今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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きれいな初期型なのにPEN-FTの巻

2020年02月03日 20時15分00秒 | ブログ

このきれいな初期型は私が高校生まで育った立川市の隣の町内にお住まいの方からのご依頼です。ほんと、全く使用していないように傷がありませんが、フィルムカウンターが動かない、巻き戻しボタンが無いなどの問題があります。その他、セルフタイマーが改良型が付いていますが、この個体#1367XXは改良前のタイプが付いているはずなので、人の手が入っていると推測します。

まず、なんで巻き戻しボタンが無いか?。あら~、電池の液漏れを起こしたようです。ボタンドメが完全に固着していて動きません。なにやら磨いた跡が・・

 

やっと分離しました。そもそも電池室からのリード線があり得ないところを通っています。

 

別の良品に交換した方が良さそうですが、使えないことはありませんので腐食を研磨しておきます。

 

あ~、手が入っていますね。シンクロのリード線はカバーを外す時に切れたのでしょう。露出計ユニットが後期型に交換されていますが、半田付けがひどいですね。推理では、初期型なので露出計不動とセルフ不調のため、後期型の個体より部品交換をされたものでしょう。

それにしても、お世辞にもお上手とは言えない半田付けです。新しい半田を供給しないから半田が酸化をして付かないのです。両端のリード線は外れています。しかも、半田付けの位置も間違っているし・・

 

正しい位置に半田付けをやり直しました。白いリード線はオリジナルではなく、Cdsからの引き出し線は芯線1本だけなので、エポキシで補強しておきました。作動はしていますが感度は?

 

ハーフミラーは傷だらけなので交換します。

 

 

駒数板にバネが掛かっていません。

 

 

うわぁ、泣けて来ますね。電池室の接点半田付けがてんこ盛りで樹脂を溶かしています。これは電池室から接点を分離してから半田付けをしないといけません。手抜きをすれば良い仕上がりは期待できません。あとは普通のオーバーホールで行けると思いますので書くことも無いでしょう。

では、本体を洗浄して組み立てをして行きます。電池室からのリード線を新製しておきます。

 

初期型で問題なのはスローガバナーです。神経質で調子を出すための調整が非常に難しく困難です。案の定・・・

 

 

ここまで丸一日掛かってしまいました。各リード線は半田をやり直しておきました。

 

初期型はユニットが不安定な傾向があって工数が掛かります。あとは大きな問題はないと思いますが、ビューファインダーのモルトが植毛紙でやり直されていますね。

 

剥離してみると古いモルトが清掃されていません。正直なところ手間は掛かるので私も面倒ではあるのですが、貼り重ねるとビューファインダーが倒れて組み立てられてファインダー像が歪んでしまう危険性があります。すべて清掃をしてから貼り替えるようにしています。

 

こんな感じですね。

 

 

交換された露出計ユニットは25万台以降のものと思いますが、分解をされたためか感度低下が激しかったです。幸い感度に余裕がありましたので、何とか調整が取れました。留めネジの1本が欠落していましたので追加しておきます。単に紛失したものか、それともここはドライバーが入りにくいので留めなかったのか?

ファインダーのピント調整をされていましたが、それがズレていましたので調整をして完成です。

 

欠落していた巻き戻しボタンを追加してカバーを留めます。

 

 

13万台の初期型としてはレンズマウントの傷もなくきれいですよね。露出計の換装は仕方がないと思いますが、セルフユニットは修理が出来たはずと思います。巻き上げの感触は軽くスムーズで、未整備の後期型になれた方にはびっくりするような感触です。しかし、中期以降はシャッターやミラーユニットのバネの強化により、巻き上げ抵抗が大きくなって、そこに軸摩耗や潤滑不良が重なって現在のような巻き上げ感触になっているのです。初期型の魅力の一つです。

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