先週金曜日、総務省統計局から家計調査の家計収支編が発表になりました。あの日は「実質賃金マイナスでは好況は来ない」を書きました。この3月で実質賃金の対前年度月比が24カ月連続でマイナスになった事から2年間も連続は長すぎるという気持ちが強く、4月からの賃上げの効果への期待もあってでした。
今日、家計調査の勤労者世帯の世帯主の定期収入を見ましたら矢張り24カ月連続で対前年実質マイナスになっていました。
消費者物価の上昇のせいだという面もありますが、物価の上昇ばかりを言って、賃金上昇についての積極的な検討が不十分という状況が、今回の春闘で変わったのかどうか、4月分以降の統計の発表が気になるところです。
今春闘の賃上げが主要企業の満額回答も含め一段高になった事は、連合の発表でも出ていますが、5%を越えたと言っても、定昇込みですから平均賃金はそこまで上がりません。
消費者物価の方は、積年の積み残し分を引き上げるといったムードに、円安による輸入物価の転嫁意識、政府の補助金の終了など、どうも値上げムードが止まらないようです。
そうした中で、たよりは平均消費性向の上昇で少し明るい面が出てこないかという所です。
勿論実質賃金が上がらないのに、消費支出を増やせと言っても、勤労者世帯の方は、そんな能天気にはとてもなれませんと言われそうです。
然し2022年の経済成長率が高かったのは、実質賃金マイナスの中でもコロナも終息とのこともあり平均消費性向が年間を通じて高くなった結果です。
そして少しムードが変わり、23年24年の春闘での賃金要求も高くなり、経営側からも(円安の影響もありましたが)賃上げOKサインが出たという効果もあったように思えるところです。
という事で今年3月の平均消費性向ですが、下の図のように2月に続いて上昇(0.8ポイントですが)となっています。
均消費性向の推移(2人以上勤労者世帯)
資料:総務省「家計調査
GDP統計から言えば、個人消費支出はGDPの半分を占めていますから、個人消費が1%増えるという事はGDPを0.5ポイント(名目値)押し上げる事になります。
消費堅調という事で便乗値上げが起きるようなことが無ければこの0.5ポイントはそのまま実質成長率の上昇です。
今年度の政府経済見通しでは実質経済成長率は1.3%ですから、個人消費が伸びれば経済成長率には大きな効果があります。
それが日本経済の今後の賃上げ率上昇の可能性を大きくし、岸田さんの言う成長と分配の好循環につながる事にもなるのです。
日本の家計の平均消費性向は過日長期推移で見ましたように、長期不況の中で随分下がってきました。これが日本経済を低成長にしたという面も否定できないのです。
嘗ての日本の家計は、明日の賃金上昇を期待して、元気に消費をしてきました。三種の神器、3C、新3C等買いたいものもいろいろありました。経済成長期はその購買意欲が経済を成長させるのです。
今の日本経済はかつてのように実質10%もの成長をしなくてもいいのです。実質3%の安定成長でも大いに結構です。個人消費の活発化で経済循環が順調に回り始めれば、その程度は十分可能になるのではないでしょうか。
多分日銀の考えているのも、実質成長率3%、インフレ目標2%で、名目経済成長率5%といった日本経済ではないでしょうか。