腕時計をやります。この時計はセイコーのクロノグラフで、1969年に自動巻きとしては世界で最初に量産された機械のようです。機械は6139Bで、入手したジャンク品は6139-0080の裏蓋が付いていましたが、ネットで調べてみると-0060が正しいようです。同じ機械を搭載されてもSpeed-Timer や5SPORTSと文字盤にプリントされているモデルもありますが、この個体はカレンダー表記も国内用ではなくCHRONOGRAPHとなっていますので、輸出用として生産されたものの里帰り機のようです。世界的に、6139、6138などビンテージセイコーのクロノグラフはダイバーと共にファンが多く、イーベイなどでも多数取引されています。また、アフターパーツなども出回っていますので、ヤフオクなどでも、すでに文字盤がアフターパーツに交換されているものが多数あります。すべて分解して見ましたが、文字盤の劣化が激しいですね。何度も分解を受けて、オリジナルでない部分もあります。
まず先にケースを研磨します。ユニットを先に仕上げると、ホコリなどが混入する危険性が高いからです。ステンレスの塊のようなゴツイ大型ケースですね。当初から輸出中心で企画されたのでしょう。高級品ではありませんので、ケースの研磨はあまり上質ではありません。その後、何度も磨かれているようです。取りあえず荒仕上げとしておきます。風防内に見えるインナーリングはリューズによって回転します。このリングもプリント文字が消えていましたので、INOBOOさんからご提供頂いた部品と交換しています。右が機械の治板で、基礎キャリバーは6106Aです。専用の機械台にセットしたところ。
残念ながら、巻真はご覧のような状態。リューズの防水用パッキンが機能を失うと、内部に水が侵入して、インナーリングを回転させるための駆動車#998613が錆びてしまうのです。鉄製のため、殆ど原形を留めない激しい腐食。この部品は調達が出来ず、現在探しています。どなたかお持ちの方はいませんかぁ。。なぜかアフターパーツも出回らないのですね。
で、機械を組立てています。ここまでは普通の時計とほぼ一緒です。中心にある四番車の上に秒クロノグラフ車が載っています。ボタンの押すことで四番車とクロノグラフ車の垂直クラッチが接続して秒針が動き出す(停止、帰零)しくみです。
一番受をセットしてクロノグラフ車を取り付けます。第一第二レバーと作動バネをセットしています。
クロノグラフ受とテンプをセットして快調に動き出しましたね。各部には指定の時計油とグリスを塗布してあります。見慣れた一般の時計と全く景色が異なりますね。クロノグラフ受の上に自動巻き機構が載りますが、クロノの調整がありますので、組立は、ケースにセットした後になります。因みに、タイムグラファーでの調整で、片振り「0」 +5秒付近で安定しています。何度も分解されたジャンク機としては上出来でしょう。
↑が作動カムで、作動レバーによって一歯づつ回転して発停を制御します。グリスを塗布しておきます。
ひっくり返して表側(日ノ裏) 専用の機械台にセットして、クロノの作動をチェックします。
日ノ裏側を組立てました。カレンダーの日車、曜車が正常に切り替わるか、早送りは正常かを確認しています。曜車は国内用の漢字仕様も所有していますが、今回は輸出仕様で行きます。
で、劣化した文字盤をどうするかですが、今回は、イーベイに出品されていたアフターパーツを取り寄せてみました。さすがに国内のヤフオクでは出品出来ませんね。パっと見は、まぁまぁの仕上がりに見えますが、細かい部分のタンポ印刷が雑であったり、艶消しコートにホコリが付着していたりで純正には及びません。一番気になるのはSEIKOの植文字です。正確なロゴになっていません。まぁ、出来てもやらないのでしょうね。そこで、私は個人として楽しむために作るので、他人に譲るつもりはありませんので、ロゴを本物に替えてしまおうと企んだわけです。画像は、すでに本物のロゴに替えています。下にあるのが付いていた文字。Oが違うという情報もありますが、私にはSが一番違うと見えます。
日ノ裏側が完成しましたので、アフターパーツの文字盤を取り付けました。問題は、針は何を使うかです。セイコー純正でも数種類はありますし、塗装色の変更も出来ます。ピンセットの針はメッキ針です。
古い針は塗装のハゲや劣化がありますので、塗り直すことにします。
長短針はオリジナルと同じに塗るつもりでしたが、面倒なので黒一色としてみました。中心の夜光塗料と見える色は、普通のなんちゃって塗装。夜は使わないので・・秒針は悩みます。赤は発色が難しいので、取りあえずということでこの色にしてあります。
ケースの構成です。インナーリングが回転するための機構となっているため、部品点数が多いですね。リューズの駆動車が欠品なので、今回は回転させることが出来ませんが・・
組立てたケースにユニットをセットしました。クロノ用のボタン(プッシャー)は、ユニット外周にはめるリングによってのみ固定されている合理的な設計。クロノ部に自動巻き機構を載せて行きます。セイコーご自慢のマジックレバー式ですから、部品点数は驚くほど少ないのです。
自動巻き機構に回転錘(ローター)を取り付けて組立完成。
で、針ですが文字盤がアフターパーツのため、微妙に厚さが異なるためと、同じ6139クロノでも、機種によって針の相性があるため、今回は適合する別の針を付けています。文字盤は印刷と6時の分針の孔位置も正確でないため、針とインデックスの位置も合致しない場所があります。現在、第1ボタン(2時)を押して秒針が発進している状態。12時まで進むと、6時の分針が一目盛(1分)進みます。
もう一度第1ボタンを押して停止した後、第2ボタン(4時)を押して秒針は12時に帰零します。
針はまた変更する予定です。インナーダイヤルは現在は回転しませんので、駆動車を入手して完全に作動する状態にしたいと思います。世界的に人気のあるモデルですから、劣化した個体の補修用として、海外ではアフターパーツが出現して来るのですが、個体数を維持するためには必要な部品との側面もありますので、単純にニセモノと片付けられないと思います。製造メーカーが供給してくれれば一番良いと思いますが、それも混乱を招くので出来ないでしょうね。このモデルは、多くのデザインが存在しますので、自分好みの個体を作れるのも魅力でしょう。とにかく、ジャンクから1台は現役に復帰です。
続いて、大阪のご常連さんからは、セイコーのダイバーが2つ来ています。
ご本人様は、腕時計は、あまり詳しくないとおっしゃっていますが、どうとてどうしてコレクターアイテムですよ。大きい方のダイバーからです。通称サードダイバーという、セイコーバイバーモデルの三代目6306-7001で、1978年の製造です。最近は、輸出された個体が里帰りをして来るものが多いですが、この個体は日本国内用ですね。特に問題は無い個体ですので簡単にO/Hをしておきます。
自動巻き機構を分離してオーバーホールをして行きますが、特に特殊な機械でもないので簡単に・・
この個体はアフターパーツは使われていないと思いますが、針がチーフな作りですね。文字盤と針は時計の顔なので、もう少しコストを掛けても良いんじゃなんかと思いますけど。
ケースは簡単に研磨とヘアーラインを再生しておきました。自動巻きのローターを取り付けて、新しいパッキンをつけて裏蓋を締めます。
女性用のダイバーは2205-0760でユニットは専用ではなくて、女性用の小型モデルに使われているものです。ケースから取り出してみると、ちっちぇ~・・・。
分解を進めていくと、もっと小さくなります。自動巻き機構に問題があって、交換予定です。