手紙(四)
お母さんの話では、病気を苦にしていたとのことだ。
「一生を病人で過ごしてわたしに迷惑をかけるくらいなら、と自殺をはかったんです。
この子は、あなたもご存じのとおりに、とても気のやさしい性格ですから」
そしてまた、こんな話も。
「元気でいてほしい、健康であってほしい、そう思いますよ。
でもね、いざこうなってみると、親としてはどんな形にせよ、生きててほしいんです。
たとえずっとベッドの中にいることになっても、やっぱり生きててほしいんです。
それがあの子にはつたわらなかったのでしょうか…。
それとも、これがあの子の復讐だったんでしょうか。
母親であるわたしに対する復讐だったんでしょうか」
「のぞまれない子どもだったんだ」と、苦しげに告白した友人。
真夜中に両親のそんな会話を聞いたという友人。
そのことを告げると、目にいっぱい涙をためて悲しげに
「あれは叔父夫婦のことなのに。聡も納得してくれたのに。
あたしが信じられなかったのでしょうか」と話された。
両親に愛されなかったことが、いやそう思ってしまったことが、友人を苦しめたんだ。
そしてぼくに救いを求めてくれたのに…。
そのぼくが離れてしまい、絶望の淵に立たされたのだろうか。
友人は、生きていくことに疲れてしまったのだろう。
いちどならず二度も、自殺をこころみるなんて。
神さまのお許しをえたから、もういちどだなんて…。
でも、また生き返るつもりだったのだろうか。
一度リセットするつもりだったのかい?
「こんど目が覚めたら、きっと違うぼくになっているから。
元気な強い子になっているから」
あるいは、お母さんのことばが正しいのかもしれない。
多分そうなのだろう。病気が彼を苦しめ、精神的重圧となったのだろう。
ごめんね、ごめんね、聡くん。
きみの気持ちに気づかずにいて。
ぼくも、聡くんとの友情を、ほんとは取りもどしたかった。
以前のように、馬鹿話をしたかったよ。
そして、やっとできた彼女を、妙子を紹介したかったよ。
だけど、そのきみは、もう、この世にいないんだね。
いないんだね、もう…。
ごめんね…ごめんね…
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