今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

実用機PEN-Sの製作の巻

2019年12月10日 20時15分20秒 | ブログ

「一一四五、敵主力見ゆ。北緯四度、東経一〇三度五五分。針路六〇度」帆足予備少尉が操縦する九六陸攻(中攻)索敵機が発した緊急信。開戦劈頭12月10日、イギリス東洋艦隊の新鋭戦艦プリンスオブウェールズとレパルスを攻撃沈没させたマレー沖海戦の幕開けであった。中攻と一式陸攻による水平爆撃と雷撃により、ㇾパルスは攻撃中に轟沈したが、プリンスオブウェールズは轟沈せず攻撃隊帰搭後まで触接を続けた帆足機が沈没を見届け、「両艦沈没」を発信した。シンゴラの山下兵団にとって海上補給路の安全のため絶対に必要な攻撃であった。

で、先日やりました元箱付きのPEN-Sですが、あまりに状態が良いのでオーナーさんも実用を考え直し、もう1台実用機を作ることになりました。普段はあまりストック機の販売はしないのですが、今回は当方で本体を用意することにしました。PEN-Sは数十台はストックしていると思いますが、例によって整理が良くなくて(-_-;)、たまたま手元にある40万台を使うことにしました。

作業は同じですので簡単にUPします。洗浄をしたシャッターの地板ですが、このシャッターは地板が薄く、レンズ部に打撃を受けた個体の場合、レンズ取付基部にクラックが入っていることがあるので検査をして使用します。

 

非常に状態の良いシャッターでした。摩耗も全くありません。

 

 

スプール軸の滑り機構を洗浄グリス塗布して組みます。

 

 

2軸を組んだ本体に完成したシャッターを組み込みます。

 

 

 駒数ガラスは接着が弱くなっていましたので、一度分離して研磨をしてから再接着をします。

 

 

吊環の片方が痛んでいましたので交換をしておきます。初期型は真鍮にニッケルメッキ。中期以降は市場での破損事故を踏まえてステンレス製に変更されました。この個体は当然ステンレス製を付けます。

 

前回の初期型のユニットとの違いを見比べてくださいね。

 

 

おっと、絞りが指標と合致しませんでした。これは過去にダイヤルを無理に回したため、キーなどの回り止めが無いので回ってしまったのです。位置を合わせてネジロックをしておきます。

 

ヘリコイドグリスを塗布してレンズをねじ込みます。

 

 

40万台のボディーは巻き戻し軸部の設計変更を受けています。変更前の個体には画像のカラーは入りません。変更の前後で部品の互換性もありません。尚、PEN-Wはすべて変更後のタイプになります。

 

現存機はリング類のメッキが劣化している個体が多いですが、実用機として使うには充分きれいなコンディションとなりました。お子様の写真をお撮りになるそうです。良い写真が撮れると良いですね。#4186XX 1964年10月製。

 

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/

 


WERRA 3は難物の巻

2019年12月08日 21時30分00秒 | ブログ

今日12月8日は毎年書いていますが開戦記念日ですね。もう一年経ってしまったか・・歳を取ると一年は早いです。ハワイ真珠湾への奇襲攻撃は毎年何度も書いてきましたが、日本軍は陽動作戦を立案するのが常で、ハワイ以外にフィリピン、マレーへの三方面同時攻撃が決定されていた。マレー方面は航空基地確保を目的に陸軍第二五軍(山下奉文中将)の上陸部隊(船団)はすでに12月4日に出港しており、警戒するイギリス軍機の索敵も頻繁となっていた。フィリピンへの我が軍の偵察は大艇隊によって4日より実施され、こちらも厳重な電波封止の中でも意図を察知した敵の哨戒も厳重となっていた。特に真珠湾は奇襲であったが、フィリピン、クラークフィールド基地への攻撃は時差の関係で完全に強襲となり、しかも、出撃の台湾基地が早朝濃霧のため予定よりもさらに出撃が遅れるというハプニングもあった。すでに作戦行動は12月8日より前に始まっており、イギリス、アメリカも、日本軍が攻撃して来ることをすでに察知していたということです。

で、ドイツが東西に分かれていた頃の東ドイツで作られたヴェラです。構造は簡単ちぁ簡単ですが、そこは共産圏の国、簡単ではない部分もありすね。現存はシャッター不調のものが多いですが、シャッターを分離するためには裏側のリングナットを緩める必要があります。しかし、鏡胴部分に巻上リングがあるためか、このリングナットが強く締まっていて汎用の工具では緩みません。ではと、φ30の塩ビパイプをスリ割り部分を残して削り、簡易の工具を作りました。めでたく緩めることに成功。

