tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

貯蓄の側面から見た我々の生活

2024年10月14日 16時18分03秒 | 経済

日本人は昔から若いときは苦労しても真面目に働いて将来ゆとりのある生活をしようという考え方強かったようです。

「若い時の苦労は買ってでもしろ」等という諺もありますが、そういう意味では、「先憂後楽」という生き方が、誰もの身に付くような社会を作ってきたのでしょう。

そのせいか日本人は貯蓄好きです。今も、日銀の資料を見れば日本の個人貯蓄が2200兆円もあって、その半分以上は銀行預金などの安定資産です。

勤勉に働くという事と、投機的なものには手を出さず、確実な貯蓄で将来の備えるといった考え方は、日本の雇用制度や、賃金制度にも組み込まれていたようです。

丁稚奉公から出発して、番頭を目指し、将来は暖簾分けや自立で店を持つといった考え方は、近代企業になっても、同じ企業に勤めていれば、年々上がる年功賃金システムや退職金という制度で残っていました。

今では、政府は欧米流の仕事別賃金で、同じ仕事をしていればずっと同じ賃金で、高い賃金が欲しければ、高い賃金の仕事を自分で身につけるという考えのようです。

しかし今でも、非正規従業員は別として、同じ会社に勤めて、企業の中で仕事をしながら、資格・能力を高め、次第に昇進し、賃金も上がる職能資格制度が一般的です。

これは、働く人には安心感を与え、経済的安定にもつながります。そんな現状を「貯蓄」という立場から見ると下のグラフです(総務省「家計調査」:2人以上世帯)。 

 

これは世帯主の年齢階層別の「平均貯蓄額」です。40歳未満では1千万円迄行きません。2023年は減少です。40歳代は1千万円をやっと越えています。50歳代では大分増え2000万円を越えますが.退職金の効果もあるでしょう。2023年は多少減。60歳代が退職金も加えて現状ではピークで70歳以上になると。少し減りますが、4年間多少伸びています

各世代とも低成長経済、コロナ禍の中で、その影響を受けながら何とか頑張っています。

ところで、この数字に、加えてみておかなければならないのは「負債」を差し引いた「純貯蓄額」です。(資料:仝上)

純貯蓄額は、40歳までのマイナスから出発。年代ごとに60歳代まで急速に増えて2000万円を越えています。負債の原因は殆んどが住宅ローンで約6割の世帯が背負っています、数字は背負っていない世帯も入れた平均ですから、住宅ローン負担の深刻さは解ります。

幸いなことに、この世代は働き盛りで、夫婦ともに働いているケースが多いこともあるのでしょうか、40歳代では純貯蓄のマイナスは大幅に減少します。

しかし50歳代に入っても純貯蓄は1000万円までほどが限界であまり増えません。子育て、学資の負担が大きいのでしょうか。

負債が減って純貯蓄額が貯蓄額に追いつくのは60歳代になってという事のようです。

もちろんこれは,同じ世帯がこうした経路をたどるというのではなく、現在のその年代の世帯の数字ですから、この世代別の数字の在り方は、これからの日本経済如何で変わるでしょう。

しかし、今までの日本経済の中で世代別の結果を見ても、殆んど成長のない30年ですが、日本の2人以上世帯は、その状況の中で、結果的には、着実に「我が家の将来はきっと良くなる」というに日本人らしい生き方を確り実践して来ているのではないか(特に高齢世代)という印象を受けるところです。

今後は国の方も頑張ってほしいものです。


被団協のノーベル賞受賞と日米関係

2024年10月12日 12時04分57秒 | 国際関係

被団協のノーベル賞受賞、本当に良かったと思います。普通なら、「おめでとうございます」という言葉を使いたいところですが、原爆という背景を考えますと、「おめでとう」という言葉は何か使いにくい気がします。

