このブログではよく統計を使います。理由は、統計を使うと、現状の把握が数字で出来ますから具体的で、解り易くなるからです。
例えば、2023年のアメリカの実質経済成長率が2.5%で、日本の2023年度は1.6%だったといえば、日本に比べてアメリカの経済成長率がどのくらい高いかという事、その違いがはっきりと理解できます。
もちろん、統計というのは、そうした明確な説得力がありますから、使い方には十分注意しなければなりません。
統計で比較するのはクロスセクション(横断比較)とタイムシリーズ(時系列)の場合が多いことはご承知の通りです。
どちらの場合でも、条件を同じにして比較しないと正確な比較はできません。日米の経済成長率の計算の仕方はSNAという国際方式で 揃っているので比較が出来るのです。
企業で、対前期比売上と利益が何%伸びたという数字でも、計算方法が同じでないと正確な比較はできません。
余計なことを書きましたが、最近注目されているのは、日本では25か月連続で、対前年同月の実質賃金がマイナスだということで、そんなひどい経済状態を続けている政府に対しては強烈な批判があり、内閣支持率の低下の大きな要因でしょう。
実質賃金がマイナスになる計算には消費者物価指数という統計を使います。これは政府(総務省)が責任をもって、国内の消費者物価を総合してその動きを正確に数字にしているものですから、消費者はこれが上がると心配します。
一方、政府の方はこの指数が年2%ぐらい上がるのが一番良い経済状態だと考えていて、この所でもまだ2%まで下がっていないから経済政策をどう舵取りするか、値上がりしている輸入エネルギーが各家庭の台所まで響かないように石油元売り会社や電力・ガス会社に補助金を出そうとか、いろいろ政策を考えます。
金融政策を担当する日本銀行は、消費者物価指数の上昇がが基本的に2%を割り込んできたら金融政策を変更しようと考えて、日本銀行自身が調べている輸入物価や企業物価も併せて検討しながら、金融緩和修正のタイミングを計っているのです。
統計というのは、まさに、国民生活に密着したものになっていて、日本の経済政策の基礎をなしているのです。
そしてさらに大事なことは、統計数字というのは、消費者物価指数でも賃金指数でも、経済成長率でも、一目見れば、その変化がいい方に行っているのか、悪い方に行っているのか、国民の一人一人にはっきり解るという事です。
ですから、こうした統計の効用、威力を利用して、日本の経済社会が悪くなっているのか良くなっているのかを国民に解り易くすることで、政府の政策をより良いものにすることも出来るはずです。
そうした意味で大変重要な統計があります。それは「ジニ係数」という統計です。
これはなにを表す統計課といいますと、所得格差が大きいか小さいかを示す統計です。残念ながら一般的ではありません(一般的にすると政府が困る?)。
トマ・ピケティが、所得格差の拡大という問題を取り上げ(『21世紀の資本論』)世界的な反響を呼びましたが、格差社会化は現代社会の大きな問題でしょう。
ならば日本は、消費者物価指数と同じように、常に政府が「ジニ係数」を発表するようにし、日本の格差社会化に常に注意して、格差社会化を防止するように考えたらいかがでしょうか。
幸い、日本には「家計調査」という優れた統計があります。これをベースにして、日本が格差社会化しているかどうかを一目で明らかにする数字が常に国民の目に触れるようにする事は可能でしょう。
多分それは、結果的に、政府の経済政策についての厳しい国民の目を育てることに役立つのではないでしょうか。