今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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何か怪しいPEN-FT(B)の巻

2020年02月16日 19時56分22秒 | ブログ

PEN-FT(B) #2747XXですが、「ファインダーが暗い、露出計精度、ファインダー像の歪」とのお訴えです。

 

当初は未分解機と思いましたが・・

 

 

露出計ユニットを留めているネジが緩められていて3本のうち1本が欠落しています。

 

製造の後期では、ハーフミラーは金の色調を強くしていきます。劣化に対する対策のための変更でしょう。この個体のミラーは金色が他の個体に比べて強く、これがファインダーが暗く感じる要因のようです。

ユニットを留めるネジが緩められているのが分かりますね。ハーフミラーの取付位置が正確でないとファインダー像が倒れて見えることがありますが・・

 

接眼プリズム押えのネジも緩められていますね。ネジ頭の当たる位置が微妙にずれています。プリズムの取付位置によってもファインダー像が正しく正立しないことがあります。

 

問題はまだあります。セルフユニットを留めるネジが欠落していますが・・

 

 

セルフユニットのネジ穴と微妙にずれていてネジを留めることが出来ずに省略してあるのです。なぜ穴位置が合わないのか? 後期型は、このネジの穴位置がマウントより離れるように変更されました。そう考えると前板が変更前のものと組み合わされた?とも思えますが、シボ革は剥離された形跡がありませんでしたので、穴位置が変更になる過渡期に変更前後の在庫部品を組み合わせるため、正規ではない仕様で組まれたものかも知れません。

のネジは前期型で前後の位置調整のために使われていたネジで、この個体のような後期型では無くなっていはずです。それが復活している理由は、正規の穴位置にネジが取り付かないため、このネジで固定を確保したものではないのか? まぁ、本当のところは当時の担当者にお聞きする以外にはありませんが、多くの個体を見て、仕様の変遷を熟知している者にしか分からない疑問ではあると思います。

すみません、UPが遅れました。定期健診で新宿まで出掛けたり、車を変えるので必要書類を集めたりで時間を取られました。しかし、こんな時期に新宿には行きたくはありませんでしたが、電車内では意外にもマスクを着用している方は3割ぐらいでしたね。マスクも入手が困難ですしね。困難なものは他にもありまして、私の仕事ではエタノールは必需品なのですが、薬局には品切れですね。幸い調達したばかりでしたので、しばらくは大丈夫ですけど、この騒動はいつまで続くのでしょうね。なるべく軽微で収束してくれることを祈るばかりです。で、作業ですが、チャージギヤ軸に軽症の摩耗がありますね。まぁ、2回巻き上げにはならない程度ですので再使用としますが・・

で、すでにシャッターユニットが完成して搭載しました。特に問題のない信頼性の高いユニットです。

 

前板関係のミラーユニットも安定しています。さて、これから問題の光学系になります。

 

結局、垂直の柱が倒れて見える現象は組み方による修正は出来ず、ビューファインダーを交換しました。PEN-Fでは像が倒れる場合、全反射ミラーとの接地面に細くカットした厚紙を貼ることで修正をしていましたが、FTの場合はCdsなどがあるためそのような修正はされていません。

セルフユニットは本来でネジ留めされますが、の穴位置が合わずで本体に固定してありましたが・・

 

どうも最初の仮説は間違っているようです。上が付いていたユニットですが、下のユニットと比較してのネジ穴位置が2時方向に寄っています。こちらが設計変更後のユニットです。と言うことは本体は設計変更前の個体に変更後のユニットを工場が取り付けたのか? ちょっと考えられません。またに留まっていたネジは、紛失されていた露出計ユニットを留めるネジでした。と言うことは工場ではなく、それ以後に組まれた個体ということになりますね。良く分かりません?