今、ロシアがウクライナ問題で核の使用をほのめかす発言をしていますが、こうした人類としてあるまじき態度に対し「頂門の一針」ともなってほしい受賞です。

日本人として誇りに思うのは、被団協に典型的なように、アメリカの原爆投下に対して、日本は、怨念とか報復といった言葉を全く言っていないことです。

原爆の悲惨を唯一の被爆国として経験しながら、そこから導かれる発言、行動は、核廃絶という人類共通の主張だけです。

アインシュタインもオッペンハイマーも何等かの形で反省の言葉を述べているようですが、日本は、「過ちを繰り返さない」ことだけを人類に訴えているのです。

2016年の現職のオバマ大統領と被爆者代表坪井直さんの握手と対話、あの世紀の和解は、人類のあるべき姿を世界の人々眼に焼き付けたはずです。

アメリカと日本の関係は、あの人類の将来を最大の課題とする認識に立つ和解の姿にあるのではないでしょうか。

現実には、冷戦の中で、アメリカは日本に核の傘を差し出し、日本はその下に入りました。しかし、日本は非戦を憲法で謳う平和国家です。たとえアメリカの核の傘の下にいるとしても、日本は独立国として、核廃絶を目指す独立国なのです。

しかし、これまでの日本は、核の傘の下にいることをあまりに強く意識しすぎているのではないでしょうか。

世界の多くの国は日本が核禁条約を批准していないことに疑問を持っています。多くの国や人々が、世界で唯一の被爆国である日本こそが、核禁条約をリードすべきではないかと考えているでしょう。 

人間関係では日本人は「控えめ」という意識、習慣を大事にしています。これは日本では美徳のように考えられていますが、それは国内、つまり日本人社会の中での話で、国際社会では「控えめ」でないことが要求されるのです。

会議での積極的な「発言」は、でしゃばりではなく、積極的な「貢献」なのです。より良い考えを持っていたら、控えめでなくリードするのが正しい行動でしょう。 

被団協の行動はまさにその実践であり、今日の極めて混乱した状況の中で、人類全体のために、そのあるべき姿を明確にする活動を一貫して続けてきていることが評価されたと考えるべきでしょう。 

日本人は、そして日本政府は人類社会、国際関係の中で、その将来についての望ましい姿、選ぶべき方向について、積極的に発言し行動するという姿勢、態度でアメリカとの付き合い方も考えていく必要があるように思います。

これは、今回の選挙においても十分に考えるべき問題ではないでしょうか。


9月企業物価2.8%、物価動向は?

2024年10月11日 14時31分58秒 | 経済

昨日日銀から企業物価が発表になりました。マスコミは一斉に前年比2.8%の上昇と報道しています。

物価動向の見方の基本として、企業物価の動向は海外物価と円レートの動きが大きく影響し、一方消費者物価は賃金コストの動向に大きく影響されるというのが一般的な見方でしょう。

今、日本経済は、新しい安定成長の時代への準備期間という感じの時期にありますが、これには物価動向、特に消費者物価の動向が大きく関係してくる状況です。

というのは日銀が政策金利を引き上げる条件に日本経済としての消費者物価の2%上昇という項目も入っているようだからです。

ただ、消費者物価は当然輸入物価や企業物価の影響も受けるわけで、この辺りを日銀がどう読んでいるかも重要な点でしょう。

消費者物価指数は総務省の調査ですが、輸入物価、企業物価は日銀が調査をしているのです。今回はそのあたりを見てみたいと思います。

企業物価2.8%の上昇がどんな状況を示しているかです。

そこで輸入物価と企業物価の今年に入ってからの動きをグラフにしてみました。

                                         資料:日本銀行

先ず、赤と青の線が輸入物価です。輸入物価は海外の物価の動きの上に、このところ乱高下する円レートの影響も受けます。円建ての輸入物価は青い線、契約通貨建ては赤い線です。青い線が赤い線より上になるのは、主として基準時点(2020年)より円安になっているからですが、このところの動きを見ると、取引の中で円レートの乱高下はかなり調整されているようです。

灰色の線が企業物価ですが、取引段階でのいろいろな調整があって平準化されてています。

円建ての青線の動きはずっと高めになっていますが、これは主に基準時(2020年)より円安になっているせいで、7月を境に円高になって大きく下がって、9月はマイナス2.6%です。9月には海外物価自体も下げているようです。

企業物価はと言いますと、8月は円高の影響が微かに見えるようですが9月は逆に上がって2.8%です。

上がった原因は、マスコミの解説にもありますがお米の値上がりのようです。これは為替レートは関係ありません。

為替の動きに馴れない石破さんの発言で円レートが乱高下しましたが、これからはそれはないでしょうから赤い線が落ち着いている限り物価は落着くのではないでしょうか。

若し日銀が金融正常化(金利引き上げ)を急いだり、FRBがサプライズの政策金利引き下げをやったりすれば、円高になり、企業物価、引いては消費者物価の下げにも通じるところですから、客観情勢としては物価は安定基調でしょうか。

