あまり大きな記事にはなっていませんが、アメリカの4-6月の実質GDP成長率は、2.0%という予想を上回り2.8%になったということです。
日本では今年度の政府経済見通しの実質GDP成長率は1.3となっていますが、そこまでは無理という状況になりそうで、今年度は0.4%、来年度は1.2%(日経新聞社)などと予想されています。
岸田さんの今後6年間の方針は1%以上という事で、アメリカの成長率にはとても及びません。
アメリカの4-6月(年率換算成長率)が高くなった要因は、GDPの7割を占める個人消費が2.3%増えたことが大きく効いているという事で、消費需要に牽引された高成長というのが明らかなようです。
アメリカはインフレが収まらない中で経済活動は活発で、設備投資も実質5.2%の伸びで前四半期の4.4を上回っているようです。
住宅投資は高金利でこのところ不振のようですが、民間消費と設備投資によって牽引されるというのは、いつの場合でも経済成長の促進に必須な条件です。
アメリカ経済は国際収支は万年赤字で財政と双子の赤字と言われ、決して経済全体としては健全ではないのですが、力強く成長する元気があるという事は、経済不振の日本から見れば、羨ましいことです。
日本は万年黒字の国で、借金より貯金が多いという経済全体といては誠に健全な国ですが、そのおカネを積極的に活用し、経済成長を実現するように使っていないのです。
主な使い道は、借金国アメリカの国債を世界で一番沢山持っていたり、国内の経済活動より海外の経済活動に使ったりですから結果は現状のようになっているのです。
何が違うのか、高い成長率を上げているアメリカと比較してみますと最も違うのは日本の消費需要の弱さです。
ではその原因は何かといいますと、これは単純で、賃金の上昇率が物価の上昇率より低いという事にあるようです。
このブログの「実質賃金の上昇に必要な条件は?」でグラフを出していますが、皆様疾うにご承知のように2022年の4月以来、今年5月まで25か月、賃金の上昇は物価の上昇を「下回って」います。実質賃金はっずっと前年より少なくないのです。
これでは実質消費支出を増やせとっても、家計は「無理です」と言うでしょう。そして、これを何か月、何年続けても消費支出が実質GDPを押し上げたり、言葉を換えれば、経済成長の牽引役になったりすることは不可能でしょう。
回答はただ一つ「もう少し賃金を上げたらいかがですか」という事になるのです。日本の企業は結構収益を上げ、自己資本比率も依然に比べればずいぶん高くなり、経営基盤も安定してきました。この春から夏にかけてはそれを評価されて、日経平均は大幅に上がりました。
にもかかわらず、日本の労働組合は「もっと大幅な賃金の上昇が必要」という賃上げ要求をしません。「日本経済最大の不思議」はこれでしょう。
労働組合のナショナルセンターの連合は「今春闘の賃上げは5%を超え、33年ぶりの高水準と言いますが、毎月勤労統計では賃金水準の上昇は2%弱ほどで、消費者物価の上昇率は下がってきましたが、2%を超えています。6月の統計でも多分同様な状況でしょう。
先日最低賃金の事も取り上げました。中小企業では賃上げは無理という言葉が聞かれます。何故でしょう。価格を上げればいいのです。政府のそれを奨励しています。日本物価は訪日客が驚くほど安いのです。円安のせいだけではありません、賃金上昇率が低く日銀の目標の賃金インフレ2%にも届かないからです。
賃金も物価も上げましょう。国内要因だけならば、賃金上昇より物価上昇の方が高くなることはありまあせん。
賃金水準が今より高くなっても、日本経済が国際競争力を喪失し、経常収支赤字国に転落することは先ずないでしょう。
未だ賃上げの余裕は十分あります。その余裕をしっかり計測し、その余裕を賃金水準の上昇につぎ込むこと政労使が検討すべき経済政策でしょう。
それが出来れば、日本は消費不況から脱出し、消費が経済成長の主役になり、久方ぶりの成長経済に転換していくことになると思うところです。
思い切ってやってみませんか。