ご常連さんからいろいろ来ています。まず、PEN-FTですが、撮影した写真に光線漏れがあるとのことで、チェックをすると、シャッター幕にピンポールの穴が開いていますね。ルーペで観察すると、これは後天的についた傷ではなくて材料の巣ですね。エッチング工程での不良が後に剥れたように見えます。これは黒の接着剤で遮光しておきます。
では本題です。このPEN-F #2153XXは外観などのコンディションはそこそこきれいですが、何故かリターンミラーが閉じたままで、応急復帰を試みてもビクともしませんね。このように固着している時は、経験的に何か大きな問題があるケースが多いですね。
そこで原因を追究して行くと・・・ガバナーのレバーが折れていましたよ。回転するハンマーに叩かれ続けていますから金属疲労で折れるものが増えています。良品のガバナー自体が非常に貴重となっていますので、それに付随するレバー(カシメ組立)も部品を確保するのには苦労します。今回は分解をして不良が判明したために当方で部品を調達していますが、修理ご依頼分を全て確保することは出来ません。その意味でも、部品調達用のジャンク機を確保して置かれることをお願いしておきます。
その他、シャッターユニットに不具合はありません。ブレーキもまぁまぁ利いていますので、今回は交換しません。チャージギヤの潤滑不足による歯の損傷は多少ありますね。
メカはそれほど消耗していませんでしたが、やはりプリズムに腐食が出ていますね。保管が悪いとは思えない個体でも、Fのプリズムは弱いようです。まぁ、撮影が出来ないわけではありませんが・・・全反射ミラーは汚れはありますが清掃で再使用としています。フレネルレンズのカバーを接着しておきます。
本体は完成。巻き上げも非常に良好です。付属のF用38mmは使用歴はあまりない個体ですが、とにかくレンズのカビがすごいことになっていますね。経験的にこのカビは比較的落としやすいカビだと思いますよ。では、全て分解洗浄から・・。
では、PEN-W #1225XX(1965-5月製)に掛かります。画像が見難いですが、とにかく汚らしくて塗装の剥離部分を筆塗りで塗装されている個体。分解を受けていますが、あまり上手とは言えませんね。↓の吊環部がへこんでいますが、この他にも巻き上げダイヤル上部が大きくへこんでおり、巻き上げダイヤルと干渉しています。その他、カウンターガラスのクラックやカバー横のビスがオリジナルでない+ビスなど、いろいろありますが、本来はリペイントをご希望でしたが、私の都合でオーバーホールのみとさせて頂いていますので、今回は細かなところには目をつぶって次回の作業とさせて頂きます。
タッチアップ塗装は裏蓋の内部にまで及んでいます。余計なことを・・・圧板も腐食で汚れていますね。
シャッターユニットはすでに分解を受けていました。しかし、作業が雑ですね。拭き上げ時の繊維片が残っていたりで感心しません。腕時計なら止まっているところですね。画像は、全ての部品を洗浄して組立てているところ。消耗は少ないが、シャッター羽根に腐食が多めですね。
本体は完成。清掃のためにレンズを分離したファインダーは接着して完成していますが、吊環部のへこみと↑部分のへこみ修正をしてあります。しかし、完全にはなっていませんね。まぁ、今回は機能優先で巻き上げダイヤルと干渉しなければ良しとしました。リペイントの場合は完全に修正しなくてはなりません。
これで完成としています。本体は巻き上げも軽く、シャッターも快調です。但し、惜しいことにレンズの後玉にバルサム曇りがありますね。裏蓋ですが、ご覧のようにタッチアップをした塗料だけを溶かして清掃してあります。圧板もご覧のように研磨してあります。本来は、オーバーホールですから、ここまでの作業をする必要は無いと思いますが、このひどい状態を見れば、見て見ぬ振りは出来ない性分です。お願いですから、余計なことはしないで頂きたいのです。