残念ながら、家計の消費支出も値上げへの警戒感から伸びていません。政府は景気回復と言いますが、消費不振で、状況はそう簡単ではないようです。

期待するのは連合の賃上げ要求姿勢が強まることですが、それは来年の話です。年末にかけて景気はどうなのでしょうか。


「半分民主主義」から「全部民主主義」へ

2024年10月10日 16時22分48秒 | 政治

昨日衆議院が解散になりました。今月27日の日曜日が総選挙の日に決まりました。

10月27日は、民主主義国日本の国民、有権者が、国政の責任者を選ぶ権利を行使する大事な日です。

投票に行く事は国民の義務だという言い方もありますが、ここでは「義務」と言わず、敢えて「権利の行使」と言いたいと思っています。

ところで、この権利の行使状態がいまどうなっているかですが、折角の権利を行使しない人が沢山いるのです。

下のグラフは戦後、日本が民主主義国になってからの総選挙の投票率の推移を見たものです。

     衆院選の投票率の推移(総務省:%)

見れば一目瞭然ですが、戦後の時期の投票率は高いものでした。民主主義とはやはりいいものだ、国民が自分たちの望む政治家を選ぶことが出来るシステムがあれば、軍国主義の政府に騙されて、国民が自分の命を粗末にすることを強制されるような事はなくなるという実感を持っていたからでしょう。

ところがどうでしょうか、投票率は上下に動きながらどんどん下がってきています。そして最近の総選挙では 投票率50%台が当たりまえの様になっています。                        

これでは日本の民主主義は「半分民主主義」ではないでしょうか、半分の人は民主主義の基本に従って行動していますが、あとの半分の人は、民主主義の基本に従った行動をしていないのです。

自分が投票してもしなくても世の中は変わらないだろうと考えているのでしょう。

しかし現実は、第41回総選挙辺りから投票率は急降下し、日本は長期不況に入り、45,46回多少の回復を見ましたがその後はいっそうの低下です。そして日本経済・社会の低迷は深刻さを増しています。

「半分民主主義」では日本は半分の力しか出ないのでしょう。それは、半分の有権者が国政に真面目に支える意識を持っていないからです。

この日本の低迷状態を脱却するには、有権者がこぞって国政に参加する意識を持たなければ駄目でしょう。

「半分民主主義」から「全部民主主義」になったときに、初めて日本は再生するのではないでしょか。

今回の総選挙は、投票率100%を目指し日本の民主主義が「全部民主主義」になって、日本が、持てる力を存分に発揮できる国になるための起死回生の転機ではないでしょうか。

皆さんがそろって投票すれば、必ず日本は大きく変わると思っています。


実質賃金3か月ぶりマイナスに戻る・・?

2024年10月09日 16時39分40秒 | 経済

昨日8月分の毎月勤労統計が発表になりました。このブログでは家計調査の方を優先してきていますので、昨日は家計調査の平均消費性向が下がったことを書いていましたが、毎月勤労統計も見ていまして、賃金指数で「現金給与総額」も「決まって支給する給与」も「所定内給与」も共に対前年上昇率3.0%だなと確かめて、消費者物価指数の上昇は総合で3.0%、政府がいつも使う「生鮮を除く総合」で2.8%の上昇だから、実質賃金の低下は免れたなと思っていました。

ところが夕刊が来て、実質賃金0.6%の低下と出ているのでびっくりしました。改めてネットで見ると何処も「0.6%のマイナス」と同じ見出しで、名目賃金が3.0%上がって、実質賃金が0.6%下がっている同じグラフもあちこちに出しています。

そう言えば、そうかと気が付いたのは、毎月勤労統計は労働省の統計ですが、消費者物価指数については「持ち家の帰属家賃を除く」指数を使う事になっています。

我々が総務省統計局発表という事で使い、政府も消費者物価指数として発表しているのは「持ち家の帰属家賃を含む」消費者物価指数なのです。

ご承知の方には不要な説明ですが、「持ち家の帰属家賃」というのは自宅に住んでいる人は家賃を払っていませんが、その家を借りていると仮定し場合の家賃支払い額のことです。

それなら、その分は架空の収入として、払わないでいる家賃は所得に相当するという計算になるわけで結局、自分で払い自分がもらう「入り払いチャラ」という事ですが、GDPの計算では、もらって払った計算にしようというのが国際的に一般的な方法という事で、日本もそうなっているという事です。(GDPがその分大きくなる)

