ちょっとピンボケだな。え~と、三兄弟の2台目です。MazKenさんのところの生徒さんの供給用ですが、お待ちの方がいらっしゃるとのことで、腕時計ばかりやってましたので止まっていました。じゃ、急いでやりますよ。この個体は#3703XXと、まぁ、良い頃の個体で、特に問題は無い状態ですね。いつものように全て分解洗浄から始めています。シャッターユニットも磨耗も少なめだと思います。
すみませんね。特に書くことがないのです。但し、露出メーターは基板別体タイプが搭載されており、露出計の製造が46.3.31で、カメラの完成が1971年4月ですから整合性はピタリです。これによって、後年にSSで交換されたものではなくて、工場で組立られた時の仕様だと推測します。欠点の無い個体ですが、後ろの13万代機に比べて、巻上げのスムーズさでは負けますね。これは、メインのスプリングが強化されているので仕方が無い部分もあります。とりあえず、MazKenさんのセミナーに参加される生徒さん用に2台お送りしておきます。どちらを選ばれるか、ちょっと迷うと思いますよ。
で、急ぎ発送をした後はセイコーのスモールセコンドを作りました。機械は、新10Aと呼ばれているタイプで、戦後まもなくの復興最初の機械になります。分針が6時位置にあるスモールセコンドです。現存でオークションで入手出来るジャンクは殆どがケースはニッケルめっきの劣化、文字盤の腐食などがあり、機械をケースに固定するネジやリューズの巻き芯の抜け止めネジなどが錆び付いて分離出来ず、あきらめてオークションに出品されて来るものが多いのです。たまたま、当時としては珍しいステンレスケースで文字盤もそこそこと言う個体が入りましたので、他の個体から部品を移植しながら1台仕上げるという感じです。しかし、この個体には針が付いていません。他から調達で、風防は新品とする予定です。
多くのジャンクから、程度の良い部品を寄せ集めています。しかし、同じ10Aでも、製造時期によって細かな部分は設計変更を受けており、流用が出来ない部分もあります。奥が深いですね。
完成した新10Aの機械。テンプのひげゼンマイが変形しておりリ、修正に時間が掛かってしまいました。ご覧のように、受けが特徴的なデザインで、バナナに似ているところから、バナナ型とも言うそうです。一見、細かな受けが沢山あるように見えますが、三つの受けは繋がっており、実際は一つの部品です。このような古典的なデザインはこの頃までで、次に発売をされたセンターセコンドのスーパーは近代的なデザインを採用しています。機械は10石と7石が有ったようですが、この機械はピンセット先の三つともルビーは使用されていない7石のタイプです。しかし、意外に磨耗は少なく、テンプの振りも安定しています。
セイコーでは、戦中にすでに10型の機械は存在して、将校用に供給されていたようですが、戦後、新しく設計をした10型なので「新10A(B)」と称するんだってさ。他の工業製品と同様で、お手本は外国の機械だったようで、零戦のエンジンやプロペラ、果ては自慢の20mm機銃だって、すべて真似っこなので、今の中国は笑えないのです。10A型は1946年頃に発売された機械とのことですが、裏蓋に打刻されている数字からは、1944年の7月に製造されたものと読めます。昭和19年ですと、敗色濃い戦時中ですから変ですね。途中でケースを換えたものか或いは1957年まで生産されたものかも知れません。しかし、ケースがステンレスだったことから、文字盤や機械も時代を考えれば良好な方でしょうね。ケースには大きなキズはなく、軽く研磨をしてから超音波洗浄をしておきました。ただし、バンドを留めるバネ棒は完全に固着しており、ケースから分離は不可能でしたので、ニッパにて破壊して取り去っています。
機械に文字盤を取り付けて針をセットします。針は、以前に分離してあったようで、オリジナルが見つかりました。樹脂の風防は新品に交換予定でしたが、クラックは無く、研磨できれいになりましたので、再使用をします。恐らく、20年前ぐらいに交換されていると思われます。現在の秒針がセンターセコンド型が普及する以前は、6時位置に小さく小時計が付く、スモールセコンドが主流だったのです。
