tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

インフレ? デフレ? 日本の現状

2025年02月05日 17時03分34秒 | 経済

今の日本の経済状態はインフレなのかデフレなのか、どちらとお思いでしょうか。植田日銀総裁は、物価が下がってくると思っていたら、最近は反転上昇気味でインフレが心配という感じの発言です。

赤沢経済再生担当相は、足元はインフレで日銀と政府の見解に齟齬はないと言いますが、石破総理は,日本経済はデフレではないがデフレから脱却できていない、インフレと決めつけることはしないと言っています。

インフレとデフレが混在している状態としては、石油危機の後の欧米の状態、物価は上がるが、企業は利益が出ない、経済成長はしない、これは「スタグフレーション」という新しい現象だという事になりました。

今の日本はそれとも違いますね。経済成長はしないという点ではスタグフレーションと同じですが、企業利益が順調という点ではスタグフレーションとは違いいます。

ということで、「それでは何なのだ」という事になるわけです。

物事の結果には原因があるわけで、原因に遡って見て行けば因果関係が解るはずですという事で、何が原因か考えてみましょう。

<インフレ>

・輸入インフレ(海外価格上昇、円安)

・コストインフレ(賃金上昇、消費増加、利益増加)

<デフレ>

・海外より物価高(国内コスト高、円高)

・国内需要減少(賃金低迷、投資不振、貯蓄超過)

大体インフレとデフレの原因はこんな所でしょう。

2012年までは、「円高」で日本は「海外より物価高」でしたからデフレでした(日本の物価は国際水準になるまで下がる)。

2013~14年の日銀の「異次元金融緩和」で円レートは80円から120円になり、デフレの原因のうち「円高」は消えました。

これでデフレは終わると思っていましたが、5割の「円安」になっても名目賃金が年に2%前後しか上がらずに輸入インフレ圧力強まり、輸入インフレと賃金低迷がせめぎ合い、輸出産業だけ利益増加が起きました。

輸出産業の利益増加は主に海外の直接投資(工場建設など)に向かい、GDPは増えませんでした。結果は第一次所得収支の増で、これもGDPに入りません。

国内では円高が終わっても相変わらず不況で賃金が上がらないので、将来不安が募り、家計部門では消費性向が低下し、貯蓄超過、消費不振でデフレ状態が続きました。

2022年あたりから、通常の経済原則では起きるはずの円安に伴う輸入インフレ圧力が一部破裂して消費者物価の上昇が起き、輸入インフレの欧米との金利格差のが拡大で更に円安が進み、輸出部門などの利益は更に増え、経営サイドから「賃上げをすべきだ」という意見が出る程になりました。

そして2023年から春闘が注目され、24年には33年ぶりの大幅賃上げとなりました。

それで状況は幾分改善されましたが、円安の輸入インフレ圧力が、低賃金上昇と消費性向の低迷という不況期の消費行動で蓋をされている状況は大きく変わっていません。

つまり今起きている現象は、輸入インフレ要因が、国内の低賃上げ、消費不振というデフレ要因で蓋をされて、政府も、企業も、国民も八方塞がりだと困っている状態なのでしょう。

いわばスタグフレーションの反対のような性格を多分に持つ現象で、まだ名前がついていないのです。

仮に名付ければ、日本語では「賃上げ恐怖症候群」、横文字にすれば“inflagnation”でしょうか。

スタグフレーションは賃金抑制で治りました。こちらは、思い切って賃上げをしていけば治る病気のようです。