その際の家賃の推計は、民間の家賃の相当額という事だそうです。そしてこれが消費者物価指数のウエイトでは15%ほどもあるようで(殆んどが持ち家)、GDPにも消費者物価指数にかなりの影響を与えているようです。 

そして、この所、家賃はほとんど上がっていないので、架空の家賃支払いを入れた消費者物価指数の上昇は低くなり、「持ち家の帰属家賃を除く」と、その分上昇率が高くなるのです。

という事で、通常の消費者物価指数の「総合」と「持ち家の帰属家賃を除く総合」をこの1年ほど並べますと下のグラフです。

                資料:総務省統計局

確かに、持ち家の帰属家賃は現実に支払いをしているわけではないので、実際の支出の方が合理的という事でしょう、家計調査の消費者物価指数(デフレータ)でもこちらが使われています。

そうしますと、実質賃金の水準はその分だけ下がることになりますので、実質賃金の黒字化は、かなり難しくなるようですね。

このブログでも、解り易いより現実を正確に表した方がいいという意味で、通常の消費者物価指数を使っていますが、これまでの「グラフ」と「説明」を変えた方がいいのかなと迷っているところです。


2024年8月の平均消費性向は低下

2024年10月08日 12時23分06秒 | 経済

今日、総務省より今年8月分の家計調査「家計収支編」が発表になりました。

今春闘の賃上げが、3.56%(連合調べ)と33年ぶりの高さになったので、家計も少し元気が出て、消費需要も活発になるとかと期待していましたが、家計の財布の紐はなかなか緩まないようです。

家計の中核である2人以上の世帯で見ますと消費者物価指数の上昇を差し引いた実質消費支出が昨年比でプラスになった月は、4月の0.5%と7月の0.1%だけで、8月はまたマイナス1.9%と昨年より大きく落ち込んでしまっています。

2人以上世帯では、自営業も含むため、収入の統計がありませんので、消費支出の減少という現状しかわかりませんが、消費支出の増加での景気回復を期待している日本経済としてはいささか残念な状態です。

毎月報告していますように、2人以上勤労者世帯の場合は収入・支出の両方が取れ、収入が増えて消費も増えたかどうかが解る平均消費性向が算出されていますから、そちらの方を見てみますと結果は下のグラフです。

緑の柱が今年の平均消費性向ですが、5月以降平均消費性向は前年比低下です。8月は昨年の69.3%から66.1%と3.2ポイントの大幅低下です。

消費者物価指数の上昇は基本的には沈静化ですが電気・ガスなどの公共料金が政府の補助金廃止で上がったりするという事情もあり、消費者心理に影響を与えるようです。

2人以上勤労者世帯の収入と支出の関係を見ますと下のグラフです。

6月の可処分所得(手取り収入)はボーナスが良かったせいで大幅に増えましたが、多分、差し当たって貯金で消費は伸びていません。7月、8月とボーナスの分は消え、可処分所得は減りましたが3月まで(賃上げ前)よりは増えています。消費の方は、所得の動きとはあまり関係なく微増です。家計はやはり堅実指向のようです。

今春の賃上げは、33年ぶりの大幅という事でしたが、家計が安心して消費を増やす所までは行かなかったようです。

連合は来春闘への準備を始めたようですが、今後の賃金と消費支出の動向からは目が離せません。


<月曜随想>ワークライフ・バランス:日本的発想の功罪

2024年10月07日 17時00分17秒 | 文化社会

21世紀が始まった2000年代の中ごろでしょうか、ワークライフ・バランスという事が言われ始めたように記憶しています。

もともと英語ですから欧米から、特にヨーロッパや国際機関から入ってきたようですが日本で急速に広まり、政府も内閣府中心に「憲章」まで作り、国民の理解に力を入れたようです。

ヨーロッパでワークライフ・バランスが言われるようになったのは、基本的に少子化問題が原因で、男性も子育てに協力せよという意識が「ワーク=仕事」「ライフ=家庭」という意味で問題になったようです。

たぶん、ヨーロッパや国際機関でいわれるワークライフ・バランスは、単純に、外での仕事と家事労働などの家での仕事のバランスが、男女間に負担の差があって、それが少子化の原因にもなるという極めて具体的な現象面の問題として取り上げられてきていたのでしょう。

