昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(二十七)

2024-06-23 08:00:52 | 物語り

(不良だって、俺が?)
しかしつらつらと考えてみるに、そう思われるのが当たり前のような気がしてきた。
ポマードをしっかり使って、エルビス・プレスリーばりのリーゼントスタイルに髪を整えている。
普段は不良っぽさを意識した言葉遣いで話しているし、口ずさむ歌と言えばロックンロール系が多かった。
「日ごろの行いって大事なんだよね」
  そうつぶやく岩田の顔が突如浮かんだ。
「年寄りみたいなこと言うなよ」と反論したものの、確かに損をしていると感じる彼だった。
同じようなミスをしても、岩田なら仕方ないさとかばわれ、彼のミスには「集中心が足りない」と、小言になる。

(不良だと思っているんだ、やっぱり。
仕方ないか。不良まがいの日ごろの態度では)と、じくじたる思いが湧いてきた。
写真で見た断崖絶壁の縁に立たされたような思いに囚われている彼に、貴子が助け船を出した。
「そうね、不良よね。でも、そこらの不良とは違うわよ。
真面目な不良ってとこかしら。
スネてるのよ、この子は。根は真面目なの、あたしが少し悪のりさせたみたい。
だってね、パチンコはやらないし、成人向け映画のエッチな物も見ないし…」と、慌てて彼を弁護した。

「ストップ! そこらでいいよ。なんザンスか、真面目な不良とは」
 彼はわざと大げさにおどけてみせた。
貴子は失笑したが、真理子は笑わない。
なにか言わなければと思う彼だったが、バッテリー上がりの車のように、ただ小さなうなり声が出るだけだった。
貴子にしてもそれ以上の言葉が見つからずに、まだ少女である真理子には岩田の方が良かったかと思えていた。
しかし生真面目な岩田では二人の仲が発展するとは思えなかった。
それよりなにより、真理子が彼を指名したのだ。



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