昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十ニ) 六

2013-05-24 21:38:58 | 時事問題
(六)

ひとみと言う女。
年のころは二十代前半か? 痩せぎすの体型が若く見せるきらいがあると考えると、後半かもしれない。
顔立ちは、不美人ではないけれど、美人でもない。

正三の知る女性は、小夜子を除けば年上ばかりだ。
源之助の息がかかった女性で、正三の教育係りのようなものだ。
痒いところに手が届かんばかりの対応をしてくれる。

正三の目線の動きで察知し、口に出すまでもなくことが済む。
選民だと意識させられている正三にとっては、実に居心地の良い場所だ。

「いいか、正三。我々は選ばれし者なのだ。
日本国民を正しい道に導くために選ばれたのだ。

ユダヤ民族が選民であるように、我々官吏はお上に選ばれし選民なのだ。
その自覚を常に持って行動をしなさい。」

そんな正三を認めない女性ーそれが、小夜子だった。
そしてそれが苦痛にならない正三だった、あの再会の日までは。

“小夜子さんは、今のぼくをどう見てくれるだろうか? 
もう一人前の男として、認めてくれるだろうか? 

尊敬の眼差しをくれるだろうか? 
そしてそして、ぼくの伴侶と、意識してくれるだろうか?”


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