今は日本でも夫婦が共に仕事を持つのが一般的になってきて、男性も家事労働を分担するというのが若い人たちの家庭では一般的になっていますが、ヨーロッパでは一足早くその波が来ていたのでしょう。

この「ワークライフ・バランス」も日本に入ってきて大きく変容したようです。

日本人は、もともと働くことは「貴い」ことで人間の生きる意味ですらあるといった考えが根づいています。そのために、日本人は「働き中毒」などと言われ、些か行き過ぎで、時に長時間労働も厭わず、KROSHI(過労死)が英語になったりしています。

欧米では、旧約聖書以来、働くことについては日本ほど積極的な意味付けは薄く、収入を得るために自分の時間を切り売りするといった意識が結構強いようです。

日本と欧米で大きく違った「労働観」が存在するという状況の中で、少子化という共通の問題を前にして、ワークライフ・バランスという同じ言葉が注目される事になったわけです。

こうした中で出来上がったのが日本独特の「ワークライフ・バランス」の意味付けです。

内閣府は「ワークライフ・バランス憲章」の趣旨をこう説明しています。

「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」

これはワークライフ・バランスというより、働き方を中心に日本人の生き方はこうあるべしという心得の提示というべきものでしょう。

ところで、もともと働き者の日本人に、こんな「心得」を提示しなければならないと考える日本政府とうのは、日本人の知性・自主性を見下げたお節介焼きという事にはならないでしょうか。

この延長線上に、もう何年も騒がしい「働き方改革」もあるのでしょう。かつて、あれは「働かせ方改革」で「余計なお世話」と書きましたが、現場では政府が「やめろ」という新卒一括採用から、定期昇給、職能資格制など人事賃金制度まで骨格は変わっていません、仕事給は非正規労働者、定年再雇用者、契約社員には以前から完全適用で、今後もそうでしょう。 

欧米と日本では「働く」事の意義づけに基本的な違いがあるという事の理解が政府には欠如しているようです。

日本人は、確り考えて、日本的経営の中でやって来ています。政府が世話を焼けば焼く程それが上手くいかなくなるようです。

本当に必要なのは、「政府自身の働き方改革」ではないかという気がしています。


自民党の再建は難しそうですね

2024年10月05日 12時54分17秒 | 政治

石破新総理の所信表明演説がありました。

マスコミはこぞって演説の全文、項目別の解説、触れられなかった点などと懇切な報道をしてくれています。

石破さんが、総理大臣に就任して、今何が必要かを考えている内容がよくわかりましたと言いたいのですが、本当にそうでしょうか・・・。

多くの方も同じように感じえおられるようですが、これが本当に石破さんの考えていることの披歴なのかという点がどうにも気にかかるところです。

自民党総裁、総理大臣になる前は、石破さんの心の中には、自民党はこんな事をしていてはだめだ、政権維持のためを考えすぎて、国民のため、日本という国のため、日本が世界に役立つ国でなければならないという日本の政治家としての本来の持つべき考え方が失われている。現状の自民党は改革が必要という思いがあったと見ている人は多かったでしょう。

しかし、今回の所信表明演説には、そうした主張や、これまでの自民党への厳しい視線は残念ながら見当たりません。

選挙資金を政治資金と呼んで、資金集めに精出し、裏金と言われる方式まで作って選挙に備えた自民党政治の過ちを、言葉で反省はしても具体的に何をするかは見えません。

国民は、来る総選挙での公認の中に、その答えの一部を見るでしょう。

経済政策ではほとんどが、従来路線の踏襲、物価に負けない賃上げが最初に出てきますが、これは労使の仕事で、政府の仕事ではありません。政策の誤りも従来路線の通りという所が垣間見えます。日本のLeaderは、他人の書いた台本を読むReaderかと勘違いします。

防衛については、今回は敢えて触れませんが、力を入れていると思われるのは災害復興から地方創生の部分です。

国土強靭化に続けての地方創生ですが、この部分は特に熱が入ったようで、報道では地方創世のための「交付金」を、当初予算ベースで倍増という説明があったようです。

インバウンドの活用、農水産物の具体策も織り込まれていますが、地方創生という名目で、日本中に新たなバラマキをするという事が基本でしょう。 

今まで自民党は、コロナの時は1人10万円、今回の4万円の定額減税など、人気取りと誤解(正解?)されるものが多かっただけに、また「交付金」か。災害復興、国土強靭化への資本注入が本筋という意見は多いでしょう。 

