東京大学運動会ヨット部

東大ヨット部の現役部員によるブログです。練習の様子、レース結果、部員の主張から日記まで。

3655日目

2021年03月13日 14時51分56秒 | 内なる考え

ご無沙汰しております。クルーザー班主将の中野です。

まず始めに残念なご報告から。クルーザーの学生日本一を決めるANIORU’s CUPが、緊急事態宣言の延長を受けて中止となりました。これで2年連続の中止。こればかりは自分たちが決められることではないので仕方がないですが、無念でなりません。2年前の大会で神戸に敗れて連覇を逃した悔しさを知る世代は、自分が最後になります。思い返せばその時だけでなく、3年前、2年前のJ24の全日本でも神戸には手が届きそうなところで敗れています。昨年12月の和歌山カップでは、年次が違うとはいえ完敗しました。自分たちにとっては良きライバルということです。なんとか引退するまでに神戸に勝って雪辱を果たしたいものです。

今回の大会にはクルーザー班の現役5名に加え、470チームから下重を迎えて6名で出場する予定でした。下重にはディンギーのオフにわざわざ練習に来てもらったのですが、それがとにかく楽しかった。小網代にもあれぐらいのおしゃべり歌唱マシーンが1人ほしいですね。一緒に乗ったのはそれこそ2年前のアニオル以来だったのですが、お互いの成長を感じました。ディンギーの同期とレースに出るのは来年の学生マッチを楽しみにしておきます。

 

次に先合宿の振り返りを。6日土曜日は順風から軽風の中でひたすらマークラウンディングを繰り返しました。例年より1年生の配属が半年ほど遅かったため、今の時期はとにかく伊東にフォアデッキの所作全般を叩き込むことを念頭に練習を組み立てています。とか偉そうなことを言いつつ、ヘルムスマンもまだ本格的に始めてから10回少々しか海に出ていない未熟者であるため、ドライブチームにとっても良い練習になっています。

7日日曜日は北風強風の中で社会人チームのjelly fishとの走り合わせを中心に練習。VMG自体はそれほど変わらないのですが、とにかく強風になると上り角が悪い。12月の和歌山カップで浮き彫りになった課題が、2ヶ月陸で過ごす間に勝手に解消されているわけがありませんでした。また着艇後はトレーニングをしました。

8日月曜日は前日以上のど強風の中、時たまマークを使いつつラウンディング。クローズの走りでは、前日の着艇後に春日さんから教わったテルテールの流し具合を何となく掴んだ感じがしたのが一番の収穫でした。とはいえ一艇で走っていても上り角が良くなったか否かは分からないため、次の強風の走り合わせを楽しみにしておきます。

この日は強風に加えて雨も降り、久々に春合宿らしいハードなコンディションになりました。寒さに耐えかねて誰かダウンするかもと心配していましたが、全員よく頑張ってくれました。マネージャーが持たせてくれた温かいココアも美味しかったそうです。自分は着艇後のご褒美に飲もうと思っていたら4人に飲み干されていました。遠慮知らずの図太いクルーたちです。

また今合宿はANIORU’s CUPの事前練習として大学から許可をもらっていたため、大会中止の知らせを受けて8日で打ち切りとしました。

今合宿、特に7日と8日の2日間で得た個人的な収穫は、強風への耐性です。和歌山カップでは初めての強風、しかも知らない海面で波も汚い中でのレースという状況に完全に翻弄されましたが、相模湾の北風は振れが大きいものの平水面であり、初心者が強風に慣れるには良いコンディションでした。和歌山で松前さんがおっしゃていた「強風はとにかく海に出て場数を踏むしかない」という言葉を肝に銘じて今後も練習に励みます。

と同時に、赤旗がなく自分たちで出着艇の判断をしなくてはならない難しさも改めて感じました。基本的には剣崎と葉山の風速の実測値を参考にしているのですが、8日は明らかにその値より練習海面の風が強く、メインをほとんどシバーさせないとまともにクローズを走れないと感じた時点で湾内に引き返しました。これが早かったのか遅かったのかは正直分かりません。何か良い判断基準があればぜひ教えていただきたいです。

 

さて、話は一転しますが、一昨日で東日本大震災から10年を迎えました。テレビでは毎年の如く当時の津波の映像が流れていました。

このブログを読んでくださっている方のほとんどは、何かしらヨットに携わっている方かと思います。そんな皆さんに問いたい。海に出ている時に津波が発生したら、あなたはどうしますか?

これは、自分が入部以来ずっと問題視していたことでもあります。たった10年前に何万人の命を奪った津波が押し寄せ、首都直下や東南海トラフの地震がいつ発生してもおかしくないと言われている割に、それに対するセーラーの危機感は薄いのではないか。そして自分たち東大ヨット部は、どれぐらい備えられているのか。

想像してみてください。もし東大ヨット部の部員、いや東大に限らず、身近なセーラーが津波に呑まれて命を落としたら。その翌年の新入生は「命懸けの」ヨット部に入ってくれるのでしょうか。何より、我々部員たちは何の恐怖心も抱かずに再び海に戻って来れるのでしょうか。少なくとも自分はトラウマになってしばらくは海に近づけなくなる気がします。

幸いにも同期の落合が共感してくれ、1月にクルーザー班の防災マニュアルを作ってきてくれました。それを基に今月中を目処に東大ヨット部全体としてのマニュアルを作成する予定です。それ以外にも何か有効な備えがあれば、随時行っていきたいと思います。

海が日常生活の一部になっているヨット部員は、慣れるが故に海に対する恐怖心が薄れがちなのかもしれません。しかし海が身近な存在だからこそ、常にその怖さを忘れてはならないと、自分は思います。

 

なんだか纏まりのないブログになってしまいましたが、自分の心配が杞憂に終わることを願っています。

 

2021313

クルーザー班 主将

中野