お世話になっております。新3年470スキッパーの高原諒です。
今回は春第一週の470チーム活動報告ということで、前半は先週から今週火曜日までの
「470チームの活動」について私情・私見交えつつまとめ、後半は「記録と伝承」について深掘りして綴っていこうと思います。
「470チームの活動」
2月ももう半分ほど経ちましたが、例年ならばこの時期、東大ヨット部は春合宿のシーズンです。ブームに雪が積もる日もあるくらい寒くて、赤旗になるかならないかの春の嵐が吹き荒れ、週5で朝8時から16時までガッツリ海で練習する。今年の新2年生はこれまでの練習量が少なくて、いきなりこの春合宿はえぐいなと思って、先日春頑張ってくださいっていうブログを出したんですけど、その春の練習もだいぶ先に伸びてしまいました。
でも海上練習がなくなってもできることはいっぱいあるぞっていうのは、去年天木さんの代が示してくださいました。今回の活動自粛は比較的終わりが見えてて、活動再開後に効率的に練習ができるようにいかに今準備するかっていう点に重点を置いて、470チームはトレーニングとミーティングの2本だてでやっています。
トレーニングは470チームに在籍するトレーニング大臣が主導して行っています。ミーティング後のトレーニングタイムは様々な筋トレやストレッチの紹介が主なんですが、これが結構レベルが高くてフォームのポイントとか、効く筋肉とか、ちゃんと効いてるときのイメージ(例を挙げるとお尻の横ははってる感覚とか)も合わせて紹介されて、筋トレ系youtuberですっていってても遜色ないんじゃないかとさえ思ってる。
また、筋トレの他にランニングをやっています。上記の大臣が好きな言葉で「ヨットはマラソンしながら囲碁か将棋か(どっちか忘れたけど)を指すような競技」っていうのがあって、ヨットは持久力を必要としつつ頭も使うスポーツ。それでランニングをすることで持久力を高めつつ、活動再開後に高い集中力を持って練習できるようにもなるっていう作戦です。
ミーティングは4種類くらいあって、動画研究、個々のヨットノートを比較して議論、ヨットの技術が書かれたブログ・本の読み合わせ、新2年生に向けた座学。どれも比較がかなり大事なポイントになっていると個人的に思ってます。例えば、ある部員のタックの動画だけみてもどこが失速している原因なのかは分かりづらい。逆にワールドセーラーの動画だけみても、失速が少ない原因までは分かりづらい。でも2つを比較すると色々見えてくる。スキッパーのティラーを持つ手の位置。逆ジブの長さなどなど。議事録にしてA4が5ページくらい。本当に色々出てくる。
議事録の話が出ましたが、議事録もミーティングでは大事だと思っています。zoomで議事録を共有しつつ話すと、議論の流れが分かりやすくて、脱線が少なくなってミーティングが効率的になる。以前は個々のスマホでメモで議事録書いて写真媒体で議事録が共有されていたのも、google documentを使うようになってからは検索機能が使えるようになりました。いつか軽風タックでロールの話したけどなんだっけって時に「軽風 ロール」とかいって検索すれば議事録が出てきます。ライングループに貼られた写真を片っ端から開いて確認する労力とは比較にもならないです。
さてここからは、議事録を拡張して「記録」とそれを「伝える」ことについて掘り下げて少し考えてみようと思います。
「記録と伝承」
話は変わりますが今年度のチームの目標は全日本シングル(9位)です。当然9位はめちゃくちゃ厳しい目標です。あれだけヨットのうまい先輩方が出艇時間から着艇時間まで、週6日で練習しても達成できなかった目標。
ヨット経験者がチームにいるというのはすごく大きなメリットがあります。もちろん、大学はじめの人に比べ艇速が速く、いいコースを引くのでレースで安定して結果を残せます。それだけでなく、経験者は知識量、経験値が多いのでそれをチームの他のメンバーに共有することで周りの人の上達スピードが早くなります。この2つだけでも相当なアドバンテージで、東大も1つ下の代に3人経験者が入ってきてからすごく痛感しています。
でも東大ヨット部は経験者が安定して入ってくるチームに勝たなければならない。9位を目指しているということはそういうことです。経験者が少ないというディスアドバンテージを打ち消すような、強力なアドバンテージが必要になります。
このアドバンテージを生み出す要素の一つとして「記録と伝承」があるんじゃないかと私は思っています。他にも特に大事だなって思う要素が2つくらい今んとこあるんですけど、全部話すと10000字とかいっちゃうと思うのでまたいつかの機会に他の2つは話したいなと思っています。
大学はじめのセーラーは入部時点ではヨットの知識は皆無です。ですが、海にでたり、先輩から教わるうちに知識量はみるみる増えていき、インカレで戦い、そして引退していきます。そしてその次の4月にはまたヨットのヨの字も知らない新入生が入ってきてといったサイクルがあります。
ですが、ここで引退する先輩の50%の知識を新入生が引き継いだらどうでしょうか。すごく単純に考えるとその新入生がインカレをする頃には知識をもらった先輩よりもうまくなり、知識も多くなります。そしてまた新しく入ってくる新入生が50%引き継いだら‥というようにすると年々強い代が生まれることになります。
人類の進化もこれと少し似てるのかなって思ってて、ある日誰かが稲作の技術を習得し、それを次の世代が受け継ぎ、さらに何世代も後に今度は誰かが鉄の精錬技術を習得してっていうのが積み重なって、文明が高度になっていく。。。
ヨットの話に戻りますが、この先輩から後輩に知識が受け継がれるのはどこの大学でももちろん行われています。なので、違いを生み出すにはこの50%という数値を高くしていく必要があります。60%になれば、70%になれば、強くなるスピードが上がります。
この%を大きくするにはどうするか、ここで「記録と伝承」が重要になるのかなと私は思います。議事録を作る、撮った動画を蓄積する、といった記録をすれば、そのとき聞いたこと、見たことを忘れてしまってもまた議事録を見にいく、動画を見にいくといったことをすれば思い出すことができる。記録せず忘れてしまえば知識の伝承はそこでストップしてしまいます。また、忘れたときに思い出しにいくまでのプロセスが簡単なのも重要です。例えば議事録を初めから全部探さなきゃいけない、動画が個人のスマホの中に入っていて一個ずつ音声を聞かないとわからないとかだったら、非効率だし面倒くさくてやめてしまいます。でもキーワードで議事録が検索できたら、動画が人ごと・種類ごとに整理されてタイトルに日付が書いてあったら、効率的だし知識の伝承がストップする可能性はずっと低くなるんじゃないかと思います。
天木さんの代は自粛期間中、数多くのミーティングを開き、そこで大量に知識を我々に「記録」「伝承」してくださいました。ただ、先輩からいただいたものの凄さは470チームのメンバーしかまだ知らないし、その凄さを外部の人に力説したってレースの結果がともなってなければ誰も信じてはくれないでしょう。だから、設定した目標を達成することで先輩からいただいたものの凄さをヨット界に証明したい。海上で練習するときになってから頑張るんじゃなくて陸上でも活動制限中でも頑張ります!
新3年470スキッパー 高原諒