以上いろいろ書いてきましたが、最も気になるのは、これまでの石破カラーはほとんど消えているというところです。

一体、石破さんの本音は何か、従来の自民党を変えて行くという事は、この所信表明委演説の内容からすれば殆んど可能性がないと読み取れてしまうという事です。

国民、有権者はどう判断するのでしょうか。

日本は民主主義国ですから、それを知るすべは、10月27日の総選挙で、有権者の半分ほどではなく90%を超える投票率を実現することしかないでしょう。

これまでの投票率50%台の「部分民主主義」で日本の政治が動いている限り、日本はこれまでと変わらないことになるという事が、今回の石破総理の所信表明演説で分かったのではないでしょうか。

本当に必要なことは、日本の有権者が、27日の総選挙には、総て、日本の将来を背負う責任者として投票に行くことだと思っています。


連合は来春闘の構想の検討開始

2024年10月04日 14時37分16秒 | 労働問題

日本の労働組合の代表的組織「連合」が昨日幹部会合を開き、来春闘に向けての本格的な議論を開始したとのことです。

労使が共に積極的な賃上げが必要という事で、意見が一致した今年の春闘のあとを受けて、継続的な賃上げが必要という声が強い中での来春闘です。

これから年末にかけて、労使の来春闘に向けての賃金引き上げを中心にした本格論議が進められ、年末には労使ともに方針の決定を見、年が明ければ、連合、経団連が共に報告書を出して、春闘の旗開きとなるのでしょう。

欧米の賃上げ要求は、労使協定が切れる時期に、産業別にバラバラなのが普通ですが、日本の場合は、年度替わりの4月の賃金改定を目指して、年1回全国全産業企業一斉という形が戦後定着しています。

本来労使の専管事項である賃金交渉が、政府にとっても経済政策に関わる重要な問題との認識が強く、経済政策の一環のように考えて発言したりします。

ご承知のように、昨年は連合が定期昇給+賃上げ要求として「5%以上」という目標を決め、交渉の結果は3.56%獲得で、前年比1.44ポイント増でした。

マスコミでは33年ぶりの高さなどと評価されましたが、生活者目線、家庭の主婦の感覚ではこれで25か月続いた実質賃金前年比低下プラスになるのかしら?というのが正直なところだったのではないでしょうか。

このブログでは長い間、物価と賃金の動きを毎月追ってきているのですが、それでは連合も経団連も、それなりに頑張った2024年春闘の「結果は如何に」と見ますと、6月はボーナスが増えたお蔭で実質賃金はプラスに転じましたが、7月は、統計の中のどの数字を採るかで答えが違うという判定の難しい状態です。

このブログでは諸種の事情を考慮して、今後は実質賃金プラスの方に判定できそうとしていますが、来週発表の毎月勤労統計が、最新の情報を提供してくれるでしょう。

こう見てきますと、連合もそれなりの満足感を示した2024年春闘の結果も、現実の生活者か見れば、これで良かったと言い切れるものではなさそうです。

多分、その辺りは連合も感じている所でしょう。しかし日本の労働組合は欧米の労働組合に比べると驚くほど合理的な意識構造を持っています。

嘗ては日本の労働組合も、「要求は高い方がいい」といった「立場の理論」で要求を組んだのですが、今の連合は、日本経済の健全な成長と両立する賃上げといった、立場を超えた客観的合理性を重視するようです。

一方経営側は、欧米並みの考え方が強く、要求通り出す必要はないだろうと要求-Xの考え方ですから、どうしても結果下は低めになります。こうして長い間、低賃金・消費不振の日本経済が続いて来たのです。

今年の春闘に至り、経営側も余裕の中で好況企業では満額回答もかなり見られました。

来春闘では恐らく連合も少し要求基準を変えるかもしれません。受けて立つ経営側では、経団連の十倉会長が「サステイナブル」との発言のようです。個別には7%目標という経営者もあるようですが。労使とも、賃上げについての意識が変わるのでしょうか。このブログも、これからの労使の動きに注目していきたいと思います。