隣りのクォーツ式クロノグラフと同じスモールセコンドですね。結果的に、殆どオリジナルの部品で復活しています。元々、あまり消耗していない個体だったのですね。完成して、ではバンドとなりますが、カン幅が15.5mmという中途半端な設計。この当時としては、ケースとのバランスから適切なサイズだったのでしょうけど、現在の規格にはありません。引き通しのパリス冠タイプのバンドを製作しているところでも探してみましょう。
では、三兄弟の末っ子をやりましょう。このPEN-FTは#3213XXと30万代の良い頃の個体ですが、最初の点検で気になったのは、トップカバーのフィルムカウンター部分がへこんでいますね。それと、メカでは、低速1秒が13秒掛かっています。光学系は新しい分、特に問題はないと思います。
ところで、皆さんはこの本をご存知でしょうか? 先日の検査入院の時にINOBOOさんが送ってくださった本「東京シャッターガール」です。暇なベットで一気に読んでしまいましたが、内容は、高校の写真部に所属する女子学生の目を通して、主に東京都内の撮影ポイントを紹介しています。私の住んでいるところからも近い吉野梅郷なども紹介されています。当初は、女性の作家さんかと思いましたが、桐木憲一という男性作家さんでした。登場するカメラもマニアックな機種が多く、カメラも非常に正確に書かれています。オリペンとか言って、ペンEEもちらっと登場します。オリペンって、私初めて聞きました。へぇ~、マニアさんではそう言うんだぁ。私は治すばかりで知りません。お陰で退屈せずに済みました。
今日の関東地方は南風が入って気温が上がって20℃を超えました。外出のついでに東京シャッターガールではありませんが、車で満開となった桜を見ながら走って、毎年恒例の定点観測、百恵ちゃんちの前です。少し前に外装を塗り替えていましたね。あまり趣味の良い外観とは思えませんけど、近隣では目立ちますね。国立の富士見通りは、いつもより車の通行が多かったです。みなさん、桜を見にこの通りを通っているのでしょう。
では、FTに戻ります。スローが異常に遅かったわけですが、分解してみると・・・あら、ちょっと騙されちゃったかも知れませんね。外観は良かったので安心をしていたところがありましたが、画像のスローガバナーが激しく腐食しています。分解しようと試みた形跡もありますね。解んない人には治せないの。普通は錆びない巻上げユニット部分のギヤが錆びていましたので、ちょっと変だなとは思ったのですが、こうななるとは・・恐らく、水気でも入ったまま放置されたのではないでしょうか? さて、このガバナーは復活できるか、それとも交換か、まず、ユニット単体まで分解して状態を見ます。
スプール軸とスプロケット軸を組んで行きますが、スプール軸のアイドラーギヤが錆びていますね。これに対応したスプロケット側のギヤも錆が発生しています。水気が入ったまま放置されて、噛み合っているギヤ部分の湿気が抜けずに錆びついたのでしょう。
錆び付いていたスローガバナーです。こちらもアイドラーギヤが錆び付いてスムーズに回転しません。それで13秒も掛かっていたのです。本来は、スローガバナーは分解不可で、ショートパーツの部品設定もありません。まぁ、今となっては、例えあったとしても同じことですが・・・そこで、手持ちの部品からギヤを調達して交換してあります。幸い、1/4以下で繋がる薄ギヤは使えます。(ちょっと錆はあるのですが)基本的に時計と同様な原理ですが、腕時計であれば、これだけ錆が発生していたら絶対に動きません。その意味ではカメラはクロックレベルの精度です。
前板を装着して作動のテストをしています。ご覧のように、低速も正常に作動しています。
ほぼ組み終わっていますが、正常な個体でも、シャッターダイヤルを1/8から1/4に回す時には多少の抵抗感があるのですが、これは、ギャを変速するためのレバーが作動するためです。抵抗感がある時に無理に回すのは厳禁です。ギヤに負荷が掛かって磨耗をしてしまいます。で、この個体ですが、そのレバーの指示部分が激しく錆びていましたので、修正をしても、どうしても作動に抵抗感があります。少し戻し気味にしてから回すように心がけること。
で、完成しています。新しいペンファンの方の手元に届くことを願っています。
付属で38mmが2個来ていますのでオーバーホールをしておきます。これは、設計変更後の個体。絞り羽根部分に、流化したヘリコイドグリスがべったりと付着するため、絞り羽根の動きが規制されてしまうのです。画像は、全て洗浄脱脂をして組み立てているところ。