十一)
「ターちゃん。叱ったあとの、これがだろ?」
少し酔いの回ったらしい山田が、杉田の頭を撫でる仕草をした。
にやけ切った杉田の顔が、また笑いを誘った。
「秀子さ~ん、ぼくにもしてよ~!」
「光子ちゃ~ん。僕は、接吻して欲しいよぉ!」
「だったら俺は、このスカートに潜り込みた~い!」
あれほどに怒り狂っていた面々が、各々に着いた女給相手にふざけ合っている。
しかし、ひとり正三だけは入り込めずにいた。
“こんな場所に、小夜子さんは居たのか…。
どんなに心細かったことだろうか。
誰かを頼ったとしても、誰がそれを責められようか。
あぁ、ぼくは何てことをしてしまったのか。”
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