tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

人民元相場、世界市場をかく乱

2015年08月13日 14時05分16秒 | 国際経済
人民元相場、世界市場をかく乱
 人民元は従来、ほぼ対ドルリンクの状態で来ていましたが、ここに来て中国の方針は変わりました。今日で3日連続人民元の基準値は対ドルで切り下げられ、累計で4パーセント以上の切り下げです。影響で世界中での株価が暴落したりしています。

 アメリカでは利上げの思惑が交錯する中で、ドル高基調が予想され、それにリンクして人民元高では中国経済はやれないということでしょう。
 前日のレートの終値を勘案して基準値を決めるというのは、それなりの考え方で、投機筋の思惑次第で動くのよりはまだいいのかもしれません。

 少なくとも、中国政府の意思が示されているわけですから、国としての理論も政策もその中では見えていると理解すべきでしょう。 
 IMFなどは、市場を尊重するという意味では歓迎、などという意見もあるようですが、これも「市場は正しい」という前提があっての問題でしょう。

 先日、人民元の1元硬貨が、市中から消えたことを書きましたが、かつて、最低賃金を連年大幅に引き上げたこともこれあり、中国経済の実態は、かなりのインフレだと私は見ています。

 賃金は上がっても、高付加価値経済にすればやっていけるというのが、中国の政策だったのかもしれませんが、高付加価値経済にするのは、そんなに簡単なことではありません。
 特に中国経済は、先進国の企業進出頼み、資本と技術が入ってくれば、大量の低賃金労働者の単純作業の熟練で世界の工場になれたのです。

 コスト高になれば、加えて、金利上昇によるアメリカのマネー引き上げなどがあれば、そこから自力で脱出するのには、長期の血のにじむ技術開発、生産性向上の努力が必要でしょう。

 結局、最も簡単な対応策は、人民元安ということになってしまうのも致し方ないことなのでしょう。
 海外進出を図るには人民元高の方がいいのでしょうが、そちらを多少犠牲にしても、中国本体の経済を立て直すことの方が先決でしょう。

 通貨安による経済立て直しは、ニクソンショック以来、先進諸国の常套手段になってきているのですから、正面切っての文句も多分ないでしょう。
 中国がどこまでの切り下げを考えているのか。その辺りから、中国経済の問題の深刻さが解るのかもしれません。