夏台風特有な超ノロノロの12号に未だに影響を受けて雨風に加えて高温と強い湿気が体調に影響しますね。ちょっとカメラに神経を使う気になれません。そこで、少しお遊びしています。古い非防水のケースであれば無くても何とかなるのですが、防水ケースの裏蓋やガラスを閉めるためには裏蓋閉め器という工具が必要になります。画像のモデルはスイス製のHOROTECというメーカーで、ねじ込み式で閉めるタイプです。普通、白いコマは時計のサイズに合わせて選択使用するのですが、キングセイコーにぴったりのコマが欲しくてジュラコン丸棒から作りました。時計は裏側にセットして閉めるため、上側のコマはキングセイコーのメダリオンを保護する目的で「逃げ」部分を多く取るように設計し、当り部分はテーパ面に加工してあります。樹脂の加工なので楽勝と考えていましたが、意外にバイトの選択にノウハウがあるのと、バイト先に切り粉が挟まると、それによって材料部分が削られてしまうという金属では考えられないことが起こるのでした。
ちょっとがっちりと作り過ぎた気もしますね。何か粉ひき臼のようです。上側のコマはシャフトのOリングで保持する方式のため、正確に孔加工(8.1mm)に仕上げてあります。で、めでたくガラスのべセルを圧入したところ。(56キングセイコーは裏蓋は開かない)後は、キングセイコー御用達の黒バンドを付ければ完成です。左は今回頂戴したセイコークォーツタイプⅡです。1980年製のモデルでガラス風防を装備した高級機で、ケースデザインはロードマチック系に似た品の良さを感じます。セイコーお得意のブルー文字盤は私が高校生の頃に購入したセイコー5と同じで今でも好きですね。ケースの研磨・ヘアライン再生と金属バンドの超音波洗浄を終えて電池交換をしたところ。クオーツの秒針の運針と8ビートのキングセイコーを比べて見ていると飽きませんよ。
で、作業を始めます。PEN-FT #2146XXで、オークションでの入手だそうですが、分解は受けていないようです。巻き戻しボタンがロックされないとのことでした。「キーの腐食は無いよう」とのお話しでしたが、隣りに電池室のリード線を見ると激しく腐食していますね。これは、電池から出たガスが腐食を促進したためで、キーも留めビス部分で固着しておりました。シャッターダイヤルをさわると露出計が接触不良のような動きをする。とのことで、シャッターダイヤルと露出計とは、電気的には繋がっていませんが、ダイヤルの動きに連動して露出メーターが動きますので、コイルに行くリード線に接触不良があるか、電池室からのリード線が不良の場合も考えられます。今回は、リード線は新しくやり直します。
全て分解して点検しましたが、基本的に未分解でしたので問題のところはありませんね。露出計についても再現はしませんでした。では、電池室から組立てて行きます。ダイカスト本体の2ヶ所にモルトを貼って電池BOXをセットします。新しいリード線をターミナルに半田付けしておきます。
シャッターユニットを点検して行きます。こちらも特に問題はありません。ブレーキを留めるナットのスリ割りが大きくナメていますね。未分解機ですから工場での作業ですよ。このナットは緩み易いためPEN-Fなどでは緩み止め用のポンチを3ヶ所打ってありましたが、それが2ヶ所に減って、とうとうこの頃にはポンチは省略されていますから、作業者は力一杯締め付けるように指示されていたのです。それでも緩む個体が多数発生して行きます。この画像、自動車のディスクブレーキに似ていませんか? キャリパーもちゃんと有るし・・・
メカは非常に良好だと思います。但し、左のプリズムは良好でしたが、接眼プリズムのコーティングは、アイピース部のモルトの劣化によりガスが発生して白化していました。残念ですがこれは取り除きます。電池室のリード線は新生しています。
これで本体は完成しています。ハーフミラーとリード線は交換しています。調子は非常に良いと思います。巻き上げは20万代特有の軽く滑らかなものでFTとしては最高の部類になります。光学系の良さは後期生産の30万代辺りが比較的良好ではありますが、巻き上げの感触についてはメンテナンス後は20万台の個体の方が良好になると経験的に感じます。巻き上げ感触が良好な個体をご希望でしたら、20万代の個体を見直してご覧になったら如何かなと思います。付属の40mmは過去にメンテナンスを受けていますので、今回は、シボリリング部の清掃とグリス塗布に留めておきます。