迷走台風の6号が居るのに7号も発生したようですね。7号の方が関東地方に影響するコースなのでこちら在住としては心配です。で、秋田のご常連さんからきれいなPEN-F #2882XX(1966年6月製)が来ました。流石に選択眼は確かで点検しても作動に何も問題はありません。未分解機で正常に作動をしている個体なのか?
しかし、アンダーカバーを外してみると・・なんだこのグリスは。リンケージやリターンミラー作動部などにべっとりと塗布されています。工場ではやりません。
シボ革を剥がすと・・あっ、これは過去に分解されています。しかも、SSかそれに準じた修理です。再接着の接着剤で分かります。
シャッターユニットも分解を受けていますね。途中で修理を受けているので現在でも問題なく作動するのでしょう。ということは優秀な修理ということ?
では、洗浄をして組み立てて行きます。スプロケットはすでに樹脂製となっていてパーティングラインが見えますね。
問題はブレーキです。ブレーキリングがスカスカで全く抵抗がありません。ブレーキが機能していないと言うこと。
拡大してみると、なにやら傷が多いです。ブレーキナットのスリ割りが壊れかかっていて緩み止めのポンチも多く打たれています。推理はこうです。この個体はブレーキのOリングが変質してブレーキが利きっぱなしの状態となり、するとシャッターが正常に作動しなくなったので修理に出した。リペアマンは恐らく変質したOリングを取り除いてそのままブレーキナットを締めてポンチを打った。ブレーキは利かなくても分からないということ。分解を試みましたがブレーキナットはポンチが強く打たれていて変形し、親の仇のように強く固着していて緩みません。使用中に緩まないようにと強く締めてポンチを打ったのでしょうけど、次に分解をする者のことは考えていないのでしょう。この個体のブレーキナットは真鍮製ですが、鉄製のものも存在するので強度について試行錯誤したようです。ここでも組立に厳しい米谷設計で構造的にブレーキナットが緩みやすい。困ったな、じゃ、ポンチを打って緩まないようにしよう。エンジンじゃないんだけどね。
画像のように製造時期の一部でチャージギヤが切削物のかさ歯歯車になっている個体があります。FTのプレスものとはコストが違います。
変質して膨張したOリングをナイフで削り取られていました。これ、良く見る処置ですが修理のスタンダードなのかな?
実際の話し、ブレーキが利いているか利いていないかは瞬時に比較しなければ分からないというのが本当のところでしょう。今回の処置はオーナーさんが承知の上なのか単なるごまかし修理なのかは分かりません。と言っている間にブレーキを微調整して組み立ててしまい画像がありません。裏蓋に前回の修理歴が書かれていますね。
Fのプリズムは黒点腐食が出ますが、この頃になると品質が向上したのかきれいですよ。スクリーンのフレネル汚れは拭き上げではなく洗ってしまった方が良いです。
問題はこのレンズサイドカバーですが、すでに一度剥がされて再接着されているのでヨレヨレになっています。普通のカバーは厚さ0.15mm程度ですが、このカバーは箔のように薄く0.07mm程度しかありません。こんなの見た記憶がないです。すでに再接着をされていたのでオリジナルなんでしょうけどね。前回の剥離時にすでに端の出っ張り部が千切れているし・・
思わぬブレーキで時間が掛かりました。しかし、Oリングを削るのがスタンダードの修理法なのでしょうかね。私は独学なので業界のスタンダードは分かりません。確かにブレーキの再生は個々の個体の寸法に合わせてOリングを調整する必要があるので面倒な作業ではありますが。
次の作業に移って完成画像を撮っていないことに気が付きました。まぁ、ブレーキが利いていなくとも特に問題はないのであればOリング削りでも良いのかも知れませんけどね。私は拘ってあげたいと思うだけです。
トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)