今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

オークション入手のPEN-FTメンテナンス

2011年09月04日 18時08分00秒 | インポート

Dscf288988 夏台風特有な超ノロノロの12号に未だに影響を受けて雨風に加えて高温と強い湿気が体調に影響しますね。ちょっとカメラに神経を使う気になれません。そこで、少しお遊びしています。古い非防水のケースであれば無くても何とかなるのですが、防水ケースの裏蓋やガラスを閉めるためには裏蓋閉め器という工具が必要になります。画像のモデルはスイス製のHOROTECというメーカーで、ねじ込み式で閉めるタイプです。普通、白いコマは時計のサイズに合わせて選択使用するのですが、キングセイコーにぴったりのコマが欲しくてジュラコン丸棒から作りました。時計は裏側にセットして閉めるため、上側のコマはキングセイコーのメダリオンを保護する目的で「逃げ」部分を多く取るように設計し、当り部分はテーパ面に加工してあります。樹脂の加工なので楽勝と考えていましたが、意外にバイトの選択にノウハウがあるのと、バイト先に切り粉が挟まると、それによって材料部分が削られてしまうという金属では考えられないことが起こるのでした。

Dscf289066 ちょっとがっちりと作り過ぎた気もしますね。何か粉ひき臼のようです。上側のコマはシャフトのOリングで保持する方式のため、正確に孔加工(8.1mm)に仕上げてあります。で、めでたくガラスのべセルを圧入したところ。(56キングセイコーは裏蓋は開かない)後は、キングセイコー御用達の黒バンドを付ければ完成です。左は今回頂戴したセイコークォーツタイプⅡです。1980年製のモデルでガラス風防を装備した高級機で、ケースデザインはロードマチック系に似た品の良さを感じます。セイコーお得意のブルー文字盤は私が高校生の頃に購入したセイコー5と同じで今でも好きですね。ケースの研磨・ヘアライン再生と金属バンドの超音波洗浄を終えて電池交換をしたところ。クオーツの秒針の運針と8ビートのキングセイコーを比べて見ていると飽きませんよ。

Dscf2888461 で、作業を始めます。PEN-FT #2146XXで、オークションでの入手だそうですが、分解は受けていないようです。巻き戻しボタンがロックされないとのことでした。「キーの腐食は無いよう」とのお話しでしたが、隣りに電池室のリード線を見ると激しく腐食していますね。これは、電池から出たガスが腐食を促進したためで、キーも留めビス部分で固着しておりました。シャッターダイヤルをさわると露出計が接触不良のような動きをする。とのことで、シャッターダイヤルと露出計とは、電気的には繋がっていませんが、ダイヤルの動きに連動して露出メーターが動きますので、コイルに行くリード線に接触不良があるか、電池室からのリード線が不良の場合も考えられます。今回は、リード線は新しくやり直します。

Dscf288967 全て分解して点検しましたが、基本的に未分解でしたので問題のところはありませんね。露出計についても再現はしませんでした。では、電池室から組立てて行きます。ダイカスト本体の2ヶ所にモルトを貼って電池BOXをセットします。新しいリード線をターミナルに半田付けしておきます。

Dscf2890141 シャッターユニットを点検して行きます。こちらも特に問題はありません。ブレーキを留めるナットのスリ割りが大きくナメていますね。未分解機ですから工場での作業ですよ。このナットは緩み易いためPEN-Fなどでは緩み止め用のポンチを3ヶ所打ってありましたが、それが2ヶ所に減って、とうとうこの頃にはポンチは省略されていますから、作業者は力一杯締め付けるように指示されていたのです。それでも緩む個体が多数発生して行きます。この画像、自動車のディスクブレーキに似ていませんか? キャリパーもちゃんと有るし・・・

Dscf289176 メカは非常に良好だと思います。但し、左のプリズムは良好でしたが、接眼プリズムのコーティングは、アイピース部のモルトの劣化によりガスが発生して白化していました。残念ですがこれは取り除きます。電池室のリード線は新生しています。

Dscf289257 これで本体は完成しています。ハーフミラーとリード線は交換しています。調子は非常に良いと思います。巻き上げは20万代特有の軽く滑らかなものでFTとしては最高の部類になります。光学系の良さは後期生産の30万代辺りが比較的良好ではありますが、巻き上げの感触についてはメンテナンス後は20万台の個体の方が良好になると経験的に感じます。巻き上げ感触が良好な個体をご希望でしたら、20万代の個体を見直してご覧になったら如何かなと思います。付属の40mmは過去にメンテナンスを受けていますので、今回は、シボリリング部の清掃とグリス塗布に留めておきます。


