金は将来のためにしているのだから、今使ってしまっては意味がないじゃないですか。」と反論されてしまいます。
  じゃ、いつ使うのですかと聞きますと、「本当に困ったとき」となります。実は今、日本経済は深刻な消費不足で一番困っているのです。個人的にはいろいろでしょうが、日本経済としては今が貯金を使うべき時なのです。
 
 日本人には「貯蓄は美徳」という考えがかなり染み付いています。以前は日銀が貯蓄増強中央委員会を組織して、国民に貯蓄を奨励しました。第二次大戦中には政府は国民に勤倹貯蓄を奨励しました。

 戦争中の貯蓄は軍艦や飛行機や弾丸になって海の藻屑と消えました。貯蓄は、国債も弾丸切手(ご存じない方のほうが多いでしょう)も無駄になったのです。「貯蓄は美徳」は、戦費調達に利用されただけでした。

 戦後の貯蓄は、日本の経済復興の資金となり、日本の経済成長を支えました。戦後の日本は、資金不足で、東海道新幹線の建設資金も世界銀行から借りたぐらいです。東海道新幹線など当時のインフラ整備は大きく日本の経済社会を前進させ、借金もすぐに返して戦後の経済成長に貢献しました。そういうときこそ貯蓄は美徳なのでしょう。
 
 その頃の成功体験があって、今でも公共投資が経済発展に役立つと思っている関係者も多いようですが、同じ事を繰り返しても、経済学の「収穫逓減の法則」で、投資は無駄が多くなります。やるなら全く新しい分野でしょう(省エネ、新エネルギー、蓄電などなど)。

 つまり貯蓄が美徳(社会のために役立つ)かどうかは、それがどう活用されるかにかかっているのです。銀行に預けているのだから、国債を買っているのだから「銀行や国がきちんと使ってくれているはずだ。」と思いたいのですが、必ずしもそうでないことも、解ってしまっています。
 
 今は民主主義で情報公開の世の中ですから、政府の無駄遣いや、アメリカ国債のドル安による目減り、サブプライムローンによる金融機関の巨額損失など、折角の貯蓄の無駄遣いの問題が多すぎることがみんなに知れ渡っています。

 今、日本の貯蓄は、あまり「生きた使い方」をされていません。メタボの体脂肪のようなことになって、日本経済の健康に害を為しています。
貯蓄は美徳という慣性の法則による思い込みも、再検討の要があるようです。