tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

春闘は昨年を上回る気配ですが

2025年03月13日 15時13分03秒 | 労働問題

2025春闘も昨日から集中回答です。労組の要求に対し、昨年もそうでしたが、今年は昨年にも増して主要企業の回答では「満額」の文字が並びます。

嘗ての春闘であれば、こんなに満額が並ぶのであれば、企業はまだ余裕があるはずで、組合サイドの要求が低すぎたなどという声が聞こえてきてもいいところですが、今では、そんな声は全く聞かれません。

恐らく日本の賃金交渉の場合は、要求の段階から、労使のコミュニケーションは進んでいて、企業を取り巻く環境条件について企業サイドは勿論、労組サイドも十分に情報を持っていて、ある程度の相互理解のもとに要求が組まれ、交渉、満額回答という、十分な労使コミュニケーション、情報共有というベースの上で、春闘は年中行事、労使の情報共有の成果の確認という役割を果たしているのではないでしょうか。

同じ業種の主要企業の中でも、必ずしも要求が同じではなく、要求そのものに格差があって、結果はそれぞれに満額回答というケースも見られますから、上記の推論もあながち見当違いではないと思っています。

元々、欧米の賃上げ交渉の場合は、基本は産業別で、同じ産業の労働組合は産業別に一律の要求を出すのですから企業業績の格差は考慮されません。

日本の場合、労使交渉は企業別ですし、賃金体系・制度も企業別に決まっているのです。労働組合、労使関係そのものが企業別に成り立っているのです。

昔から日本の企業別は欧米の産業別より遅れているなどという学術論争もありましたが、日本の企業別が基本という形は、企業は人間集団(欧米では企業は職務の集合体)という日本の伝統文化の生み出したものでしょう。

話が横道にそれましたが、昨年、今年の春闘の大きな課題は、この賃上げで、実質賃金が上昇し、家計の消費支出が伸びて、消費不振で伸びない経済成長からの脱出が可能かどうかという事でしょう。昨年は部分的成功にとどまりました。

マスコミに登場する識者の多くは「今年もまだ少し足りない」というコメントで、このブログも「思い切って少しインフレにしてみたら」などと書いていますが、連合が中小企業では高めの要求基準を決めていますように、ここは本気で下請けやエッセンシャルワーカーの賃金を引き上げ、手遅れですが非正規の正規化に本腰を入れ、格差社会化を逆転する気にならないと、実質賃金増も、消費需要の拡大も実現は容易でないと思っています。

それに米価政策の誤りで、大変タイミング悪い大幅値上げが起きて、余計な邪魔などしないように、政府が確りすることです。     

労使は賃金インフレを起こさないように春闘で配慮している事が満額妥結の背景にあるという事も理解しながら、農業政策も含む、社会全体の生産性の向上で経済成長を実現することが求められているのではないでしょうか。

アメリカの関税戦略は予測不能ですが、2年ほど前までは110円~120円の円レートでやっていた日本です。円高覚悟でインフレ抑制の余地は大きいはずです。

同時に金融政策で金利が上がれば2000兆円の個人貯蓄の過半を占める預金等に利息が付きます。この消費拡大効果も計算してみてほしいですね。

同時に時限的な便法として、生前贈与無税の枠を広げてみることも消費拡大には大きな効果があるのではないでしょうか。

当面4年間のトランプ時代は、予測困難時代でしょう。消費不況からの脱出のためには、正攻法も、便宜的手段も併せて、巧みに自在に活用する必要がありそうです。


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