シャッターはプレストールRVSで、困ったことにこのシャッターはスローガバナーがすべてネジ留めではなくカシメられているので分離洗浄注油が出来ません。絶対に故障しないという自信か、使い捨て思想なのかは知りませんが、後のサービス性は考慮されていないようです。ガタパシャさんもブログで書かれていますが修理不能ということですね。まぁ、何とか動くようにしますが・・

完成したシャッターユニットをハウジングに収めて・・

 

 

厚い鉄板のバックプレートを取り付けて本体とドッキングします。カメラ側とのリンケージはペンチで曲げて位置合わせをしてあるという・・

 

 

巻上げのリングがキィーキィーと異音がしてスムーズに回転しませんね。ちょう度の低いグリスを薄く塗布します。スプロケット、スプール軸を作動させるリンケージ部からの異音もあるようです。

 

 

がっちりとしたケースに入ったファインダーですね。プリズムが多用されていています。

 

 

トップカバーは本体との密着を上げるためか、中央部が狭く矯正されています。距離計窓枠がポロっと落ちて来ましたので再接着をしますが、良く見ると保護ガラスをスムーズに引き込むため片側が面取りをされていました。画像は反対です。

 

 

シンプルな設計と言えばそうですが、吊環はネジにネジロックのような緩み留めを塗布しただけですね。日本人の設計なら頭にスリ割りを入れるとか、丸ではなく多角にするとかするんじゃないかな?

 

レンズは交換式。Tessar 50mm f2.8ですが、かなり曇っていますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


元箱付きのきれいなPEN-Sの巻

2019年12月05日 09時00分00秒 | ブログ

PEN-Sの発売は1962年6月とのことですが、この個体#2430XXは1962年2月コパルシャッター完成、本体は翌月3月の完成個体です。PEN-Sは長く生産されたので20万台でも初期型に属します。元箱付きというと「遅れて来たペンマニア」さんが十八番ですが、この個体は別のオーナーさんです。残念ながら保証書、取説などの書類は失われているのが惜しいですね。

元箱底部にはB,NOの記載個所があり、鉛筆書きで同じ番号が書かれているのでセットの箱に間違いはないでしょうね。本体は殆ど未使用のような状態で保存状態も大変良いです。但し、シャッターやヘリコイドなどは不調となっているのは製造からの年月を考慮すれば仕方のないところです。

 

殆ど未使用でもお約束の駒数ガラスにクラック入り。カニ目ネジを見ると分解されているような? モルトが交換されているので開けられている可能性もあります。

 

 

殆ど新品を組むようなものですので特筆すべきことも無いでしょうから簡単にしますね。シャッターの羽根の開閉は緩慢です。

 

 

洗浄をして組んで行きますが、シャッターバネは流石に張力が落ち気味のようです。初期のシャッターと中期以降のシャッターの違いは初期はのネジがスリ割りで、中期以降は逆にスリ割り付きナットタイプになります。その方が組立易いからでしょう。レリーズレバーの形状も変わります。初期の方が凝った形状(先端部)によって、巻上げ完了時の「カチッ」という音が違います。かなりマニアックな違いなので気が付く人はいませんけどね。

ストロボターミナル接点の半田はまず外れてしまいます。画像は半田をやり直したもの。しかし、この個体ではすでにネジによる組立式となっていますが、もっと初期は直接の半田付けです。

 

レンズもほぼ満点でしょう。一応清掃をしてヘリコンドグリス塗布で組み立てます。

 

 

距離やシャッターリングのメッキ腐食やアルマイト剥げも全くありません。分解清掃をしたファインダーのリンクル塗装も完璧です。巻き戻し軸部は設計変更を受けますが、この個体は変更前のタイプで、工場での組立時、ダイヤルガタを無くすシム調整に工数が掛かるので変更されたのでしょう。

 

工場で新品を組んでいるような感じです。経過した時間を考えると驚異的。

 

 

多分、フィルムは1~2本程度しか通していないでしょう。なんで購入したんですかね。この個体は資料的価値が高いですから使用せず保管して欲しいです。オリンパスの瑞古洞さんに提示して欲しい。

次の更新は少しお時間を頂くかも知れません。厄介なのをやらないと・・

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/