今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ペンスケッチ展7に行ってきました

2011年06月19日 22時00分09秒 | インポート

Img_193851 都内渋谷で開催されていました、毎年恒例の「ペンスケッチ展7」に訪問してきました。撮影技術を競う趣旨の展示会ではないとは言え、出品のみなさまの創意工夫と努力によって、確実に年々レベルは上がっていて、どれもすばらしい作品に関心しきりで拝見してきました。今年は和紙にプリントした作品も見られて、新しい試みに興味を惹かれました。今回も運営スタッフの皆様ご苦労様でした。

会場にはうちのご常連さんも見えて、私の体調などもご心配を頂きました。わざわざおこし頂きましてありがとうございました。

Dscf271477 「PENの健康診断」も実施致しまして、普段みなさんが使用されているPENを拝見することが出来ました。O/Hで私の手元に送られてくるカメラだけではなく、実際に使用されているカメラを拝見することには興味がありましたが、ベテランさんがお持ちのすばらしいコンディションの個体もあるかと思えば、かなり厳しい状況の個体も見受けられました。

この2台は、診断後、そのままお預かりとなった個体ですよ。手前のEE-3は、今回のペンスケ展に出品されている写真を撮影したカメラですが、シボリが全く作動していませんでしたね。後ろのPEN-Fは、会場でいきなり巻上げが不能となった、なんとタイミングのよい?個体。シャッターユニットにトラブルがありますので、お預かりとなりました。この個体の他にも、PEN-Fの状態が良くないのが気になりました。早めのメンテナンスをお勧めします。

Dscf271684 このコーナーでご紹介しましたので、このまま作業内容のUPを続けますね。巻上げ不能(ロック)の原因を探っていましたが、一番怪しい巻上げギヤ関係は、どこを調べても原因が発見できない。う~ん、こんなことはなんのですがねぇ。と、隣りのテンションシャフトに目をやると・・・あれ? ギヤの歯がちょっと変ですよ。

Dscf271765 あらら、辛うじて繋がっていた歯の部分が無くなってしまいましたよ。開発段階ではギヤ破壊は有ったようですが、製品段階では材質や熱処理などで解決されているはずです。特にシャッター幕側に無理な力が掛かった形跡はありませんので、長年使用による金属疲労でしょうね。この部分の破損事例はあまり多くはありませんが、しかし、とにかくPEN-Fは古いですから今後は増えてくるトラブルでしょう。PEN-FをO/Hせずに使い続けることは無謀のように思えます。早めにメンテナンスをお願いします。この個体の場合はテンションシャフトを交換することになりますが、このギヤと接するアイドルギヤの歯も多少の損傷があるはずです。

Dscf271836 部品はテンション軸ASSYとなります。この部品を組み込みます。

Dscf272355 ピンボケですみませんね。改めてユニットを洗浄後にギヤをチェックしていくと・・・#1.#2ギヤ共状態は良くありませんね。赤でマーキングをした2歯を見てください。強力な力で変形しているのがお分かりでしょうか? 推測すると、まず、テンションギヤが破損して、その欠けた歯が落下して#1ギヤに挟まり、巻上げによって噛み込んでしまったものでしょう。こうなると全てのギヤは信用できなくなります。取りあえず#1ギヤは交換しませんと、接する#2ギヤの損傷や、巻上げ感触の悪化(回転ムラ)が発生します。

Dscf272422 不良ギヤを交換して組み上げています。ブレーキのOリングはゴムの硬化のため固着傾向にありますので交換をしてあります。

Dscf272644 この個体の状態は例えれば「砂が入ったご飯を食べてガタガタに欠けた歯」状態でしたね。全反射ミラーは拭きキズが多く劣化していますので交換しました。これらの交換で調子よく仕上がっていますが、プリズムの腐食はあります。オーナーさんが購入店から「O/Hずみなので永く使えますよ」と言われたそうですが、どこが、ミラーの拭きキズ以外は手を付けた形跡はありませんでした。まぁ、O/Hの定義も曖昧ですからね・・・

Dscf2727671 EE-3ですが、シボリ羽根が張り付いて開いていないのですね。全体のメンテナンスをして行きます。

Dscf272958 張り付きを解除して羽根を点検しますと1ヵ所強く当っている部分がありますね。この個体は過去に未分解ですので、元々工場で組まれた時からの部品の品質精度でしょうね。修正をして再度の張り付きを予防する処置を取ります。

Dscf273023 EE精度はメーター感度が少し低下ぎみでしたね。調整をしてあります。その他、ファインダー清掃、圧板研磨、裏蓋モルトの貼り替えをして完成しています。最後に、前面のフィルターリングが緩んできますね。ここは本来はネジロックを塗布して組まれていますから緩まないのですが、フィルターの脱着を繰り返しているうちに緩んでしまったのでしょう。稀には見受けますね。では、またすばらしい写真をお撮りください。