分断は闘争に繋がり、友好は平和を作る

2024年10月03日 15時22分35秒 | 国際関係

前回は、石破総理の持論と言われる「アジア版NATO 」については封印して、いずれ廃棄してしまうのがいいでしょうという趣旨のことを書いたつもりです。

マスコミも、不用意にこの話を持ち出して、世界から誤解される事が無いように気を付けってほしいと思っています。

日本は平和憲法を掲げ、非戦をはっきりと打ち出している国です。そして、戦後の世界の中で、多くの国際関係を持ちながら、行動の基本は、すべての国と友好関係を保つというものであることを実践してきています。

この日本の在り方は、戦後79年を経て広く定着しつつあると思われます。これからも日本は、その更なる定着、それによる日本への信頼の獲得を目指して、一貫した行動をとるべきだと考えています。

個人の場合でも、国の場合でも,基本的には同じだろうと思いますが、こうした認識の定着というのは些細な不信感でもあれば簡単に崩れてしまうというものでしょう。

「千里の堤防も蟻の一穴から」、些か下品ですが「百日の説法屁一つ」という諺もあります。

日本にも、防衛庁があり、自衛隊もあります。しかし、これは自然災害も含め予期せざる問題が起き自衛の必要が生じる場合への対応という事になっています。

決して、敵を特定しているものではありません。日本には敵はいないのです。

こうした考え方は、日本人には素直に受け入れることが出来ますが、世界には敵を作ることによって、自己の存在意義を確立するという考え方の国やリーダーは大勢います。

リーダーは、敵を作り、国民に被害者意識を植え付けて、自分への支持を固めるという手段をよく用います。

歴史に「もし」はありませんが、ゴルバチョフがソ連を解体し、東西冷戦が終わったと言われたとき、NATO・アメリカが、すかさず、ロシアに新生民主主義国として友好の積極策を取れば、ウクライナ問題はなかったかもしれません。

中国のリーダ-は、迷っているかもしれませんが、そういう時ほど分断ではなく、協調、友好の姿勢を貫くことが、平和と安定の基本でしょう。

リーダーはともかく、国民のほとんどは平和と友好を望んでいるのです。戦争を起こすのは、何時の時代も、限られたリーダーとそのグループの自己満足という欲求の結果なのです。日本もそれは経験済みです。

さらに言えば、戦争は経済的に苦しくなった国のリーダーが起こすことが多いことは知られています。 

経済は多様で、広範な国や地域が協力することで発展することも広く知られています。ならば、経済協力は戦争を防止するために極めて有効な手段、成果を期待できる活動という事が出来るのではないでしょうか。

そういう意味で、一国のリーダーが、被害者意識を持つことは極めて危険で、それは分断と敵対、そして抗争、戦争行きの列車のプラットフォームに立っている状態と考えるべきでしょう。

先ず、最近問題の多い中国との友好関係がどこまで回復、改善できるかが「試金石」ではないでしょうか。


石破新総理の何が一番問題か

2024年10月02日 14時43分48秒 | 国際関係

石破新総理が誕生しました。

自民党総裁に決まってから、テレビのニュースのたびに、石破さんの映像が映るのですが、些か奇異に感じたのは、その表情でした。

これまでの石破さんは、テレビに映っても、何かを語るような場合には、常に慎重で、極めて思慮深い顔をし、問題の難しさを真に認識しているという口調で、理論的に事を述べるという印象でした。

ところが、自民党総裁に決まってからの石破さんの表情は全く違って、何か子供の様な無邪気な笑顔が多く、総裁選任が心から嬉しそうな映像が見られました。

個人的にはこうした表情が見られるのは楽しいのですが、この自民党の半崩壊状態の中で、総裁になり、当然すぐに難問の山積する日本の総理大臣に就任という事になるのですから、その重責を考えれば、あの思慮深い顔にさらに額のタテ皺、真一文字に結んだ口といった厳しい表情が刻まれるだろうとの予感は霧消してしまいました。

昨日、組閣を終え総理大臣に就任したわけですが、10月27日の総選挙日程の発言も考え方も、現実の行動も、自民党の在り方を厳しく正そうとする姿勢もどこかへ行ってしまったようで、「随分変わった」という驚きや批判の声が、野党だけでなく与党の一部からも聞こえて来たようです。

