(七)
それらことごとくが、裏切られた。
官吏としての正三は勿論、男としても認めはしない小夜子。
どころか、非難の矢が矢継ぎ早に飛んできた。
そして除ける間もなく、その矢は正三の胸に突き刺さった。
しかし今、ひとみという女に出合って、正三の胸に激しく燃えるものが生まれた。
正三を見下すわけではなく、といって見上げるわけでもなく、正視するひとみが現れた。
「お待たせ~! 正坊。
美智子姉さん、ありがとうございました。」
嵯峨美智子ファンだと言う正三に宛がわれた女給は、
確かに色気たっぷりではあったが、正三の興は戻らなかった。
襟をすこし緩めに着付けている着物姿に、
「ほぉー、色気ムンムンだね。」
と声をかける者もいたが、正三にはだらしなさとしか映らなかった。
「正坊、どうかしたん? 元気ないやん。」
「そんなことはない。」
「ウソ! あたしがおらへんかったから、泣いてたんやわ。
よしよし、もうどこにも行かんからな。」
それらことごとくが、裏切られた。
官吏としての正三は勿論、男としても認めはしない小夜子。
どころか、非難の矢が矢継ぎ早に飛んできた。
そして除ける間もなく、その矢は正三の胸に突き刺さった。
しかし今、ひとみという女に出合って、正三の胸に激しく燃えるものが生まれた。
正三を見下すわけではなく、といって見上げるわけでもなく、正視するひとみが現れた。
「お待たせ~! 正坊。
美智子姉さん、ありがとうございました。」
嵯峨美智子ファンだと言う正三に宛がわれた女給は、
確かに色気たっぷりではあったが、正三の興は戻らなかった。
襟をすこし緩めに着付けている着物姿に、
「ほぉー、色気ムンムンだね。」
と声をかける者もいたが、正三にはだらしなさとしか映らなかった。
「正坊、どうかしたん? 元気ないやん。」
「そんなことはない。」
「ウソ! あたしがおらへんかったから、泣いてたんやわ。
よしよし、もうどこにも行かんからな。」
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