大宰府から来たPEN-F

2011年09月01日 21時48分22秒 | インポート

Dscf2880971 ここ数日は、台風の影響により湿気の多い蒸し暑い日が続いています。早く秋晴れの晴天がこないものかなぁ・・

最近、PEN-Fを続けてUPしていましたので、ブログを見てくださるファンの方から、所有機のオーバーホールのご依頼を頂きました。賢明なファンの手元にある個体ですから、保存状態は良好で、特に不具合もありません。修理の場合、全く動かない個体の修理は変化が大きくて意外に楽なのですが、このような不具合の無い個体をオーバーホールする場合は、作業後に確実に良好な変化を与えなくてはならないので難しいのです。

九州の大宰府から来ましたが、北海道にはPENファンは多いのですが、意外に九州からのご依頼は少なめですよ。で、この個体#1324XXは1964-10製と東京オリンピックの開催中に生産された個体。そう考えるといつの間にか随分時間が経ったですよね。オーナーさんのお生まれになった年とのことです。私は小学生の高学年で、聖火の通過を沿道で日の丸を振って見送っていましたっけ。そう思ってシゲシゲ見直すと感慨もひとしおですね。生産がちょっと安定して来た頃の個体で、リターンミラーには、まだミラー押さえが付いている頃です。余談ですが、あれはどうして付けるようになったのかなぁ? 試作の段階で、リターンミラーの脱落が多発したのかしら? 結果的には初期だけで止めずに付けておいたら良かったのに止めてしまったのでリターンミラーの剥離が多発するようになってますね。FTのようにミラーを拡大する必要となったのでどっちみち不可能でしたが。←の巻上げレバーのクラッチ部分はすでに変更されたタイプとなっていますが、この巨大なスリ割りの中心をキリ加工していますね。加工上の制約なのか、この後の部品では孔加工は無くなります。

Dscf288128 と、余計なことを書いていますが、Fが続くので書くことがないのです。特に問題の無い個体ですからね。ちょっと巻上げがゴリつく程度でしょう。まず、全体の分解をする前に、劣化したモルトを全て削り取っておきます。残しておくと、各ユニットなどに付着して洗浄が面倒になります。

Dscf288251 何の問題も無くいつもの画像です。使いまわしをしているわけではありませんよ。ちゃんとやってます。2軸は完全に分解洗浄のうえ組んであります。シャッターユニットですが、やはりブレーキが耐用時間をとうに過ぎていましたので新品のOリングに交換して組んであります。ダイカスト本体のピンセット部分ですが、この個体はまだ切りかきが無くストレートに成形されていますね。じつは、このシャッターユニットを取り出すのは知恵の輪なのです。米谷さんの設計には多いです。そこで、この後の製品からは、この部分にシャッターユニットの逃げを作って、ユニットの取り出しを容易にしています。

Dscf288367 こういう個体はレポートし難いですね。光学系はFの場合、プリズムがピント面でマット加工されていますが、筋状に見える部分があります。未分解の個体ですから新品の時からですね。接眼プリズムには多少の腐食が確認されました。全反射ミラーは特に腐食や傷は認められませんでしたので再使用としています。

Dscf288537 その他、38mmや露出メーターも来ていましたが、特に問題は無いため作業をしておりません。

Dscf288694 完成の画像を撮り忘れました。まぁ、いつもと同じですが・・そこへ、最近BBSなどに来てくださる笹原ペンさんから大量のカメラと時計が送られて来ました。画像のものは動作チェックで良好なものだけを超音波洗浄したところ。なんでこんなにお持ちなんでしょう? 殆どがクォーツなので、全て電池を交換すると、使わないうちに電池が切れてしまうので(不便ですよね)機械式が一番ですが、今回は機械式は三つです。一つはセイコーの女持ち用自動巻きでしたが、残念ながら裏蓋が緩んでおり水が浸入して錆びていてご臨終。中央右の懐中時計はスイスのミネルバ製でTBSの備品だったもの。この時計はストップウォッチを兼ねるのでNHKなど放送局で多く使われていました。中央左の四角いのは、あらら、ルイ・ビトンではないですか。本物ならね。自動巻きのムーブを見た限りでは香港か中国製と思います。

後ろの白いジュラコン棒はキングセイコーの専用締めコマを作ろうと思って中々掛かれないもの。旋盤で削りだそうと思っています。