今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

不動のSEIKOクラウンを復活させるの巻

2014年06月08日 21時43分55秒 | インポート

Img_443521え~と、今度は時計をやります。この腕時計はセイコークラウン 15002 で、キャリバー560 21石の5振動です。マーベルの改良型というか、この機械でスイスの時計に追いついたという時代のモデルで、1961-6月の製造です。オートバイの世界GPにも日本のメーカーが本格的に参戦し始めた頃で、戦後の荒廃から立ち上がって世界のトップを目指して追撃を始めた 高度経済成長の時代です。この個体はお父様の形見だそうで、一族が大切に受け継いで来たことが分かる比較的きれいな外観ですね。しかし、現状は不動で、ネットで私のところに来ました。まず、リュウズを巻いたトルクを最初に受ける丸穴車の受けのねじ部が金属疲労により破損していて巻き上げ不能の状態。それだけかと点検すると、秒針がフラフラ振れていて、ガンギ車のホゾが折れている状態。外観とは反対に、かなりの消耗具合です。そこで、私の在庫から同じ15002の21石を探して機械を仕上げて換装することにしました。右が素材の機械。

Img_443622ケースから機械を取り出したところ。ケースは軽く研磨洗浄をしておきます。文字板は適度な劣化具合ですが、これは歴史なのでこのままとします。









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すべて分解洗浄を終えたところ。香箱(ゼンマイ)など、程度の良いものはオリジナルを選択します。










Img_444211 特に問題なくサクサク作業は進みます。












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テンプを載せた瞬間に元気に目覚めて動き出しました。











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ひっくり返して文字板と針をつけます。













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だいぶ昔に修理に出した折に、磨滅したリュウズを交換されたそうですが、その時点ですでにオリジナルの部品が入手できず、後年の径の大きなものを取り付けられたとのことで、何とかオリジナルに戻したいとのご希望。そこで、私の手持ちからデッドストックを使うことにします。クラウンも、製造後期になるとケースの大型化が進みますが、私もこの頃(15002)のサイズが一番好きです。



Img_444764 時計の世界では四つ割りというらしいですが、ピンバイスですよね。巻真をホールドしてリュウズを交換します。










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さすがに大きな天輪で歩度は安定しています。これから歩度調整をしていきます。











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ベルトを取り付けてひとまず完成。この後、実際に腕にはめて微調整を繰り返します。このオーナーさんからは、先にお手紙を頂きまして、何軒かの時計屋さんで修理を断られた形見の時計を何とか治したい。との強いお気持ちを感じましたので、復活のお手伝いをすることにしました。何年振りか分かりませんが、また、お父様との繋がりを感じて頂ければうれしいところですね。
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