の距離も微妙に(0.2mmほど)ズレていてネジ留めが困難な状況でしたので、私の判断で本体に合致する方のセルフユニットを組み込みました。その他、ハーフミラーを交換して組立完了。

 

この個体は平成16年に修理を受けた書き込みがありました。当初は工場での作業を疑いましたが、途中でセルフユニットを交換され、その部品がたまたま適合しない設計変更後のものだったのでしょう。そんなに苦労するより不調のユニットを直した方が楽だと思うのですけどね。しかし、ビューファインダーは加工精度に問題があったようです。同じ時期の製造で同じ金型番号のものを選んで取り付けてあります。オーナー様は私のところからも近い府中市にお住まいでした。1969年4月製。

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久しぶりのコンパクト系PEN-Wの巻

2020年02月11日 23時30分00秒 | ブログ

その前に。少し前にO/HをしましたPEN-FT(B)ですが、落下をさせてしまったとのことで、セルフタイマーが作動しなくなって戻りました。

 

シャッターとの同調は、底部のスライディングロッドとのレバーとで行いますが、こちらは特に問題はありません。この個体は後期型なので、レバーとレリーズとの調整は隙間をドライバーでこじって広げるという乱暴な方式です。中期型までは、ここにちゃんと調整用のネジが有って、それによって調整をしていました。

画像は調整後でネジロックを塗布していますが、特にネジが緩んでいる形跡はなく、落下による強い加速度により短くなる方にズレたものです。

 

調整が取れて、ちゃんとシャッターが切れているのですが見ますかね?

 

 

ということで本題です。ずいぶんとばっちいPEN-W #1020XXですが、後で清掃をしてみると意外に悪くは無かったのでした。シャッター不調、ファインダー、レンズ曇り、駒数ガラスクラックなどがあります。

 

レンズは見にくいバルサム切れやカビは少ないのですが、全体に曇りがあります。

 

 

内部の汚れはひどい。

 

 

駒数ガラスは分離して交換します。

 

 

本体は洗浄後はかなりきれいです。スプロケット軸、スプール軸内も完全に清掃してあります。

 

巻上げダイヤルカバーの留め部分が折れていました。

 

 

シャッターは未分解でした。消耗はしていない良いコンディションです。

 

 

シボ革の汚れもきれいになっていますね。O/Hをしたシャッターを組み込みます。

 

 

後玉はバルサム接着をされていますが、黄ばみはありますが現存の中では決して悪くはありません。曇りはコーティングの劣化が大きいです。

 

駒数ガラスは新品と交換接着をしてあります。ファインダーはレンズ分解により清掃を完了。

 

駒数板がきれいに見えるようになりました。

 

 

トップカバーの裏側は手汗によ塗装う劣化が進んでいるのは残念なところ。

 

 

ピント調整とストロボの発光テストをしておきます。

 

 

前面は悪くはないですね。シャッターは快調で、現存の中ではコンディションは良い方の個体になります。1964年9月製造。

 

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ローライ35のメンテナンスの巻

2020年02月09日 22時00分00秒 | ブログ

UPが無くてすみませんね。カメラ市用のローライ35(S)をメンテナンスしています。納期が無いのですがしっかりとメンテナンスをしなければなりません。すでにローライ35 X2台は終えているのですが・・

 

レバー当てが取れてしまっている個体が多いですね。リューターで作るのが面倒で・・今度、卓上旋盤で量産しておかなくては。

 

熱カシメをしました。露出計のガラスも脱落していましたが、端にカケがありますので、その打撃で外れたのでしょう。

 

故障機ではありませんので実施する作業は同じなので特に書くことも無いのですけどね。ファインダーを清掃して接眼レンズをバネで押さえます。

 

シャッターのスロー不調を調整してからレンズを清掃します。

 

 

こちらはローライ35Sですが、やはりレバー当てが取れていますね。

 

 

ファインダー清掃とスローシャッターの調整。

 

 

レバー当てを付けトップカバーをセットします。あ~やっぱり書くこと無いですね。

 

シャッターを分解してレンズを清掃しておきます。⇧はアウター側のヘリコイド。グリスの交換をしておきます。

 

シャッターレンズユニットを本体に組み込みます。

 

 

点検でシボ革の剥離を見つけました。接着補修をしておきます。

 

 

レンズもきれいで、中々良いコンデションになりました。

 

 

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シャッター幕固着のPEN-Fの巻

2020年02月06日 14時55分00秒 | ブログ

ここのところ、直接と今月のカメラ市用の修理ご依頼を多数頂いておりまして、ブログUPの時間をとるのも難しい状況ですので簡略版でお届けしますね。このPEN-Fは#2624XXと中期以降の個体です。巻き上げが固着していますが、観察するとシャッター幕が止まっていますね。

心配したシャッターバネの破損は無いようです。大きな部品の破損は無いようですから再組立で大丈夫だと思いますけどね。

 

では、本体の洗浄から組み立てて行きます。

 

 

