経常黒字急減の読み方
2013年度の我が国の経常黒字が1兆円を割り込むほどに縮小しました。
さてこれをどう見るか、解説や意見はいろいろあるようです。
・円安に資源価格の高騰が重なって貿易収支が大幅赤字になったから
・原発停止で化石燃料の輸入が増えているから
・円安になっても、企業は海外生産重視で、国内は二の次だから
・災害復興、原発処理などに費用がかかるから
・高齢化、少子化などで、国民の貯蓄が増えなくなったから
・などなど
確かに過去の日本の実績から見れば、経常黒字はGDPの2~4パーセント、10兆円から20兆円というのが当たり前でしたから、これはまさに急減です。
円安になれば国際競争力が回復し、輸出が伸びて黒字が増えるだろうという予測も見事に外れて、一部にはスマホや家電で 韓国や中国に押されていることもあり、日本経済の力もいよいよ落ちてきたのかといった見方もあるようです。
上に挙げた経常収支急減の原因は、それぞれに当たっていると思います。加えて、安倍内閣の内需拡大への大盤振る舞いもあるでしょう。新幹線、高速道路の延伸、国土強靭化政策、拠点空港の拡大・充実などです。オリンピック関連の支出も続くでしょう。消費増税の駆け込み需要も一時的要因としてはあったでしょう。
では本当に日本の国債競争力は弱くなったのでしょうか。多分そうではないでしょう。燃料輸入もこれ以上どんどん増えるというものではありません。
$1=¥80から$1=¥100への円安は、輸入物価を2割ほど押し上げたかもしれません。しかし日本の輸入依存度はGDPの2割弱で、一方国民所得の7割を超える人件費は国際的には2割下がったのです。国際競争力は強まります。
一方国際的に活躍する為替関係の専門家の中では、いよいよ日本の競争力にも翳りが見えて、経常黒字は激減し、円の強さは従来のようではない、もう円高にはなりにくい、といった見方が出て来ているようです。
このブログでは従来からずっと「 GDPを使い切ろう」と書き続けてきました。それは、経常黒字(GDPの使い残し)を出してアメリカに貸して(米国債購入)損をし、しかも大幅黒字国だということで円高にされ、デフレで苦労するより、経常黒字が出るなら、その分は国内で全部、国民のために使ってしまい、結果、黒字がなくなれば、円高も回避でき、日本経済はうんと良くなるという趣旨でした。
今、図らずもその状態が実現したのです、慶州のG20でも「経常収支の大幅な不均衡(赤字あるいは黒字)をなくすべき」という提言がされています。
円安が実現してまだ1年です。これから本当に日本経済の実力が徐々に出て来るでしょう。経常黒字も再拡大の可能性もあります。
これからの日本は、その余裕(経常黒字)を官需と民需のバランス(国債発行か民間企業の活動か)を考えながら雇用の改善、災害復興、インフラ整備、原発の(後)始末などに使い切っていく経済政策が、本格的に必要になるでしょう。
経常収支の動向にはこれからも、ますます要注目です。