彼の気持ちの中には、井上に対する申し訳なさが渦巻いていた。
収入のこともありはしたが、本音を言えば貴子のことだったのだ。
毎日顔を合わせるのが、辛くなってきていた。
どこかしらぎこちなさが漂い始めている二人だった。
デートの度に彼のアパートに立ち寄るのだが、いつも気まずい気持ちのまま別れていた。
彼の劣情に対しキスまでは許す貴子だったが、どうしてもそれ以上には進めなかった。
「ごめんね。次は、きっと…」
「いいんだ、いいんだよ」
別れる時には、同じ会話が幾度となく繰り返された。
貴子を駅に送り届けた後、言い知れぬ寂しさに襲われる彼だった。
そしてその度に、真理子のことが思い出された。
“いっそのこと、帰ろうか。お母さんも、喜んでくれるだろうし。真理子さんだって、、、”
しかし翌朝には、そんな思いはきれいさっぱり忘れている彼だった。
そして今夜、井上のお供をする。
指南役とでも言うべきユミだった。
女性に対する接し方が変わったことは事実だった。
それまでのオドオドとした態度は消え、相手を冷静に観察できる余裕を持てるようになっていた。
“今夜は、何て言われるだろう? また、誘ってもらえるだろうか”
井上に対する申し訳なさから重苦しい気持ちでいたが、甘酸っぱい思いが、彼の心を占め始めた。
その夜のことは、彼にとって苦い思い出となった。歓待してくれるとばかりに期待していた彼を待っていたのは、冷徹な現実だった。
「今夜は、ミタライ君の送別会だ!」
店に入るなり発した井上の一言で、歓待どころか無視され続けた。
「いらっしゃい! ゆっくりしていってね」
と一言かけたきり、ユミは彼の元に近づくことはなかった。
ユミの過剰とも言える接客は、将来の上客と期待したが故のことだった。
ツマミ食いという意識であり、その場限りの感情でもあった。
彼にしてみれば好意からのことだと思っていただけに、その豹変ぶりは驚き以外の何物でもなくショッキングな事だった。
“所詮、水商売の女性はこんなものなのか。いい経験をさせてもらった”
と、失意の中で思う他なかった。
収入のこともありはしたが、本音を言えば貴子のことだったのだ。
毎日顔を合わせるのが、辛くなってきていた。
どこかしらぎこちなさが漂い始めている二人だった。
デートの度に彼のアパートに立ち寄るのだが、いつも気まずい気持ちのまま別れていた。
彼の劣情に対しキスまでは許す貴子だったが、どうしてもそれ以上には進めなかった。
「ごめんね。次は、きっと…」
「いいんだ、いいんだよ」
別れる時には、同じ会話が幾度となく繰り返された。
貴子を駅に送り届けた後、言い知れぬ寂しさに襲われる彼だった。
そしてその度に、真理子のことが思い出された。
“いっそのこと、帰ろうか。お母さんも、喜んでくれるだろうし。真理子さんだって、、、”
しかし翌朝には、そんな思いはきれいさっぱり忘れている彼だった。
そして今夜、井上のお供をする。
指南役とでも言うべきユミだった。
女性に対する接し方が変わったことは事実だった。
それまでのオドオドとした態度は消え、相手を冷静に観察できる余裕を持てるようになっていた。
“今夜は、何て言われるだろう? また、誘ってもらえるだろうか”
井上に対する申し訳なさから重苦しい気持ちでいたが、甘酸っぱい思いが、彼の心を占め始めた。
その夜のことは、彼にとって苦い思い出となった。歓待してくれるとばかりに期待していた彼を待っていたのは、冷徹な現実だった。
「今夜は、ミタライ君の送別会だ!」
店に入るなり発した井上の一言で、歓待どころか無視され続けた。
「いらっしゃい! ゆっくりしていってね」
と一言かけたきり、ユミは彼の元に近づくことはなかった。
ユミの過剰とも言える接客は、将来の上客と期待したが故のことだった。
ツマミ食いという意識であり、その場限りの感情でもあった。
彼にしてみれば好意からのことだと思っていただけに、その豹変ぶりは驚き以外の何物でもなくショッキングな事だった。
“所詮、水商売の女性はこんなものなのか。いい経験をさせてもらった”
と、失意の中で思う他なかった。
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