シャッター停止の原因はシャッタ幕軸の荒れによる回転抵抗の増大とシャッターユニットのフリクションの増大の合成による停止と思われます。全反射ミラーは良好のため再使用とし、ブレーキは、まぁ良しととします。

アンダーカバーがきつくて外れない個体がありますが、この個体はダイカスト本体側を削って合わせています。ここまで修正をしてあるのも稀です。

 

付属の38mm。後玉曇りと絞り羽根の復帰不良です。

 

 

ヘリコイドグリスが絞り羽根に流れて抵抗となっているものですね。

 

 

部品取り機も付いて来た個体でしたが、結果的に部品交換無しで修理が完了しました。 

 

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きれいな初期型なのにPEN-FTの巻

2020年02月03日 20時15分00秒 | ブログ

このきれいな初期型は私が高校生まで育った立川市の隣の町内にお住まいの方からのご依頼です。ほんと、全く使用していないように傷がありませんが、フィルムカウンターが動かない、巻き戻しボタンが無いなどの問題があります。その他、セルフタイマーが改良型が付いていますが、この個体#1367XXは改良前のタイプが付いているはずなので、人の手が入っていると推測します。

まず、なんで巻き戻しボタンが無いか?。あら~、電池の液漏れを起こしたようです。ボタンドメが完全に固着していて動きません。なにやら磨いた跡が・・

 

やっと分離しました。そもそも電池室からのリード線があり得ないところを通っています。

 

別の良品に交換した方が良さそうですが、使えないことはありませんので腐食を研磨しておきます。

 

あ~、手が入っていますね。シンクロのリード線はカバーを外す時に切れたのでしょう。露出計ユニットが後期型に交換されていますが、半田付けがひどいですね。推理では、初期型なので露出計不動とセルフ不調のため、後期型の個体より部品交換をされたものでしょう。

それにしても、お世辞にもお上手とは言えない半田付けです。新しい半田を供給しないから半田が酸化をして付かないのです。両端のリード線は外れています。しかも、半田付けの位置も間違っているし・・

 

正しい位置に半田付けをやり直しました。白いリード線はオリジナルではなく、Cdsからの引き出し線は芯線1本だけなので、エポキシで補強しておきました。作動はしていますが感度は?

 

ハーフミラーは傷だらけなので交換します。

 

 

駒数板にバネが掛かっていません。

 

 

うわぁ、泣けて来ますね。電池室の接点半田付けがてんこ盛りで樹脂を溶かしています。これは電池室から接点を分離してから半田付けをしないといけません。手抜きをすれば良い仕上がりは期待できません。あとは普通のオーバーホールで行けると思いますので書くことも無いでしょう。

では、本体を洗浄して組み立てをして行きます。電池室からのリード線を新製しておきます。

 

初期型で問題なのはスローガバナーです。神経質で調子を出すための調整が非常に難しく困難です。案の定・・・

 

 

ここまで丸一日掛かってしまいました。各リード線は半田をやり直しておきました。

 

初期型はユニットが不安定な傾向があって工数が掛かります。あとは大きな問題はないと思いますが、ビューファインダーのモルトが植毛紙でやり直されていますね。

 

剥離してみると古いモルトが清掃されていません。正直なところ手間は掛かるので私も面倒ではあるのですが、貼り重ねるとビューファインダーが倒れて組み立てられてファインダー像が歪んでしまう危険性があります。すべて清掃をしてから貼り替えるようにしています。

 

こんな感じですね。

 

 

交換された露出計ユニットは25万台以降のものと思いますが、分解をされたためか感度低下が激しかったです。幸い感度に余裕がありましたので、何とか調整が取れました。留めネジの1本が欠落していましたので追加しておきます。単に紛失したものか、それともここはドライバーが入りにくいので留めなかったのか?

ファインダーのピント調整をされていましたが、それがズレていましたので調整をして完成です。

 

欠落していた巻き戻しボタンを追加してカバーを留めます。

 

 

13万台の初期型としてはレンズマウントの傷もなくきれいですよね。露出計の換装は仕方がないと思いますが、セルフユニットは修理が出来たはずと思います。巻き上げの感触は軽くスムーズで、未整備の後期型になれた方にはびっくりするような感触です。しかし、中期以降はシャッターやミラーユニットのバネの強化により、巻き上げ抵抗が大きくなって、そこに軸摩耗や潤滑不良が重なって現在のような巻き上げ感触になっているのです。初期型の魅力の一つです。

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