それと警察はね、そんな輩と通じてなんかいません。
テレビのドラマなんかでそういった筋立てがありますが、おもしろ可笑しく話をつくっているだけですから。
ご心配なく。すくなくともわたし共は、決してありません。
ご安心下さい、ほんとにだいじょうぶです」
と、力づよく否定する警察官のことばが、頼もしく聞こえた。
「そうですね。もよりの交番に、連絡をしておきます。
なにかあったら、110番に電話してください。
山本です、と言っていただければ、すぐに駆けつけさせますよ。
だいじょうぶ、そんな事態は、まずもって起きませんから。
それでも、駆けつけさせます。何ごともないのがいちばんです。ね、だいじょうぶですよ。
はい、今日はありがとうございました」
警察官が力づよく発した「だいじょうぶです」と言うことばに安堵感をおぼえた反面、なんども繰り返されたそのことばの裏にあるものが、なにか他意のあるようにも感じられて、多少の不安をおぼえさせずにはいかなかった。
〝ドラマの話がでたぞ。
そういえば、暴力団に便宜をはかったという刑事のニュースを見たことがある。
すくなくともわたし共は、とはどういう意味だ。
いや、ことば通りさ。そうだよ、新宿とか渋谷とか言ってたじゃないか。
そうさ、そうだよ。むかしは栄えていた繁華街も、いまじゃ閑古鳥が鳴いてるって言うし。
暴力団も、いなくなったんじゃないか?〟
気づくと、何をすることもなくテレビに見入っていた。
画面のなかでなにかが動いていることは認識しても、それが人間なのかあるいは物体なのか、まるで判別できない状態だった。
それからどのくらいの時間が経ったのか、もうれつな空腹感におそわれて我にかえった。
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