組閣の人選についても、多様な問題があちこちから指摘され、ついには、石破さんは総裁就任から違う石破さんになった、などという揶揄発言すら出ているようです。

9日の衆院解散まで、石破さんがどちらの顔でテレビに映るのか、これからはっきりすると思いますが、どうなのでしょうか。

ところで、安倍政権の後半から菅さん岸田さんと迷走を重ねた日本の政治を、迷走責任者の自民・公明連立政権で立て直すのは「至難」か「不可能」かと思いながらこれからニュースを見ることになるのでしょうが、石破さんが前から言っていることで、大変重要で大きな懸念となることがあります。

それは、石破さんの持論だそうですが、「アジア版NATO」という構想です。

裏金問題や経済政策といった問題は、いずれも国内の問題であり、政治が国民とともに真面目に考える様になれば、正される問題です。

しかし「アジア版NATO」になりますと、これは、アジア諸国を巻き込んだ問題です。

これに対しては、ネットは冷ややかで、「アジアの国々の状況をみれば、そんなもは出来るはずがない」 といった見方が多いようですが、真の問題は「平和憲法を持ち、非戦を掲げる日本が、そんなことを言い出したら、世界にとんだ誤解を与える」という事ではないでしょうか。

「アジア版」という事は、誰が考えてもそれは「アジア諸国と中国の対立」を意識したものという理解になりましょう。

それは本来の日中関係とは駆け離れた、まさに「平地に乱を起こす」構想以外のなにものでもありません。

中国と日本は、千数百年の長い相互依存の関係を持ち隣人であり友好国でなければならい間柄の国です。

戦後は「周恩来=田中会談」以来の友好関係で、故石橋湛山首相が予言したように、経済もそしてスポーツも、ともに発展してきた間柄ではなかったでしょうか。

ここで下手に間違えると、悔いを千載に残すことになるでしょう。石破総理に、何をおいても、歴史観を誤らないようにして頂かなければならないと思っています。 


2024年9月期「日銀短観」:企業は強気

2024年10月01日 14時01分05秒 | 経営

今朝、日本銀行より、通称「短観」、全国企業短期経済観測が発表になりました。

前回の6月期の短観は、アメリカの金利引き下げが遅れる中、マネーゲーマー主導の円安が進み、輸出産業を中心に円安差益が見込まれ、コロナ克服以来、快調に推移する非製造業に続いて製造業も、思わざる収益増もあり、順調(絶好調?)な推移の中でした。

ところが8月の日銀の、まさに軽微な金利引き上げが、マネーゲーマーの動揺を誘ったせいか1ドル=161円まで下った円レートが一時は140円を切るような円高に切り替わるという極端なまねー環境の変化が起き、さらには9月のFRBの0.5%という大幅な政策金利の引き下げで円レートは極めて不安定になる状態が続いています。

そうした中で、日本の大企業、中堅企業、中小企業、の製造業、非製造業企業がいかなる業況感覚を持っているか懸念を強めながら短観の数字を追ってみました。

 

 

上の表で見ていただく通りですが、9月段階で特徴的にみられるのは、これまで順調に好調を維持していた非製造業が幾分の翳りの時期を迎えたのかなという感覚と、乱高下する円レートに揉まれながら製造業は比較的安定した業況に維持を見通しているといった様子です。(調査企業平均の円レート予想は本年度下期も144円台)  

製造業についてみますと、円レートの乱高下も次第に落ち着くと見てえ居るのでしょうか、業況は安定的に推移の予想で、大企業、中堅企業は前期、今期と業況は順調に安定、来期の12月期に向かっては多少の向上の予測です。

前期マイナス1だった中小企業もゼロ(業況の良い企業と悪い企業がちょうど半々)という所で景況悪化とは見ていないようです。化学や機械関係、自動車などが順調な展開を予想しているようです。

好調を維持して来た非製造業は、各規模ともに、今期までは順調ですが年末にかけての見通しは多少の減速です。

好調だった建設、不動産、旅行‣行楽などのピークアウト懸念でしょうか。小売りについては、個人消費は節約ムードなどの影響も感じれられるところです。

雇用人員の判断はほぼすべての規模で不足企業が余剰企業を上回る状態ですが、一方では、ソフトウェア投資は、省力化、産業高度化を目指してでしょう、常に増加の数字が続いています。

省力化は改めて本格化の時代でしょうが、AIの急速な普及などもあり、その可能性も大きくなると思われますが、一方では、対個人サ-ビスなどの省力化困難業種の問題が、社会全体の問題としてクローズアップされることにりそうです。

いろいろな問題を含みながら、政治の不安定の中で、日本企業は、経済社会の安定のために努力を続けているようです。